第10章 軽度発達障害

短教1年

7/16 (AB)

7/7 (CD)

前回に引き続いて発達障害を取り上げました。

特に、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった

軽度発達障害について、その定義や症状を説明しました。

また、全般的な対応の仕方を説明しましたが、そこに共通する目標は

「子どもの自尊心を高める」

ということです。障害の有無にかかわらず、子ども達の健やかな発達を手助けする

保育者になれるよう、これからも勉強を続けてください。

第10章
軽度発達障害

メインメッセージ10
発達障害は誰のせいでもない。子どもの自尊心を育てよう

1 軽度発達障害とは?


 
(1)
学習障害   (Learning Disability ; LD)
(2)
注意欠陥多動性障害  (Attention Deficit / Hyper-active Disorder; ADHD)
(3)
高機能自閉症    :知能は通常レベルではあるが自閉症的傾向が見られる

2 LD

 知的障害には該当せず(IQ70以上)、全般的な知的面での遅れはないものの、1つないし2つ以上の特定の分野において特異な困難を持っている障害

1.行動面 多動、無気力・緩慢、注意集中困難、固執性
2.運動面 歩き方・走り方がぎこちない、巧緻運動が苦手、バランスが悪い
3.認知面  模倣ができない、左右や日時・場所の概念が未発達
4.情緒・社会性面 衝動性、情緒不安定、集団適応が困難
5.言語面 サ・ハ行の発音が苦手、言語理解・言語表出が未発達
6.学習面(国語) 音読、読解、書字、作文における困難
7.学習面(算数) 数・量の概念を理解していない、計算ができない
8.合併症 極低出生体重児、てんかん、チック、斜視、脳波異常、ADHDなど

3 ADHD
自分のADHDをチェックしてみよう! 

(2) ADHDの診断基準 (DSM-IV, 1994)

@ 以下の注意欠陥症状のうち6つ以上が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応していない。

□ 学業や仕事において不注意な過ちをおかすことが多い
□ 課題や遊びの活動で注意を持続することが困難である
□ 直接話しかけられた時に聞いていないように見えることが多い
□ 指示に従えないことが多く、学業や仕事での義務をやり遂げることができない
□ 課題や活動を順序だてて行うことが困難である
□ 精神的努力の持続を要する課題に従事することを避けることが多い
□ 課題や活動に必要なものをなくすことが多い
□ 他からの刺激によって簡単に注意をそらされることが多い
□ 毎日の活動を忘れてしまうことが多い

(5) 合併症
 

A 以下の多動性−衝動性症状のうち6つ以上が少なくとも6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応していない。

<多動性>

□ 手足をそわそわと動かしたり、椅子の上でもじもじすることが多い
□ 教室など座ることを要求される場面で席を離れてしまう
□ 不適切な状況で走り回ったり、高い所へ上ったりする
□ 静かに遊んだりすることができない
□ まるで何かつき動かされているようにじっとできない
□ しゃべり過ぎる
<衝動性>
□ 質問が終わる前にだしぬけに答えてしまうことが多い
□ 順番を待つことが困難である
□ 会話などの活動で他人を妨害することが多い

★ 上記の(1)と(2)のうちいずれかを満たす 
★ それらの症状による障害が2つ以上の状況において存在する
★ 社会的、学業的、職業的機能において、臨床的に著しい障害が存在する明確な証拠が必要
★ その症状が、広汎性発達障害や統合失調症や他の精神疾患(自閉症)によるものではない

(1) 症状  a) 基本症状  脳機能障害を背景とした行動特性としての問題
                注意力障害、多動・衝動性、固執性、感情易変性
      b) 二次的問題  社会行動における問題
                一定の「決まり」からの 逸脱行動 、集団行動困難
                待てない、一方的な対人行動、 対人関係形成困難
              一般心理特性としての問題
              自我意識・対人意識の問題
               
自尊心低下 、自信喪失、敏感、 対人緊張
      c) 知的能力  多くは境界線(IQ70以上)だが、アンバランスが見られる

(2) 疫学  小児の有病率はおおよそ %、ある程度の遺伝性あり。
(3) 病因  直接的な原因は不明。何らかの中枢神経機能障害(神経伝達物質レベル)の可能性

a) 発達・認知面 @発達性言語障害、A発達性協応運動障害、B学習障害(15〜92%)
 b) 行動・精神面 @反抗挑戦性障害・行為障害(50〜60%)、A適応障害:不登校など
    B不安障害(25〜40%)、C気分障害(15〜75%)
   D反社会的行動:薬物嗜癖、反社会性人格障害
 c) 身体面    @チック障害(30〜50%)、Aてんかん

(6) 経過  小児期に診断された子どものうち、青年期で6−8割、成人で3−5割が症状残す

★サブメッセージ10.2:LDもADHDも先天性の障害である        

   

メインメッセージをもう一度
発達障害は誰のせいでもない。子どもの自尊心を育てよう

講義で使ったpptファイルです

Slides

質問はこちらへ!

E-mail

もっと詳しく知りたい人へ

Books

子どもの発達臨床心理

岩川淳・杉村省吾・本多修・前田研史

昭和堂

2000 \2400

乳幼児発達心理学

繁多進

福村出版

1999 \2000

知能指数

佐藤達哉

講談社現代新書

1997 \640

のび太・ジャイアン症候群

司馬理恵子

主婦の友社

1997 \1500

関連HPはこちら

Link

定期試験情報


1 講義の中で取り上げられたメインメッセージを1章から10章まですべて書いてください。(順序は問わない)(10点)

2 1で答えたメインメッセージの中から一つを選び、そのメッセージの根拠となった心理学的知識を説明した上で、自分の将来にどう生かせるのかを述べてください。(30点)

3 心理学の研究法について(第2章)

2 認知発達について(第4章)

3 心の理論について(第5章)

追・再試験に関する情報


1 幼児期における「愛着」の重要性を説明してください。
2 「心の理論」とは何か、具体例をあげながら説明してください。

kitaguti@mwu.mukogawa-u.ac.jp

Top