『週刊読書人』の社長、黒木重昭さんの言葉は常に熱をはらんでいる。メールをいただいた。苦境の中でも、愚痴を言わず、出来ることに果敢に挑戦する黒木さんのエネルギーが届く。振り返ると、今年は7つのポイントに力を注いだという。神保町にオフィスを移す、新聞の組版を自社でやる、ウェブを進化させる、などである。すべてを実現させてしまった。どれも力仕事なのに、やり遂げてしまった。
その一つが『書評キャンパス at 読書人2017』の刊行だ。黒木さんのアイデアで昨年度から新たに大学生による「【書評キャンパス】大学生がススメる本」と名付けた連載を始めた。初年度に参加したのは50人。若者に書評を書く機会など、巡ってくるはずがない。それも伝統ある書評専門紙が舞台だ。単行本にし、出版した。
音楽学部3回生の今井桃代さんは、嬉しそうに手にする。恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を書いた。その原稿に編集部はどう手を入れたのか。第2部の「添削例」にも取り上げられている。生涯の宝物である。彼女はきっと履歴書にも書く。日本中の大学生の中でたった50人しか手にできない宝石なのだから。第3部にも図書館で開催されたイベントの詳報が掲載されている。
黒木さんの熱は、若者にも確実に伝わる。こんなに本を命がけで守ろうとする大人に出会うのは初めてのはずである。新しい年、読書人はまた、前に進んでゆくはずだ。元気の出るメール、ありがとうございました。