もし、あなたが無人島に一人残された時、手にしていたい一冊は。そういう問いに多くの人が『夜と霧』を挙げるだろう。ナチスの時代に強制収容所を生き抜いたヴィクトール・E・フランクルの名著である。「人間とは」。根源的なテーマを極限の中から考える、考え抜く。この書に登場するアウシュビッツには8回、ダッハウにも訪れたことがある。いくらホロコーストの事実を追いかけたとしても、苛烈な現実に直面した人々、加害の側にあった人間の「心」は計り知れない。心理学者であるフランクルは、それを教えてくれる。極めて平易に語ってくれる。私に薦められ初めて読んだ卒業生は「素晴らしい本でした。人として生きていくための、すべてのテーマに対するヒントをもらいました。死ぬまで何度も読み返したい一冊となりました」とメッセージを届けてくれた。彼女は人生の「友」を得た。フランクルの言葉がある。
「あなたがどれほど人生に絶望しても、人生のほうがあなたに絶望することはない」と。一気に再読した。余韻が残る。
「愛と勇気の図書館物語」を再開しました。心配してくれる読者からの声と、『夜と霧』がそうであったように学生や卒業生に励まされたからです。
スタイルを変えてみました。一回400文字のシリーズにすることです。原稿用紙一枚の文章、それが一番難しいのだぞ、そう教えてくださったのはエッセイの名手でもあった亡き名優、森繁久弥さんでした。私なりの「400字」を紡いでみます。ご愛読を。