武庫川女子大学 建築学科・大学院建築学専攻
 2012年度 武庫川女子大学 トルコ文化研究センター 研究会

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第5回

かつて工匠はどのように柱を、心柱をたてたのか

講師:第1部 西澤政男先生(株式会社 西澤工務店 代表取締役)
第2部 窪寺 茂先生(建築装飾技術史研究所所長) 

研究会の様子
 古代から世界各地で祭祀の際に柱立ての習慣が存在したことが明らかです。建物の荷重を負担することなく単一で立つ柱は最も原始的な人工物といえます。仏塔の心柱も周辺部と接合することなく立つものが見られます。第1部では西澤政男先生に施工者の視点から仏塔の心柱をどのように立てるのかをお話しいただきました。第2部では窪寺先生に、遺跡発掘調査報告書や先生が携われた仏塔の保存修復工事などを通して学術的な視点から柱立てについてお話しいただきました。

 第1部では西澤先生ご自身が担当された金剛輪寺三重塔と和歌山県指定文化財の慈尊院多宝塔の心柱の立て方をご説明いただきました。金剛輪寺三重塔は鎌倉時代創建とされます。初重天井に通し肘木を据え、その上に柱盤をつけて柱を立てます。よって地面から柱が立っているわけではありません。心柱周辺の構造物を2層まで作り、柱の下半分を持ち上げます。その際、素屋根(仮設構造物)の梁に滑車をつけ、柱盤に据えます。上半分の柱は素屋根の壁を一部取りはずし、素屋根最上部の梁から滑車で持ち上げます。一方、慈尊院は高野山の参詣道出発点に立てられた由緒ある寺院で2004年世界遺産に登録されました。多宝塔は寛永元年(1624年)完成といわれ、当初三重塔を計画していましたが、工事途中で多宝塔に変更されたらしいという記録が残っていました。相輪ひとつひとつが心柱に固定されています。上重はすべて樫部材を切り出していたことが確認されています。  

 第2部では窪寺先生から、まず遺跡調査に基づく柱立ての方法をご説明いただきました。前期難波宮からは柱を据える穴に、柱を据えやすいように傾斜がついていました。また、平城京東院庭園からは柱脚部に腕木を設け荷重を分散させ、沈下を防ぐ手法が用いられていました。柱立ての祭祀については、古代・現代ともに諏訪の祭礼ではあらかじめ盤木を差し込み、柱脚を滑り込ませて立てていたことを貴重な写真を用いてご説明いただきました。これはネパールのインドラ祭でも同様なようです。さらに先生が解体修理に携われた最勝院の五重塔には、柱足元に貫通する穴があり、これは立柱の際に使われていた可能性がある、などのお話をうかがいました。また轆轤(ろくろ)師という現代のとび職に相当する優秀な職人が経験と直感で建設作業で重要な役割を果たしていました。

西澤政男先生 ご講演の様子
窪寺茂先生 ご講演の様子
日時
2013 2/25(月) 14:00〜17:15
会場
上甲子園キャンパス 甲子園会館 K-222
西宮市戸崎町1-13 <JR「甲子園口」駅下車徒歩7分> >>甲子園会館へのアクセス
■参加対象者事前申込不要・入場無料
講師: 西澤 政男先生 (株式会社 西澤工務店 代表取締役)
    
窪寺 茂先生 (建築装飾技術史研究所所長)
■お問い合わせ先  
武庫川女子大学トルコ文化研究センター TEL: :0798-67-4501
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