以下松田夏実さんによる答辞の全文です。
答辞
桜の蕾がふっくらとして、風が心地よい季節となりました。旅立にふさわしいこの春の良き日に、私たち八百八十名は、武庫川女子大学での学生生活を終え、卒業を迎えました。
本日は、学長糸魚川直祐先生をはじめ、諸先生方、並びに御来賓の皆様にご臨席賜り、私たちのためにこのように厳粛かつ盛大な卒業式を挙行していただきましたことを、卒業生を代表して心より御礼申し上げます。只今、心に残る御訓辞をいただき、深い感銘を受けております。また、在学生の方からは、温かいお祝いと励ましの言葉をいただき、大きな喜びを感じております。
時の流れは早いもので、四年間の学生生活はあっという間に過ぎて行きました。私は武庫川女子大学附属高校からの内部進学であったため、入学当初は受験を乗り越えた学生との間に学力の差があるのではないかと不安でした。しかし、様々な授業を受けていくうちに新しい知識が増えていき、同時に物をつくり上げることの楽しさを知りました。
本日この会場には生活環境学部・音楽学部・薬学部の卒業生が揃っています。私自身は建築学科の所属で、平日の午前は講義、午後は設計演習や実習、土曜日はフィールドワークで学外へという生活の連続でした。設計演習の課題も多く、夜遅い時間まで学校に残っていました。振返れば家で家族と過ごした時間よりも大学のスタジオで友達と過ごした時間の方が長かったように思います。この話は建築学科の話ですが、ここにいる生活環境学部の他学科の卒業生、音楽学部の卒業生、薬学部の卒業生もそれぞれの四年間、六年間の学生生活はほぼ同様の生活パターンであったろうと推測します。
しかし、各学部とも忙しい日々の中でも楽しい出来事もたくさんありました。文化祭ではクラス全員で同じティシャツを着て模擬店を開いたり、丹嶺学苑の研修ではクラスのアイデアを競い合ったりと楽しい思い出ばかりです。特に私たち建築学科では、夏の海外研修でイタリア、フランスなど世界の建築に直に触れる機会に恵まれて、大変勉強になりました。そしてもう一つ特筆すべきことは、甲子園会館に行啓された皇太子殿下にお話をさせていただいたことです。学生生活での一番の自慢であり、素晴らしい思い出です。また学科の先生には「設計は受け身では出来ない。自らが常に問題意識を持って行動し、積極的に課題に取り組み、その中で自分が何を訴え、表現したいのか、何を提案したいのかを明確に表すことが必要になる。そして大切なのは楽しくつくること」と教わってきました。このことは本質的に世の中全ての仕事に共通していると私は思います。自ら考え、その過程で出てきた課題を再度考えて解決していくことは、今後社会に出てもずっと続いていくことだと思っております。
さて、話は変わりますが、昨年の東日本大震災で、たくさんの建物、街、人々が津波に飲み込まれ、多くの方々が被災されました。建築学科には直接被災地へ行き、建築家と一緒に被災地の今後を考えていくプロジェクトに参加した学生もいます。私たちは社会に出ると、今よりも様々な役割を持って行動していかなければなりません。それには、常に前進していく強い意志を持ってそれぞれの道を歩んでいく必要があると考えております。
四年間、このような素晴らしい環境でのびのびと過ごすことが出来たのは、本日この式典にお集まりいただきました御来賓の皆様、私たちの背中を押し、励ましてくださった諸先生方、助手の皆様、様々な形で私たちの生活を支えてくださった職員の皆様、周囲の皆様のご支援の賜物と感じております。また、家族の支えなしには私はこの四年間を無事に終えることはできませんでした。毎日誰よりも早く起きてごはんやお弁当を用意してくれた母、雨の日は車で迎えに来てくれて、大学院に進学することを許してくれた父、そしていつも悩みを聞いてくれた姉。たくさんの人に支えられて私はここまでくることができました。本当にありがとうございました。心から感謝しております。
私たちは武庫川女子大学の学生であることに誇りを持ち、それぞれの道へと旅立ちます。どうか温かく見守ってください。そして困った時には変わらぬご指導を宜しくお願いいたします。
最後になりましたが、武庫川女子大学の益々の発展と皆様方の御健康、御多幸を心よりお祈り申し上げます。卒業生を代表し、ここでもう一度心から感謝の言葉を申し上げ、答辞とさせていただきます。
平成二十四年三月二十一日
武庫川女子大学
生活環境学部・音楽学部・薬学部 卒業生総代
生活環境学部 建築学科
松田夏実
|