1) | 受講生 |
2年生 心理コース 約110〜120名 対象 少人数クラス 40名程度に分ける |
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2) | 授業目標 |
心理学英語文献講読に慣れる、読み方を知る、読む力をつける | |
3) | 授業方法 |
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4) | プレイスメントテストおよびまとめテストの結果 |
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5) | 今後の課題 |
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1) | 受講生 |
3年生 42名 対象 2グループに分けて担当(教員1名および非常勤講師1名が1つのグループを構成している) 専任教員福本、非常勤講師長江のグループが担当した授業を今回報告する |
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2) | 授業目標 |
建築材料実験における体感型授業 代表的な建築構造材料、およびそれらからなる構造部材の力学的特性について、実験を通じて理解し、 建築の設計に必要になる基礎的な知識を習得する |
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3) | 授業方法 |
本物の構造材料に触れ、構造部材の質感、量感、重量感を感じとりながら、 学生自らの力を構造部材に作用させることによって、その力学的特性を自らの筋肉をとおして実感する | |
4) | 学生アンケートの結果 |
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今回の授業実践事例報告は、心理学と建築学からの報告ということで、異色の取り合わせでした。両報告ともに、それぞれの学術分野の特色を反映した、熱心な授業の紹介でした。
1 建築学科福本先生の「建築材料実験」では、「代表的な建築構造材料、およびそれらからなる構造部材の力学的特性について、 実験を通じて理解し、建築の設計に必要になる基礎的な知識を習得する」ことを目的とされております。特徴的事項としては、 「建築材料実験における体感型授業」である点を指摘できます。この度の授業事例については、日本建築学会の第9回建築教育シンポジウムで 報告予定とのことでした。建設業界の変革、建築士資格の国際化、JABEE認定制度導入への取り組みなどへの対応として、将来の活躍を期待する 若いアーキテクトの養成プログラムに「体感型授業」を組み込むことは、挑戦的試みとして、注目を集めることが予想されます。
2 心理・社会福祉学科の小花和先生の「心理学英語文献講読T」では、「心理学英語文献講読に慣れる、読み方を知る、読む力をつける」 ことが目的として設定されております。さらに、見事な実証的検証がなされ、英語授業法の改善に際しても示唆するところの多い、授業事例であったと いえます。質疑応答では、英文読解指導法として、全訳型・意訳型・段落ごとの要訳型などの適正さが論じられるとともに、高校英語授業あるいは 受験英語と大学英語授業との不連続性の問題が、語る者の年代や専攻を超えて議論されました。英文学科の先生方も参加されており、活発な議論が 展開されかけました。時間の都合上、「さらなる論争は後ほど」ということになりました。そこで、未完成の事例報告ではありますが、このような形で ご報告させていただき、皆様の今後の生産的論議に供したいと願っています。
3 ところで、上記の議論の傾向とは別に、「心理・社会福祉学科で、英文の心理学文献を講読させる目的はどこにあるのか」という 質問が最後に出されました。上記の議論が、心理学文献を素材としつつも、英語教授法に焦点が向けられていたのに対して、この問いは、 「心理学を教授する上で、何故に英文の心理学文献を使用するのか」、その目的や理由を問う内容でした。
この問いは、察するに、「心理・社会福祉学科の教育目標との関連性を問う」ものでもありました。つまり、心理・社会福祉学科の教育目標から、 どのような論理過程を経て、「心理学文献講読T」という授業が構成されることになっているのか、説明を求めるものでした。
@心理学の国際化が進行していて、もはや英語の文献を読めないようでは、心理学を学べなくなってきているということでしょうか?Aまして、 大学院へ進学するためには絶対条件となっているということなのでしょうか?それとも、B心理学を学習する上で、英語文献講読が「特別の効果」 を有しているのでしょうか?
上記の問いに対する、小花和先生からの明解なご回答を掲載します。心理・社会福祉学科「心理学英語文献講読T」主担当小花和W.尚子先生の回答
第4回大学授業実践事例報告では、心理・社会福祉学科の心理コースにおいて試行錯誤を重ねている「心理学英語文献講読T」の授業実践について、担当教員の代表として報告させていただきました。学科を超えて、学内のさまざまな分野の専門家から、英語教育、成績評価法などについてご意見をいただき、今後の課題へ取り組むヒントを得ることができました。たいへん貴重な機会をいただき感謝申し上げます。
質疑応答の最後には、「心理・社会福祉学科で、英文の心理学文献を講読させる目的はどこにあるのか」という、非常に基本的ですが、 学科の教育目標にもかかわる重要な質問をいただきました。紙面をお借りしてお答えしたいと思います。
心理・社会福祉学科心理コースでは、4年次の1年間を通じて完成させる卒業論文を「最終的な学習目標」として、1年次から授業を配置しています。 一人一人の学生が自身の力によって1本の論文を完成させるために、2年次から、基礎的理論から応用的理論へと講義科目を展開させるだけでなく、 論文作成に必要なストラテジーを実践的に学習する演習科目を、互いに連携させながら段階的に配置しています。「心理学英語文献講読T」は、 そうした演習科目の1つです。
現在の心理学では、優れた論文の多くが英文で発表されており、日本語の心理学専門書にも、多くの英語論文が引用されています。卒業論文のテーマ によっては、必ずしも英語文献を読む必要はありませんが、学生が自分のテーマに関連する文献を引用する際に日本語でも英語でも文献を読めることが、 完成された卒業論文の質を大きく左右します。また、心理学の専攻を置く多くの大学院が、入学試験において英語の試験を実施していますが、 これもまた同様の理由からです。「心理学の英語文献が読める程度の英語の実力」がなければ、質の高い修士論文を完成させることはできません。 「英語の実力をつける」だけであれば、心理学の英語文献にこだわる必要はないかもしれません。しかし、こうした卒業論文や修士論文に必要となる 英語文献講読にとって、一般的な英語の読解力だけでは十分ではないことがあります。
第1に一般的な辞書には載っていない専門用語の理解が必要ですし、第2に、心理学に限らず科学分野の学術論文に共通する独自の記載規則の理解が 必要です。専門用語や基礎的な読解力は英語の授業で習得し、学術論文に共通する独自の記載規則は日本語文献で学ぶ、という方法も考えられますが、 卒業論文作成に向けたプロセスの1つとして、英語文献を講読することが必要であることを実感する上では、心理学の優れた英語文献そのものを教材 として使用することが最も効果的であると考えられます。
ところで、心理コースにおいて、「卒業論文を最終的な学習目標とする」背景には、大きく2つの教育目標があります。
学習目標からすれば、「英文の心理学文献を講読させる」目的は、第一義的には、卒業論文作成に向けたストラテジックな能力の一つを育成すること です。しかしまた、「大学生の教養として最低限必要な英文講読力」を身につけ、願わくば、「社会人として要求される英語の実力を養う」という教育 目標も、当然ながら含んでいます。
事例報告でも発表させていただいたように、この授業にはまだ課題が山積みされています。今後も学生の英文講読の実力育成に向けて試行錯誤を 続けたいと考えています。
4 小花和先生、お忙しい中、ご回答下さり誠にありがとうございました。先生のお考えが、よく理解できたように思います。ただ、【説明の仕方】として少々気になる点がありましたので、<心理・社会福祉学科の教育目標>を調べてみました。「人々の幸せや明るい社会の実現に向けて、日々実践できる認定心理士、社会福祉士及び精神保健福祉士を養成することを目的とする。」とされています。特に、前者の「人々の幸せや明るい社会の実現に向けて、日々実践できる認定心理士」の養成が、<心理コースの目的>と解されます。とすると、このように規定されている人材養成の目的から、 心理コースにおいて「卒業論文を最終的な学習目標とする」理由及び「心理学英語文献講読T」開設趣旨も説明される必要が出てくるように思われます。この問題は、本質的には、単に【説明の仕方】というより、【学科教育目標と開設授業目標との関連付けに係る、授業設計上の方法意識の有り様】に起因するように推察されます。つまり、授業シラバスを作成する際の、授業設計法の問題です。
このように「各学科における授業事例紹介」を通して、各学科の授業を問う姿勢もまた、見えてきました。授業そのものの工夫や改善方法は大変参考になりますが、さらに、その背後にあって共通の学科教育目標の実現へ向けて「個々の授業改善を繋ぎ合わす」、そのような学科教育力の形成こそ、 <究極的FDの目標>と思われます。 前原