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身近な食から未来を考える

詳細

栄養クリニック部門

倭 英司 Eiji Yamato

短期目標

糖尿病患者および透析患者の食行動特性とその管理状況の検討

 食行動特性と行動経済学的特性は、個人によって大きく異なることが分かっている。糖尿病は食事量の管理が糖尿病の管理状態に関与している。また、透析患者においても、飲水量を含めた食事量の管理がその病態に大きく関与していることは臨床的によく知られた事実である。そこで本研究では糖尿病患者および透析患者を対象に、食行動特性を質問形式でとらえ、各種のパラメーターと比較検討する。

中期目標

糖尿病患者および透析患者の食行動への介入

 糖尿病および透析患者の管理状況の良否は患者自身のQOLのみならず、医療経済学的にも重要な問題である。そこで、短期目標で得られた結果をもとに、管理状況を改善する目的で、行動変容を含めた介入を行ってゆく。

鞍田 三貴 Miki Kurata

短期目標

平成25年度
継続可能な糖尿病栄養食事指導法の開発

 糖尿病療養において、食事療法が最も重要でありながら確立された方法は無い。行動の変容が見られ、新たな習慣の継続を可能とする栄養指導法の確立を目指す。

糖尿病性腎症患者の透析予防を目的とした地域連携システムの構築

 透析導入患者の原疾患は糖尿病性腎症が最も多い。近隣病院通院中の糖尿病性腎症(2期以上)患者に対し、病院と大学が連携し重点的な医学管理を行うシステムを確立する。

中期目標

大学と地域医療が連携した栄養サポートシステムの確立

 大規模病院の入院期間が短期になればなるほど、地域にはサポートを必要とする患者が多くなる。国は病院から地域への支援を推進しているが、人材や介護力などの環境整備は十分ではない。そこで、地域において開業医と連携し、栄養支援を必要としている人への栄養サポートシステムを確立し、大学の地域貢献と地域を担う人材育成を目指す。さらに糖尿病性腎症に対し、病院と大学が連携し重点的な医学管理を行った場合の透析予防効果を検証する。

高齢者栄養科学部門

福尾 惠介 Keisuke Fukuo

短期目標

平成25年度
「ひとり暮らし高齢者の総合的栄養サポートシステムの開発」と「遺伝子と食事との相互作用の解明」

 わが国では、今後ひとり暮らし高齢者数が地域で急増するが、ひとり暮らし高齢者は、食や孤立の問題から虚弱や要介護状態へ移行するリスクが高い。ひとり暮らし高齢者に対する総合的栄養サポートシステムを開発する目的で、高齢者ひとり一人に対して「栄養相談」を開始している。これにより、ひとり暮らし高齢者の食におけるニーズや課題を明らかにする。遺伝子と食事の相互作用を明らかにする目的で、若年女性を対象としたミトコンドリア関連遺伝子の1塩基多型(SNP)解析結果と過去の食事調査結果との関係の解析を行っている。

中期目標

平成26年度
「ひとり暮らし高齢者の総合的栄養サポートシステムの開発」と「遺伝子と食事との相互作用の解明」

 前年度の研究から明らかになったひとり暮らし高齢者の食に関するニーズや課題を踏まえて、新しい総合的な栄養サポートシステムの開発を目指す。例えば、朝食の欠食など、高齢者が長年続けている食習慣を変えることは非常に困難なことが多いが、それをどのように克服できるか、新しい総合的な栄養サポート方法の開発を目指す。また、疾患に関連する課題についても、克服できるシステムを開発する。遺伝子と食事との関係では、高齢者の虚弱との関係(例えばサルコペニア)に焦点をあてて、ミトコンドリア関連遺伝子と食事との関係を解明し、高齢者の虚弱予防法の開発を目指す。

前田 佳予子 Kayoko Maeda

短期目標

平成25年度
地域高齢者の咬合力と介護予防因子との関連について

 高齢者における口腔健康の保持は、介護予防から生活活動の向上まで広範囲にわたる役割を担い、咬合力と咀嚼力の低下は、介護認定のリスクやQOLの低下に大きく関与していると推測される。今年度は在宅高齢者の咀嚼能力と介護予防因子との関連を調査した。介護予防の支援を目指して、咀嚼能力の指標である咬合力と咀嚼ガムを用いての「咀嚼力フローチャート」を作成する。

中期目標

介護予防のツールとして「おたっしゃ健康手帳」の有用性について

 高齢者の身体状況・口腔機能状態・栄養状態を本人はもとより、本人を取り巻く栄養状態に関わるすべてのスタッフが共有するための媒体として「おたっしゃ健康手帳」を作成して、在宅高齢者の食生活支援および地域での包括的な介護予防の一つのツールとして活用できるか否かを検討する。

谷野 永和 Norikazu Tanino

短期目標

平成25年度
「ふれあい昼食会への学生参加による世代間交流と健康支援」と「ひとり暮らし高齢者へのクックフリーズシステムを利用した調理講座の開催」

 在宅高齢者に対する食事サービスが行われているが、地域における会食と、自宅への配食がある。ふれあい昼食会は、ひとり暮らし高齢者を対象に行われる地域での会食会で、調理開始時から学生も参加し、高齢者と昼食を一緒に摂り、世代間交流を行っている。昼食会参加者へは毎年身体計測会を行いその結果を個人にフィードバックして健康支援を行う。
食事サービスに料理済み冷凍食品を用いるクックフリーズシステムがあり、食事支援に有効な方法と考えている。栄養科学研究所において地域高齢者を対象にCAS冷凍技術を利用した調理済み冷凍食品の調理講座を開催し、地域食事支援の方法を探る。

中長期目標

平成26年度以降
「ひとり暮らし高齢者へのクックフリーズシステムを利用した食事支援体制の構築」と「ふれあい昼食会への学生参加による世代間交流と健康支援」の継続実施

 高齢化や核家族化の進行が急増しており、孤立生活が特別な生活形態でなく、標準的な生活形態へと変化している。社会的に孤立しやすい高齢者に対し、食事支援活動を通じて、社会との接点をもたせ、生きがいの高揚や栄養サポートを目的とする。栄養科学研究所にはCAS急速冷凍機と調理設備が設置されており、研究所を拠点とした食事支援体制の構築が可能となっている。ひとり暮らし高齢者や学生、民生委員、ボランティアが参画し、クックフリーズシステムを利用した会食会の開催や配食サービスによる食事支援体制の構築を目指し、地域社会に貢献する。

長谷川 裕紀 Hiroki Hasegawa

短期目標

「音楽活動による健康増進システムの開発」

 平成20年度より音楽の持つ心理・生理的作用や社会的働きを取り入れた音楽活動「音楽で楽しく健康のつどい」を実施している。学生と高齢者との世代間交流をベースにしたこの取り組みでは、音楽活動による健康増進システムを開発する目的で、身体計測や唾液の採取を行い、音楽活動が健康面に与える影響を評価している。本年度は、参加者を継続参加群(3年以上)と新規参加群(3年未満)に分け、音楽活動の継続的な参加によって得られる効果を明らかにする。また、新規参加者を対象にアンケートやインタビューを行い、日常生活の変化や途中参加者が抱える不安要素などを抽出し、活動の中で新規参加者を迎い入れる際に考慮すべき点を明らかにする。

中期目標

「音楽活動による健康増進システムの開発」および「地域音楽療法の推進」

 「音楽で楽しく健康のつどい」の取り組みの効果を総合的に評価し、健康増進システムとして確立するために、以下の5項目について検証する。①身体的・生理的な面に与える効果、②心理的・精神的な面に与える効果、③認知面に与える効果、④日常生活の行動変化、⑤学生の教育効果。音楽活動を実施する学生の変化を分析することで、取り組み全体(システム)の評価につなげ、世代間交流を中心とした活動の有効性を検証する。さらに、日本音楽療法学会が推進する「地域音楽療法」の1つのモデル事例として、本取り組み内容を学会等で発表し、これまでに蓄積したノウハウの提供を行う。

一ノ瀬 智子 Tomoko Ichinose

短期目標

「地域高齢者を対象とした音楽活動による介入効果」

 平成20年度より継続して、主にひとり暮らしの地域高齢者を対象として音楽活動「音楽で楽しく健康のつどい」を実施している。高齢者が、歌唱、楽器演奏、音楽鑑賞などの音楽活動に学生と交流しながら参加することにより、心身の健康の維持増進、孤独の防止等を目指している。本活動による心理的、生理的、社会的な影響に関する今までの研究成果を踏まえて、引き続き音楽活動による介入が地域高齢者のWell-Beingに及ぼす効果について調査する。

中期目標

「地域医療・福祉における音楽療法士の役割と養成教育」

 地域高齢者を対象とした音楽活動「音楽で楽しく健康のつどい」は、音楽療法士を目指す学生のための実践教育の場としての役割を果たしている。その教育効果について調査するとともに、地域医療・福祉に貢献できる音楽療法士として求められる役割、技能、知識、態度、ならびにそれらの習熟過程を明らかにすることにより、養成教育に還元することを目指す。

北島 見江 Mie Kitajima

短期目標

平成25年度
高齢期における運動支援の効果

 高齢期の低体力は、日常生活の活動に大きく影響し、生活の活動範囲の縮小化や、社会とのつながりの希薄化などから心の健康問題にまで及ぶ。つまり、現在の日本におかれた超高齢社会問題は介護や医療費の増大にまで及び国力の低下が懸念されている。このような中、国民一人一人がイキイキと健康に暮らすための心と体が一体となった社会的支援が必要になるが、本年度は地域住民への運動支援として実施される週一回の運動教室がどのような効果をもたらすのか検証する。

中期目標

平成26年度
運動プログラムの検証と異世代交流を通した地域の自立支援

 平成25年度で考案された地域住民への独自の支援プログラムが、より科学的かつ安全な運動であるという検証を実施。また、同時にこの支援プログラムの提供が、異世代の交流を通し、学習の場となり、将来的に両者にとって自立した場となるようそのシステム化をめざす。

武岡 健次 Kenji Takeoka

短期目標

 高齢者の生活環境の中で特に注目されている転倒予防について研究を進めている。高齢者の健康意識は高まり、痴呆や寝たきりにならない状態で生活できることを強く望んでいる。そのためには転倒予防の知識として転倒のリスク、転倒しやすい時間や場所を理解して頂くことが重要である。縦断的な体力測定を実施し、高齢者の下肢筋力、柔軟性、バランスにおける問題点を把握し、転倒予防に有効な運動機能評価を考案する。

中期目標

 高齢者の転倒予防は一人一人の問題点を把握し、高齢者の身体特性を十分に理解することが大切である。特に転倒のリスクが高い虚弱高齢者は立位トレーニングの実施が困難なことが多く、座位トレーニングの開発が急務であり虚弱高齢者の転倒予防には必要不可欠である。転倒予防に結びつく、安全かつ有効な座位トレーニングを立案し、虚弱高齢者の下肢筋力、柔軟性、バランス向上を目指す。

今村 友美 Tomomi Imamura

短期目標

「栄養と運動を組み合わせた健康の維持・増進のための新たな取り組み」と「運動習慣のある地域高齢者における食生活の実態把握」

 高齢者における低栄養やロコモティブシンドロームの予防は健康寿命を延長するうえで欠かせない。ロコモティブシンドロームの予防には、日頃からの運動習慣が効果的となる。さらに、運動を行うための体力を維持するために適切な食事管理が重要である。逆に、運動習慣により体力を維持することが食べる力を維持することにもつながると考える。これらのことを踏まえ、栄養と運動を組み合わせた健康の維持・増進のためのアプローチを模索する。さらに、従来実施されている運動教室参加者の食生活に関する実態を把握し、その特徴や問題点を検出する。

中長期目標

「地域高齢者に対する体力の維持・増進のための継続的な栄養サポート」

 運動教室参加者の食生活に関する実態を把握し、運動の効果を最大限に発揮するための、栄養・食事指導を継続的に行っていく。また、地域高齢者を対象とした栄養と運動を組み合わせた新たな取り組みの体力の維持・増進に対する効果的な方法を確立していく。

大滝 直人 Naoto Otaki

短期・中期目標

「高齢者の生活習慣・食生活習慣と地域社会環境の現状について」

 一人暮らし高齢者は、夫婦のみの世帯や三世代世帯などの高齢者に比較してハイリスク集団であると考えられる。そこで地域ひとり暮らし高齢者への身体・体力測定会を行い、高齢者の身体機能の現状を評価する。また、身体機能と生活習慣・食習慣との関連について解析を行う。また、高齢者が置かれている社会環境(地域とのつながり、地域社会組織への参加など)についての実態調査を行う。

長期目標

地域高齢者のフレイルティ・サルコペニア・介護予防ストラテジーの開発

 我が国の総人口に占める65歳以上の割合は、現在は約25%であるが、2035年には30%を超えることが推計されている。また、高齢化率の上昇とともに、一人暮らし高齢者は増加傾向にあり、2035年にはその割合はおよそ20%になることが推計されている。そこで、都市部に居住する地域高齢者の身体機能低下を引き起こす、社会環境・生活習慣・食習慣・など様々な問題点を明らかにし、フレイルティ・サルコペニア・介護予防ストラテジーの開発を目指す。

横島 啓子 Keiko Yokojima

短期・中期目標

「ICTを活用した独居高齢者の生活・健康管理のプログラム開発」

 平成27年の高齢社会白書によると、高齢者世帯のうち単身世帯は25.6%を占め、独居高齢者の増加に伴い、高齢者の生活の安全安心の確保、孤立化の防止、地域活動の活性化によるコミュニティの構築の促進が求められる。そこで、独居高齢者の生活を把握するために、健康状態・生活リズム・精神状態の日内変動を捉えることができるプログラムの開発を目的とし、自らの状況・感情が発信できるイラストを用いたライフログ(生活記録)を実施している。高齢者から発信された情報に対して、身体症状、日内リズム、感情表出の解析をおこなうと同時に、自ら情報を発信する作業は、脳の活性化に繋がると考えられるため、手続き記憶測定機器により認知機能評価を並行して実施している。

長期目標

「ICTを活用した高齢者の生活・健康管理および認知機能向上に関するプログラム開発」

 平成27年国勢調査の結果、日本の高齢化率は26.7%に達している。さらに、要介護者も年々増加しており、介護予防が社会的課題とされている。要介護者の約30%は「認知症」や「虚弱」の症状を呈しており、高齢化に伴い認知症高齢者数も増加し、さらに正常な状態と認知症の中間とみられる軽度認知障害者も増加している。そこで、引き続きICTを活用したライフログの実施に加え、脳を鍛える「コグニサイズ」を導入し、高齢者が自ら身体を動かし認知機能を向上させることができるプログラムを構築する。数人のグループで実施することは他者との交流の機会になり、より認知機能を活性化することにつながる。

食育・人材育成研究部門

高橋 享子 Kyoko Takahashi

短期目標

平成25年度、26年度
小学校児童、中学校生徒における食生活実態及び教育現場における「食育の知の構造と評価方法」の検証

 食育が学習指導要領に組み込まれ、文科省、内閣府の積極的な食育活動の中で、児童・生徒の食生活実態を把握することは重要と考える。しかし、食生活の実態分析では、地域性、家庭環境、家族構成、経済的問題など多くの因子を考慮する必要がある。また、教育現場における各教科での栄養・健康教育および伝承文化や地産地消などの食教育の「知の構造と評価方法」について検証が必要と考える。本事業の目標として、「食生活実態調査」を行ない、さらに教育現場における「食育授業の知の構造と評価基準」についての検証を目指す。

中長期目標

平成26年度以降
地域特性を生かした小学校・中学校での「食育の知の構造と評価」を継続

 平成25年度、平成26年度の「食育の知の構造と評価方法」の検証に引き続き、地域特性を加えて検証を継続する。食生活の実態分析では、地域性、家庭環境、家族構成、経済的問題など多くの因子を考慮する必要がある。なかでも、地域性は、伝承文化や地産地消などの食教育の「知の構造と評価」としてこどもへの影響が高く、生涯の食生活の柱となる可能性が高い。従って、食育の知の構造に地域性が及ぼす影響を継続して検証する。本事業の目標として、「食生活実態調査」を行ない、さらに教育現場における「食育授業の知の構造と評価基準」についての検証を目指す。

内藤 義彦 Yoshihiko Naito

短期~長期目標

平成25年度~34年度
行政との協働による住民の保健行動の実態把握および長期的健康づくり計画の策定

 地域(地)と大学(知)との協働が求められる中、大阪府内S市の今後10年間にわたる健康づくり計画の策定を受託した。計画策定に当たっては、まず健康に関する実態把握が必要であり、住民からの無作為抽出により保健行動に関するアンケート調査を実施し、地域介入の重点項目を把握する。同時に、健康づくりに関連するコミュニティ内の諸組織に対するフォーカスグループインタビューを実施するとともに、行政の他部局における健康づくり関連事業を精査し、介入をより効果的かつ広汎に進めるための体制固めを狙う。その上で、総合的に健康度向上のために健康づくりの介入項目の優先順位を決定し、計画を市民に周知することを今年度の目的とする。
次年度以降は、介入の効果を測定するためのモニタリングの事業を継続して行えるよう行政との協働態勢を整備する。また、効果の評価に基づき介入内容の修正や強化を行う。

短期~中期目標

平成25年度~
コミュニティベースの食育の推進

 地元である西宮市及び大阪府内3市のコミュニティベースの食育推進に関わっている。これまでは、食育推進計画を立案することが中心であったが、今後は食育の効果を高めるための介入の実施とその効果に関する検討を研究テーマとする。特に、中学校給食を新たに導入する府内の2市において、導入前後の食行動の変化を検討し、給食導入の食行動への影響を分析する。さらに、生涯を通じた食育を進めていくために、誕生から14歳までの食行動の変化を横断的に分析し、行政・教育委員会・大学との協働により縦断的にも評価できるような体制づくりを目指す。

平成25年度~
新しい食育ツールの開発に関する研究

 私どもは、ICタグを用いた新しい栄養評価・指導ツールSATによる食事診断の有効性及び妥当性を検討してきたが、SATシステムは運搬の利便性の欠如や、食品数が少なく代用が難しいなどの欠点がある。そこで、それを補完するカード式の栄養診断ツール「栄養君)」(以下栄養君)を新たに開発した。本研究では、「栄養君」を用いた食事診断の妥当性・有用性を確立するとともに、食育ツールとしての有用性について検討することを目的とする。

林 宏一 Koichi Hayashi

短期目標

平成25年度
児童館を活用した食育推進に影響を及ぼす社会環境要因の分析

 近年、朝食欠食や偏食による栄養の偏り、肥満児童の増加および過度の痩身志向など、子どもの食をめぐる問題は複雑かつ多様化してきている。地域においては、食育基本法の精神を受け、子ども達が直に関わる保育所、幼稚園、小学校、児童館等において食育が実施されている。本研究では、児童の生活の場として重要な役割を担う児童館に着目する。児童館が置かれている社会環境と食育実施に影響を及ぼしている要因を探り、両者間の関係を明らかにすることとしている。

中期目標

平成26年度以降
地域における食育推進の環境整備に関する研究

 児童館を活用した食育推進に影響を及ぼす社会環境要因の分析結果や他の食育関連研究の動向、成果を踏まえて、地域社会全体に食育の輪を広げるための環境整備について、引き続き研究していく。特に、①地域保健との連携、②学校教育・学校保健との連携、③児童福祉との連携、④ボランティア組織との連携等、関連する社会資源との連携を重視する。これら地域社会資源との協働のあり方を研究し、食育を阻害する環境要因を明らかにし、地域における食育発展に寄与する。

北村 真理 Mari Kitamura

中期~長期目標

平成25年度~30年度
保育、教育現場に関わるすべての人々の食育に対する意識、実践力の推進

 家庭での食育保育機能の低下が報告されている。そのため、教育現場での食育の推進は不可欠である。保育、教育現場での食育活動の推進にはそこに関わる子ども、保護者、保育、教育関係者の意識、実践力の向上が不可欠となる。本研究では子どものみならず、保護者、教育関係者への食育の意識、実践力の向上をめざして、保育、教育現場が求める支援体制づくりにも取り組む。

短期目標

平成25年度、26年度
保育、教育現場での食育活動に役立つツール開発

 平成17年に制定された食育基本法では、子どもたちに対する食育の重要性を述べており、食育における教育関係者等の役割が示されている。このことから、保育者、教育者の食育に関する知識や意識の高さが重要である。本研究では保育者、教育者の食育に対する意識向上、実践力の向上をサポートするツール開発をテーマとして実施する。

岸本 三香子 Mikako Kishimoto

短期目標

幼児の睡眠覚醒リズムに及ぼす生活習慣の検索

 夜型の生活や不規則な睡眠は、生体調節機構に大きな影響を与え、副腎皮質ホルモンであるコルチゾール分泌に影響を及ぼすことが知られている。睡眠覚醒リズムとホルモンや体温の同調が、4~5歳頃できちんと出現するためには乳幼児期に、昼夜の区別が一致した睡眠覚醒リズムで生活し、幼児期に適した生活活動を送ることが重要である。本研究では、幼児の睡眠覚醒リズムの実態を調査し、それらと食事・運動などの生活習慣及び健康状態との関連を明らかとする。

中長期目標

小児の生体リズムに及ぼす食環境の検索

 近年、小児の生活が夜型化し就寝時刻の遅延や睡眠時間の短縮が問題となっている。夜型の生活や不規則な睡眠は種々の生体調節機構に大きな影響を与えることが知られており、小児期の睡眠習慣を含む望ましい習慣の形成の意味は極めて大きい。生体リズムの形成に最も強力なものは明暗サイクルであるといわれているが、食事のリズムが体内時計に及ぼす影響は無視できない。小児の生体リズムに及ぼす食環境を検索する。

食品栄養部門

福田 滿 Mitsuru Fukuda

短期目標

平成25年度
CAS冷凍による植物性食品の冷凍状態の解析

 超高齢化社会における農林水産業従事者不足、TPP参加による農林水産物の生産・供給の国際競争の激化等、日本の食糧生産はかつてないほど厳しい状況に置かれている。食糧安定供給のためには農林水産業と食品産業との密なる連携が重要な課題である。この観点から高品質冷凍食品の供給は解決の一策になると期待される。本年度は、冷凍不適とされる植物性食品を中心にCAS冷凍を含め冷凍方法の違いによる食品組織変化・細胞損傷および成分変化について基礎的知見を得る。

中期目標

平成26年度
CAS冷凍を用いた植物性食品の冷凍条件の最適化

 前年度の研究成果を踏まえて、冷凍時の品質保持が困難な植物性食品や加工食品の冷凍条件の解析を継続し、液体窒素瞬間冷凍や通常冷凍と比較してCAS冷凍による食品の凍結状態を調べる。当該年度は①冷凍時の細胞損傷の抑制、②冷凍によるドリップ生成量の抑制、③冷凍による物性変化の抑制を可能にする冷凍条件を確立する。よって、CAS冷凍条件の最適化を明らかにし、高齢者や食事制限を必要とする人々などのニーズに適合する冷凍食品の製造を可能にする。

松井 徳光 Tokumitsu Matsui

短期目標

平成24年度~平成25年度
ヨーグルトの冷凍保存におけるCASの有効性と改善法の確立

 近年、健康維持・疾病予防に対する社会的ニーズから発酵食品が注目されている。そこで、長期保存が難しいヨーグルトの冷凍保存〔CAS冷凍および通常冷凍(-80、-40、-20℃)〕における生菌数および物性変化について明らかにすることを目的として本研究を行った。その結果、いずれの条件においても生菌数に差はなく、凍結後も凍結前の半数以上の生菌数が確認され、冷凍後もプロバイオティクス効果が期待できることを明らかにした。しかし、いずれの冷凍条件においても解凍後は液体と固体に分離した。平成25年度は、ヨーグルトの形状が維持できる加工法の確立を目指す。

中期目標

平成25度~平成27年度
高齢者に適した機能性食品の開発 ~発酵梅および漬物~

 食の欧米化、超高齢社会を迎え、より美味しく、より健康維持に適した機能性食品へのニーズが高まっている。そこで、これまでの研究成果を活かし、特に心筋梗塞および脳血栓等の血栓症予防を目的として、きのこの発酵能を用いた機能性食品の開発を行う予定である。平成25年度は塩分摂取量の改善も考慮に入れ、無塩の発酵梅および漬物について新規な発酵食品製造を目指す。

有井 康博 Yasuhiro Arii

短期目標

「鉄欠乏症の改善を目指した鉄分強化豆腐様食品の開発」

 鉄欠乏症はHidden Hunger(隠れた飢餓)とも呼ばれ、高齢者、女性、新生児・乳幼児の生命を脅かし、子どもの成長を妨げる。そこで、日常的に食している食品である豆腐に着目し、鉄分強化した豆腐様食品を開発する。実用化を目標に、違和感なく食すことができる利用法を検討し、鉄分強化豆腐様食品の鉄欠乏性貧血の改善・予防効果を調べる。

「食品加工におけるCAS機能付き急速冷凍庫の利用:製パン編」

 製パン業界では冷凍生地を焼成すると食感を低下させることが知られている。本研究ではCAS機能付き急速冷凍庫による冷凍が焼成後のパンの食感に与える影響を明らかにすることを目標としている。また、CAS機能付き急速冷凍庫の本来の利用目的である冷凍保存のみならず、食品加工における利用価値を探る。

中長期目標

「安価で実用的な栄養強化食品の開発」

 日本を含むアジア諸国における栄養不足が引き起こす健康問題は、栄養過多の問題と複雑に絡み合っている。一方でタブレットや粉末形式で安易に栄養補給するケースが増加しており、このような栄養補給は高齢者には抵抗感が強いために効果が薄く、若者へは間違った食育を促すと懸念している。そこで、従来の食品を模倣した栄養強化食品の開発を手がけ、「美味しく」、「安全に」、「健康に」をテーマに安価な栄養補給を可能にする食品を社会に提供することで、実質的で実りある社会貢献を果たす。

橋本 多美子 Tamiko Hashimoto

短期目標

平成25年度
貝類の冷凍保存におけるCAS冷凍庫の利用

 近年、貝類は調理に手間がかかることから、その摂取頻度は減少傾向にある。貝類には機能性成分やミネラルが含まれ、健康増進とともにミネラルの供給源としての役割も大きい。特に1人暮らしの若者や高齢者の世帯おいて、広く食材を利用するためには冷凍品の利用も不可欠となる。そこで、本年度はCAS機能付き冷凍庫を利用し、冷凍条件が貝類の解凍時の品質に与える影響について調べ、冷凍品として利用価値を検討する。

中期目標

貝類の消費拡大に向けた調理加工食品の開発

 貝類の冷凍時のドリップを溶出抑制する条件の設定、加熱調理した貝類の冷凍品としての利用価値を検証する。そして、貝類の摂取量増大に向けて、「手軽に」、「おいしく」利用できる貝類の調理加工食品の開発を目指す。

堀内 理恵 Rie Horiuchi

短期目標

「食嗜好を決定する因子解析」および「幼稚園給食の提供方法の差の解析」

 食嗜好を決定する因子を解析し、味覚と食嗜好との関係を明らかにする。これまでに、幼児期の食嗜好は成人期の食嗜好に影響を及ぼすことを示唆した。給食は直接的な栄養指導と言われる。幼児の食事の1/3を占める幼稚園給食は、成人期の食嗜好に影響を及ぼす可能性がある。給食の提供方法には自園調理と外部搬入式方式がある。まず、官能評価、残菜率、食事中の行動において幼稚園給食の提供方法による違いを明らかにする。

中期目標

「成人期の食嗜好のコントロールをするための教育方法の構築」および「幼稚園給食の提供方法の違いが残菜率、食行動に及ぼす影響と嫌いな物を克服する給食の開発」

 幼児期の好き嫌いは成人期まで継続し、成人期の食の選択に影響を及ぼす。好き嫌いをなくす教育方法を開発し、教育効果を探る。また、幼稚園給食の提供方法の違いが、残菜率、食行動に及ぼす影響を明らかにする。子供は嫌いな物を残すことが多い。残菜を減らすことを目的とし嫌いな物を克服できる給食を開発する。

澤田 小百合 Sayuri Sawada

短期目標

冷凍方法の違いによる野菜の冷凍状態の解析

 平成25年度のわが国の冷凍野菜輸入量は92万トンであり、国内生産量をはるかに上回っていた。一方、食糧需給率が長期的に低下傾向にある我が国では食料安定供給のために農林水産業と食品産業との密なる連携が重要な課題であり、高品質冷凍野菜の供給は解決の一策になると期待される。
冷凍食品の取扱量は内外で急増し、国産の安心安全な冷凍野菜への需要は増加しているが、問題点が残されている。大部分の野菜は90%以上が水分であるため、冷凍処理によって組織を損傷し、解凍後に大量のドリップを生成する。そのため組織の軟化をともない品質が低下する。野菜の冷凍・解凍時に生じる組織軟化を抑制できれば、冷凍野菜の品質は向上する。本年度は、冷凍不適とされる野菜を中心に冷凍方法の違いによる組織変化・細胞損傷及び成分変化について基礎的知見を得る。

中期目標

冷凍方法の違いによる野菜およびその調理品の冷凍状態の解析

 一般に農産物冷凍食品のほとんどが冷凍前にブランチング処理されているため、加熱した野菜組織の冷凍による組織細胞への影響を調べる必要がある。前年度の研究を基に、ブランチングをはじめ加熱処理した野菜について冷凍方法による細胞内外の氷結晶状態を調べ、解凍後のドリップ生成やテクスチュア低下、栄養成分損失への影響の解析、さらに解凍試料の官能評価を行い冷凍食品の品質向上を検討する。