タータンのふるさとスコットランド

03年1月作成
それぞれの写真は、クリックすると大きくなります

 イギリスの染織品としてまっ先に思いつくのはタータンであろう。「イギリス」という名前は「イングランド」に由来するが、正式にはグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国であり、グレートブリテン島にはイングランドのほかにスコットランドとウェールズという地域がある。それぞれがもともとは独立国で、固有の文化を持っており、スコットランドに至っては、自ら紙幣さえも発行している。タータンは、スコットランドのハイランド(スコットランドの北部に広がる高地地方)に起源を持つ伝統の織物である。

 タータンというのは、当初はその柄を意味していたのではなく、布の種類を意味していたが、現在ではあの独特の柄を指す。模様がチェック柄であることから日本ではタータンチェックと呼ばれることも多いが、現地では単に「タータン」と呼ばれる。スコットランド特有の氏族(クラン)ごとにその柄が決っており、その名字に対応する柄がある。従って、その種類は膨大なものである。クラン土着の地でよくとれた染料植物に依存して色や柄が決まっていったと考えられている。キルトという男性もはく「スカート」に用いられるだけでなく、用途は多様である。

いろいろなタータン

タータンを訪ね、ロンドンからエジンバラへ

エジンバラへ向かう列車は、ロンドンのキングスクロス駅から出発する。キングスクロス駅といえば、ハリポッターで、ボグワーツ行きの列車が発車した、9と4分の3番線があるはずの駅である。 
ロンドンのキングスクロス駅 エジンバラ行の特急 所用時間は約5時間 エジンバラ駅に着いた特急列車 エジンバラの駅から地上に出たところ
スコットランドの首都であるエジンバラは、丘の上に建つ堅固な城の周りに広がっている街である。スコットランドは、1707年までは独立国で、イングランドと激しい戦いを重ねてきた。その中心となったのがこのエジンバラ城である。小高い岩山の上にそびえている。中に入っていろいろな所を見学していくと、戦いの歴史をひしひしと感じる。
丘の上のエジンバラ城。左の写真の手前に見えているギリシャ風の建物はスコティッシュ・ナショナル・ギャラリーで、多くの名画がおさめられている。
 
エジンバラ市内を歩く

コムリーにあった、タータン博物館

 スコットランドのグラスゴーから北々東60キロのコムリーという小さな町に、以前タータン博物館があった。近くにはロッホ・アーンという湖が広がっている田舎町である。ロッホとは、この地方に特有の細長い氷河湖である。歌にも歌われた「ロッホ・ローモンド」が有名である。ネス湖もロッホ・ネスである。
ロッホ・アーン

 この博物館は、2000種を越えるタータンのサンプルを所蔵し、織り機や糸車や歴史的な説明の展示とともに常時400点以上の柄を見ることができようになっていた。各種のタータンが縦横に並べてあるのは壮観であった。タータン博物館のパンフレットには、「あなたのタータンを見つけてください!」と大きくかかれていた。また、ガイドブックには約500の名字が並んだ索引があって、自分の名字から先祖のクランのタータン柄を捜せるようになっていた。このことはスコットランドの出身者がアメリカやカナダ(もちろんイングランドにも)に多数渡っており、その人の子孫たちがスコットランドを訪れて、自分たちのタータンをみつけることができるようになっていることの反映である。スコットランド人の名字には、次のようなものがある。
  マクドナルド、マックィーン、マクレガー、スチュワート、グラント、キャメロン

 ちなみに、「マクドナルド」であるが、これは、スコットランドの有力なクランの一つである。主にスカイ島を中心としたスコットランド北西部にその勢力があり、今でもマクドナルド一族の長(チーフ)はそこに居を構えているらしい。一時は他の勢力との抗争のためにつらい時代があったようであるが、今やその名前はハンバーガーとともに世界にとどろくようになってしまった。"Mac"とは、「〜の子供たち」という意味で

 タータン博物館の屋外には、昔染色に使われていた植物を植えたミニ植物園があった。染色には苔類や木いちごの類などのさまざまな自生の植物が使われてきた。しかしながら、現在のタータンはほぼすべてが合成染料による染色・機械織りである。タータンの模様はチェックという単純なものなので、柄の形成に伝統的な技法が重要となることはない。したがって、手織りである必要性はないと考えられ、すべて機械織りになったものと思われる。また、色にしてもクランに特有の柄が、それがどんな色でどんな模様になっているかということだけが問題であり、どうやって染めたかが問題にされることはない。したがって、必然的に天然染料は合成染料にとって変わられ、天然染料が残ることはなかったと思われる。
コムリーにあったタータン博物館

様々なタータンの柄

園内の染料植物園

園内の染料植物園
 現在この博物館は移転となり、エジンバラにある。スコティッシュタータン博物館として、プリンセス・ストリートに面したスコッチハウスビルの4階にあるとのことである。
 参考:「イギリスのテキスタイル・コスチューム博物館のすべて」 日下部信幸、家政教育社(2002)
 

エジンバラにあるタータンの工房

 エジンバラ城の入口の手前に、タータンを織る所を見せてくれる工房がある。タータンに関する展示のコーナーや、みやげ屋を売っているコーナーもある。
全景。この坂をもう少し上れば、エジンバラ城の入口。 内部には大規模な織り機でタータンを織っている 手織の実演もある

 

 
人形を使ったタータンの製造工程の展示
 
羊から羊毛を刈り取る 羊毛繊維を整える 紡いで糸にする
糸を巻き取る 染色 機織り
 

 

ロンドンへ行く

フランスへ行く。

トップページへ戻る