【公開授業】
○ 開催日時:平成20年10月31日(金曜日)1限(午前9時〜午前10時30分)
○ 場所:L1−402教室
○ 実施者名:英語文化学科 三宅弘晃講師
○ 科目名称:「活用文法B」 ○ 対象クラス:大英1A 72名
【授業研究会】
○ 開催日時:平成20年10月31日 17:00〜18:30
○ 開催場所:本館4階会議室 ○ 参加人数:22名
○ 司会者氏名:齊藤文夫 ○ 記録者氏名:山田慎人
討論の概要
T 実施者による科目の説明
- 受講生の現状
英語文化学科では、英語科目の中でも、Four skillsにかかわる科目と「活用文法」、「英語の発音」「TOEIC演習」は必修となっている。
他の科目である程度能力別のクラス分けがされているのに対して、「活用文法」は能力別ではなく、1クラスの人数も多い。
結果として、受講生にはTOEICの点で言えば280〜730点と英語力に大きなばらつきがある。
皆が満足できる授業をすることは簡単ではないが、皆のためになる授業を行うよう努力している。
- 授業の概要
授業のなかでは、文法の説明と問題演習を交互に行い、理論と実践を両方カバーするように心がけている。
- 教科書について
- 教科書に関しては、MUKOGAWA English Grammarを使用している。
学科で「グラマープロジェクトグループ」を作って、共同で開発した教科書である。
- 全部で24章あるが、前期に12章、後期に12章扱う。1章ごとに、文法の説明が見開き2ページ、
演習問題が見開き2ページある。この教科書は中学・高校で学んだ英語の強化を図り、文法知識を活性化することを目的に作成された。
- 前期後期の授業の回数に合わせた章だてになっているだけではなく、学科の学生の得手不得手に合わせて作った教科書であり、授業で 非常に使いやすい。
- 著者に後光が差すという利点もある。つまり、自分の名前が著者として教科書に載っているので、学生もそれに感銘を受けてよく話を 聞いてくれる。

U 自由討議の概要
- 授業の目的について
- 「活用文法」の授業の根幹に関わる問題として、英文では何のために英語を教えているのか?
学生にどのように動機付けするのか?
(三宅)英文はその点で難しい。学生は、1年生の段階では、英語を将来どう使うのか分っていない学生が多い。1年次には、
むしろ、フォートライト留学に向けて英語を一通り勉強しなおすことが最大の目標となり、その先は見ていない。現在の2年生からは、
フォートライトから帰国後、3年次から3つの系に分かれて学んでいく。ここで、将来に関して、ある程度の選択をする。
3つの系というシステムが導入された意図も、学生に将来について考えさせ、学習への動機を高めることにある。
(出席者の発言)
ある特定の資格取得を目指す学科、あるいはその資格を活かした採用試験への準備が授業の中心となる学科と、英文のようにそうでない学 科では、状況が違うのではないか。
- 受講生の能力差について
- TOEIC280点から730点という差に少し驚いている。
280点の学生がいるということは、入試の段階でのスクリーニングは機能していないのか?
(三宅)入試ではいろいろな選抜方法があり、力のない学生が入ってくることもある。しかし、280点も730点も例外的であり、
1年生の段階では400点前後の学生が大半である。
- 他学科で英文講読の授業を担当しているが、英語力の分布が、中間がなく上と下に2極化しているという印象 がある。英文でもそうか?
(三宅)実際に教えていると確かにそういった印象を受けることはあるが、学科でのTOEICの得点のデータ分析ではそういった結果は
出ていない。
- 授業の内容、方法について
- 能力別のクラス分けがされておらず、力の差が大きいクラスということだが、トップレベルの学生も
関心を示すような話が入っていたように思う。これは意図的にそうしているのか?
(三宅)力のある学生はオフィスアワーなどに積極的に質問にくる。こういった機会に上位の学生が何を欲しているのかを判断して、
授業の内容にそれらの学生が求めているものを入れていき、上位学生にとっても満足がいくように努力している。
- 内容の豊富な授業で、英語を学ぶ上でなぜ文法を学ぶ必要があるのかを学生に分からせるような内容だったと 思う。
(三宅)文法と実際に英語を使うときに必要となるスキルの間のインターアクションを重視している。
たとえば、時制について説明するときには、Winnie-the-Pooh(くまのプーさん)に出てくる文を使って、簡単な文でも、
文法の規則によって支えられていることを示したり、そこにある作者の意図などを説明したりするなど、工夫している。
- 今日の授業は非常に静かだったが、私語はないのか?
(三宅)私語はない。関心を持って聞かせるために、高校では「単に覚えろ」と指導する事項をきちんと説明する、さまざまな文法事項の
つながりを学生に意識させるようにするなど、工夫をしている。
また、エクササイズの最後の問題は意図的に少し難しくしてあり、授業で説明しない。
やる気のある学生はオフィスアワーに質問にくる。そうなると詳しいことを1対1で教えられる。そういった学生が後で自分のゼミを選ん でくれることも多い。
- 「文法の説明が長すぎる」という印象を持った。もっと双方向、対話形式の授業はできないのだろうか?
(三宅)今日扱った関係代名詞は特に長い説明が必要だ。いつも文法の説明に長い時間をかけるわけではない。
週によっては説明を早く終え、問題演習を行う。「双方向、対話形式の授業」という点では、1年生配当の「活用文法」では基礎を教え込 むことが目的であり、「学生との対話」は難しい。しかし、3年生配当の「コミュニケーション論」になると、「学生との対話」が可能に なる。すでに基礎を教えてあるから、授業の前提となる知識の量もかなり多い。
私のスタイルというより、「活用文法」という授業の目的が、「対話形式の授業」をすることを不可能にしている側面もある。
- 学生の授業態度と座席指定の是非について
- 授業態度の悪い学生にはどう対処しているか?
(三宅)座席指定を行っており、これはかなり効果がある。
ただし、前の方で授業を受けたいやる気のある子が後の席に座らなければならなくなるという問題もある。
(出席者からの提言)
・ 座席をローテーションにするという方法もある。
・ 基本的に座席指定だが、前2列は自由席にしている。
・ 座席を決める際には、学生の間のレベル差を利用して、上位の学生にアシスタント的な役割をさせる座席の配分方法もあるのではない か?
(三宅)授業では毎回小テストを行っており、座席指定には小テストを番号順に集めやすいという利点もある。
(出席者の発言)提出物を集めるために座席指定にするというのは、本末転倒ではないか。定期試験のように、番号札を使って授業終了後 に集めるという方法もある。
- 本日の公開授業では、遅刻者が多く、トイレ退出も目立ったことにショックを受けた。最初に厳しく注意をし ておけば、こういうことは起こらないはずだ。
(三宅)通常授業が始まって最初の5分に小テストをする。それでも、5、6人は遅れてくる。
いつもほぼ同じ学生で、小テストの点数も、期末テストの点数も低い。最終的に単位を取れない学生にも、遅れてくる学生が多い。
しかし、遅れた学生を授業から締め出すという方法も、それはそれで問題がある。英文の場合は、「フォートライト留学に行って困らない 程度の英語力をつけさせる」という目的があり、その機会を奪ってしまうことになる。
また、ある程度学生の自主性に任せるというのは、英文の教員にかなり共通する態度かもしれない。
(出席者の発言)
- 確かに、アメリカなどでは学生を大人扱いして、授業への参加度も自分で判断すべきだという雰囲気が強い。
英文でも、英語を教えているだけあって、そういう考えを持つ教員が多いかもしれない。
- 学科にもよるが、この問題に関して、教員間で個人差が大きいような気がする。
V FD活動の今後の方向性について―個人技から集団技への練磨―
- 大学における授業改革には、A「個人技としての授業力を高める」側面と、B「学科単位、専攻単位、
学部単位の教授団による教育力を高める」側面と、二つあると思われる。
まずは「個人のレベルから始めてみよう」ということで、大学授業研究プロジェクトでは取り組んできた。
個人のレベルでの授業改善への努力は、当然のことながら今後も継続されねばならないが、FD活動としては今年度いっぱいで一段落つけて 、「学科共通の理解を作り上げていく」次の段階に移るのが望ましいのではないか。
- 英文に限って言えば、発音とリスニング関連科目、リーディング関連科目、ライティング関連科目、英文法関連科目、TOEIC演習科目 、外国人担当の英語科目のそれぞれにコーディネータを一人ずつおいて、同一科目を担当する教員間の議論をとりまとめ、また、
コーディネータ同士が集まって議論を重ねることで、同一教科のシラバスや授業内容をできるだけ統一し、異なる科目間の連携も
強化するという努力を、すでに行っている。
