FD推進委員会主催の「公開授業」を開催しました

FD推進委員会では、本学で初めての「公開授業」及びそれを踏まえての「大学授業研究会」を、下記のとおり開催しました。
 今回は、FD推進委員会の委員でもある食物栄養学科の松井徳光教授に、授業公開をお願いしました。また、参加された教職員にはアンケートを お願いし、当日の公開授業や担当授業における問題点、FD推進委員会活動に関する期待などを調査しました(回収率:69.4%)。これらの内容に ついては、現在集計中のため、まとまり次第お知らせします。
 なお、松井先生からは、大学授業研究会での様々なご意見をふまえ、ご自身のこれまでの取り組みが他の先生方の参考になればとのことで、後日 「私の授業づくり」としてまとめていただきました。当日の実施報告とあわせてご覧ください。
  学期末のお忙しい時期にもかかわらず、授業公開に応じてくださった松井先生と受講学生、参加いただいた先生方にお礼申し上げます。

◆「公開授業」実施報告◆
1 開催日時:2008年7月29日(火) 10時45分〜12時15分
2 開催場所:メディアホール
3 公開授業:「微生物学」(必修科目)
4 授業担当:食物栄養学科 松井徳光教授 
5 受講学生:120名
6 参観教職員:49人 (大河原学院長、糸魚川学長、今安副学長、卒業生2名含む) 7 アンケート回収:34人(回収率:69.4%)

【授業概要】 
 前期最後の授業となったため、これまでの復習とまとめを中心に授業が展開されました。授業を効率的に進め、学生達の自学自習を助けるため、 パワーポイントで作成した穴あきの教材が事前配布されており、学生達は元気よく手を挙げて先生の質問に答えていました。
 回答が正しければ「よくできた!」、難しい質問には「よくわかったね!これは4年生でも難しい」とほめ、逆に簡単な質問に答えないと「どう してわからないの、ここ大事です」と厳しく指摘。メディアホールではありましたが、可能な限り壇上を動き回り、常に学生とのコミュニケーショ ンを意識して声かけされ、回答を引き出すように授業が進められました。
 また、パワーポイントの教材は非常に分かりやすくまとめられており、松井先生オリジナルで「2類感染症のSARS、急性灰白髄炎(ポリオ)、ジ フテリア、結核」の語呂合わせ「サーズ、急に自決!」と工夫され、随所に先生の熱い教育意欲が伝わってきました。
 教材のパワーポイントが終了した後、突然、今年1位に輝いた食物栄養学科の体育祭応援団の画像を表示、この1位は過去の先輩の努力があってこ そ!と急展開。管理栄養士国家試験の合格率と関連付け、今年の卒業生の91.3%を讃えた上で、さらに1年生には日本一を目指せ、君たちにはでき る!と激励。その第1歩が初めての前期試験であると、最後は「気合い!」で締めくくられ、大きな拍手が湧き上がりました。


 公開授業を踏まえての「大学授業研究会」実施報告

  1. 開催日時:2008年7月29日(火) 16時30分〜17時45分
  2. 開催場所:MM−506
  3. 参加人数:25人
  4. 内容(記録:齊藤)
T まず、松井教授から、今日の公開授業を踏まえての感想などをうかがった。その概要は、以下のとおり。
  1. 前夜は寝られなかった。授業中は、私も緊張していたし、学生も緊張していたように見受けた。学生の声もふだんよりは小さかった。
  2. 会場が、大きすぎたように思う。ふだんの教室とちがうので、やりづらかった。
  3. 当初から、このような授業をしていたわけではない。授業アンケートなどを通して学生からのいろいろな意見(板書の字が小さい、 早く消さないでほしい等々)を聞き、徐々に改善して、今の形になってきた。パワーポイントは早くから使っている。スライドは毎年更新 している。スライドの内容は増えこそすれ、減ることはない。
  4. 要点を書いたプリントを配布すると、学生は安心して寝てしまう。穴あき問題を書いたプリントを事前に配布し、予習させるなどの工 夫をしている。国家試験対策にも配慮している。
  5. 何ごとも最初が大事。特に1年時の授業で「気合い」を入れるのが大事だと思っている。また、学科の教員全員が同じベクトルの向き になることが大切だと思う。
U その後、参加者が自由にコメントを出し合い、質疑応答を展開した。主な発言の概要は以下のとおり。
  1. 穴あき問題のプリントを事前に配布するなど、学生が予習をするように配慮している点がすばらしい。また、穴あき問題や正誤問題を パワーポイントで提示し、学生に回答させたり、正誤を挙手させたりして、双方向の授業になっていた点がよかった。
  2. 食物栄養学科は、教員にも学生にも、管理栄養士資格を取得させる・取得するという明確かつ共通の目標がある。したがって、 あのような授業ができるのだろうとも思う。しかし、文系や芸術系の学科では、明確な目標を共有することがむずかしい。 そのような学科で、どのような授業を目指すのかが、今後のFD課題となろう。
  3. 公開授業をすることについて、学生から拒否反応はなかっただろうか。(この質問に対し、松井教授によれば「そうしたことは全くな かった」とのこと。)
  4. 授業のための設備(教室のサイズ、机、いす等)などにも、検討・改善の余地があると思う。授業のやり方だけでなく、教育環境の整 備も大切だと思う。
  5. 熱心な学生であれば問題ないが、授業についてこられない、あるいはやる気の乏しい学生をどうサポートするかが問題である。
  6. 予習させようと思っても、学生はなかなか予習してこないのが実情であり、苦慮している。
  7. 松井先生の授業へのコメントとして、口調に熱意があったこと、不要な間投詞(「あー」、「うー」など)がなかったこと、話すスピ ード、プレゼンの仕方、マイクの使い方などが、うまいと思った。ストーリー性があり、起承転結のある授業展開もよかった。 学生の心をつかんでいた。教壇上を動いて目線をいろいろな方向へ向けているのもよかった。(この発言に関連して、松井教授によると 「ふだんでもワイヤレスマイクを持って、教室内を動いている。居眠りの学生を起こしたり、質問を浴びせたりしている。また、 特に座席指定はしていない」とのこと。)
  8. ホワイトボードの字が見づらかった。書画カメラを使用したほうがよかったのではないか。
  9. 演習科目などは公開できるのだろうか。今後検討が必要だと思う。
  10. 学生と教員との一体化をいかにして実現するかが課題であると思う。理系で資格取得をめざす学科は、学生・教員がひとつになりやす いだろう。また、今日の授業はうますぎて、これから公開授業をする先生は苦労するのではないかと思った。→ 今回の授業に観取された 学生=教員の一体感の前提には、当該学科全体の一体化があるように思われる。教育基礎組織としての各学科の教育的一体化をいかにして 醸成していくかが、FD推進活動の窮極的課題とも言える。
  11. 松井先生のキャラクターの魅力が出ていた。教員によっては、あんな魅力的なキャラクターを持っていない者もいるので、同じような 授業をするのはむずかしいと思う。→ 授業というものは、その科目の専門性のみならず、担当者の性格や人間性などの不確定要因によっ ても規定されるので、たとえ同一科目であったとしても「同じような授業をする」ことなどできず、先生なりの授業を目指してください。
  12. 授業の最後に「めざせ、日本一」と、全員で気合いを入れたのには感心した。

 私の授業づくり 〜「公開授業」を振り返って〜食物栄養学科   松 井 徳 光

この度は糸魚川学長およびFD推進委員会のご指名により、誠に僭越ではございましたが公開授業を実施させていただくことになりました。 直前までは大きなプレッシャーと多くの不安を抱えておりましたが、教職員の皆様および学生の皆さんのご理解とご協力のおかげで、 無事終了することができました。貴重な体験をさせていただきましたことを心から感謝申し上げます。ありがとうございました。 

さて、今回の公開授業で講義をさせていただきました「微生物学」の内容は、私が武庫川女子大学へ勤めさせていただきました 18年前に短大食生活学科で担当していました「食品微生物学」から発展させています。勤務しました翌々年から授業アンケート調査がはじまりました。 当時の評価は5段階として3くらいでした。「字が小さい」「黒板を消すのが早い」「語尾が聞き取りにくい」「話すスピードが速い」など改善すべき コメントが多く書かれていましたが、一番大きな問題点は「内容が難しすぎる」というものでした。すぐに改められるものについては、 授業中に学生に確かめながら直ちに改善していきましたが、「内容が難しすぎる」ということについてはかなり時間がかかりました。 武庫川女子大学へ勤務するまでは研究に没頭し、一冊の教科書の範囲を全て熟知していたわけではありませんでしたので、事前に予習をして、 知識を増やしていきましたが、それを「うまく学生に教える」ということは大変難しいことでした。一回一回の授業を終えるたびに、 授業を振り返っては反省し、改良を加えていきました。

しかし、相変わらず、一方的な講義を展開しているだけで、学生が理解できているかどうかについてはともかく、 『自分自身の中だけでうまく授業ができたか』ということが中心で、学生の立場での改善に気づくには、まだまだ時間が必要でした。

その後、パワーポイントが登場し、積極的に授業に取り入れました。また、担任として初期演習などを通じて、学生の気持ちや考え方などにも 目を向けるようになりましたが、学生委員や学生部常任委員として多くの学生と話す機会もあり、次第に学生の立場から考えることができるようになったと 思います。『一方的に講義をしているのでは、学生が理解しているかどうかが分からない。そうだ、問いかけてみよう!』そう思った時から、 徐々に学生に対して「何でしょう?」「どうしてか分かりますか?」などと問いかけながら授業を進めるようになりました。すると、 『学生が分かっているか、分かっていないかが、良く分かる』ということも分かり、臨機応変に授業の進め方も変えていけるようになり、 学生との対話形式による変化に富んだ授業が次第に定着していきました。さらに、座席の位置とは関係なく学生全体に可能な限り同じ雰囲気を 感じさせるために、教卓に留まることなく教室の左右前後を授業中にあちらこちらへ移動しながら、学生の状況を確かめながら授業を進めることも できるようになっていったと思います。また、パワーポイントに使用する字の大きさや図や写真などについても改良を重ね、 毎年、内容の充実も図っていきました。パワーポイントにすれば板書する必要がなく、その分だけ多くのことを学ばせることができることもあり、 積極的にパワーポイントを授業のツールとして使っていきました。

しかしながら、当初は、パワーポイントで示したものをノートに書かせていたのですが、「待つ時間がもったいない」と思い始め、 パワーポイントを印刷したものを学生に配布しましたが、そのためにノートを取らず、安心して眠る学生も登場しました。そこで、 写し出すパワーポイントの中で重要なキーワードを(  )内に入れる形式にしたプリントを別途準備して学生に配布して書かせました。 しかし、少しずつの時間ではあるのですが、待つ時間が惜しくなり、(  )に入れる形式を一部残しつつも、パワーポイントに示した赤や青で 書かれた文字等は重要であるという形式でマークさせるようにしました。

最近は、時代のニーズもあり、授業の中で管理栄養士国家試験を意識させたものも取り入れています。その時間の授業内容に関連した 管理栄養士国家試験の過去問等を紹介し、その場で考えさせ、解答させ、解説します。また、関連した歴史的な物語や現在の日本および 世界の状況等も盛り込んでいます。

武庫川女子大学に勤務して19年目を迎えています。その間、研究や学友会活動には微力ながら力を注いできたつもりでしたが、 その一方で、特に意識はしていなかったのですが、「どうしたら、いい授業ができるだろう?」という疑問を持ち続け、改良に改良を 重ねて授業改善を試みてきたもう一人の自分がいたことを今になって気づきました。以前は「研究こそ命!」と思っていましたが、 講義のみならず、学友会活動の指導等の経験から、『教育が人をつくる』ということを実感しました。今は「教育もいいな!」と思っています。

特に20代、30代で授業の進め方について悩んでおられる先生方は、「どのようにすれば、より良い授業になるのか」について考えてみてください。 先輩の先生方の方法を聞いてください。学生の意見に耳を傾けてください。必ず、それぞれの先生方の授業にあった素晴らしい方法が見つかるはずです。 最初から、学生も先生自身も満足できる授業や学生指導ができる人は少ないと思います。試行錯誤の繰り返しが改善策を生み、 必ず、いい方法に出会えると思います。先輩の先生方にお願いがあります。授業の進め方で悩んでおられる後輩の先生方に、 先生方が経験された成功例や失敗例の話をしてあげてください。お願いします。

現在、大学基準協会の評価委員をさせていただいておりますが、全国の大学では、『FDに対してどのように取り組むか?!』が大きなポイントの 一つになっています。つまり、それぞれの大学に『教育する力』が問われているのです。日本の大学の水準を高め、世界に誇れる未来の日本人を 育てるためにも、一人ひとりができることを今一度、考えてみることが大切だと思います。

開学以来、武庫川女子大学において教育に力を注いでくださった先輩の先生方の思いも込めて、“日本一素晴らしい教育をする武庫川女子大学” を目指してほしいです。武庫川女子大学の全ての教職員が力を合わせれば実現すると思います。

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