日本語学概論A・B 山本 俊治
授業目標:  「言葉」には、「形」・「音」・「義」という三要素が備わっているが、本講義では、「日本語」という、私たちの生活の言葉を、「音」(音声・音韻・アクセント)と「形」(文字)の面から正しく認識し、私たちの生活に役立て、その改善を図っていくのを目標とする。
科目内容: 「音声・音韻論、文字論」
 日本語学は日本語の科学であり、日本文学は日本語で書かれた文学、中国文学は日本語に翻訳されたものを主として研究対象にする。書道は日本語表記の文字を素材とした芸術である。したがっていずれの研究領域でも、日本語に対する適確な知識が基礎として大切なことはいうまでもない。
 日本語という全一体をみていくためには、音声・音韻、文字、語彙、文法、文体、方言等の各分野にわたる考察を総合していく必要があろう。しかし、1年間、24回という期間、講義回数からは、どの分野も中途半端に終りかねない。本講義では、高校までの日本語に関する学習内容、本大学での日本語、日本文学関係の講義内容を勘案して、音声論・音韻論、および文字論にしぼって、日本語の実態を明らかにしていきたい。
授業計画: 日本語学概論A
1   講義のまえに
2   言語学と国語学、国家と言語の関係を考え、国語(日本語)の概念を明らかにする。
3   日本語の諸相を、地域的、時代的に考え、日本語学の対象である日本語の概念を明らかにする。
4   音響と音声の関係、言語音と非言語音の区別を明らかにする。
5   音声器官の構造とその働きを概説し、「ねいろ」と「ひびき」について概説する。
6〜7 日本語の音声把握上、常識的には最小の単位である音節について、その種類、構造、性格上の特徴について概説する。
8   日本語の単音について、母音の分類とその実態について、理論的、経験的に概説する。
9   日本語の子音について、その分類と実態を概説し、万国音標文字での表記に習熟せしめる。
10〜11 音韻と音声、音韻論と音声論、音素と単音、音素の種類、音韻論的音節と音声論的音節、音韻論的音節構造、モーラについて概説する。
12   モーラの特徴を概説し、モーラ記号に習熟せしめ、清濁、四つ仮名、拗音の問題を考える。

日本語学概論B
1〜4 音節結合、語音変化につき概説し、同化、脱落、交替、転倒現象を具体的に考える。
5〜7 アクセント、高低アクセント、乙種アクセント、甲種アクセント、文アクセント、イントネーション、プロミネンスについて概説する。
8   文字の概念および文字発達の過程とその種類について概説する。
9   文字成立以前の伝達手段−−口承、使い棒、刻木、結紐結縄、絵文字について概説する。
10   漢字について、字体の変遷、字体の整理統一について概説する。
11   漢字の構造(六書)、漢字の音(古音、呉音、漢音、唐音)、および漢字の訓について述べる。
12   仮名について、真仮名(万葉仮名)、草仮名、女手(平仮名)、片仮名(略体仮名・省画仮名)について概説する。
評価方法: 期末テストの成績、出席状況、リポート等を総合して評価する。
教科書: 島田勇雄他『国語概説』おうふう社
参考書: 教科書の中に掲げられている参考文献で、図書館にあるものを利用すればよい。
留意事項: 講義の区切りごとに課題を出す。前期、後期それぞれ30題ほど。それを中心に復習を励行すること。日本語学概論の専用ノートを用意すること。不明な点は積極的に研究室まで質問に来ること。