臨床心理学T 杉村 省吾
授業目標:  昨今、いじめ、不登校、校内暴力、児童虐待などの激増を反映して心の専門家といわれる「認定心理士」「臨床心理士」をめざす人たちが増加している。本講では、臨床心理学の一環としてカウンセリングの実際を中心に論じる。
科目内容:  昭和52年を境として、それまで心より物が大切にされたのに対して、心の豊かさが重要視されるようになった。物が豊かになるに反比例して、心が貧困化するといわれている。阪神淡路大震災や神戸市小学生連続殺害事件などの自然災害・人的災害を契機として、今、不適応状態に陥った人々への「心のケア」の重要性が指摘されている。文部省の中教審でも、スクールカウンセラーや家庭教育カウンセラー等の心の専門家を養成することに主力を注ぐようになった。講義では小児期から老年期にいたるさまざまな心理的病理現象を取り上げ、その診断法、治療法について具体的な事例を上げながら考察を加える。
授業計画: 1 G. フロイトとC.G. ユングの心の構造
  フロイトの人格の3分説、ユングの普遍的無意識について学ぶ。
2 心の健康と自我の防衛機制
  心の成熟度を自我強度のメルクマールの観点から考察する。
3 カウンセリングの理論と実際
  主にC. ロジャースの来談者中心療法の技法を学ぶ。
4 カウンセラーの基本的態度
  カウンセラーズテストを実施して各自の共感性を自己洞察する。
5 精神分析の理論と実際
  主にフロイト派の簡易精神分析療法の実際を学ぶ。
6 受容とカタルシス
  子どもの遊戯療法はカタルシス効果があることを学ぶ。
7 抵抗と防衛
  人はなぜ人格的に変容することに抵抗を示すのかを考察する。
8 転移と逆転移
  人はなぜ他人に愛情を感じたり、憎悪を感ずるのかを分析する。
9 心理治療における制限
  セラピーのプロセスでおこるアクティヴアウトと制限の意味を考察する。
10 原始的防衛
  主に対象関係論の立場から羨望、嫉妬、投影同一視、理想化、価値の切り下げなどについて考察する。
11 遊戯療法と箱庭療法
  子どもに用いられる心理療法の実際を事例を通じて学習する。
12 昔話の深層心理
  童話の臨床心理学的意義をユング派の立場から検討する。
評価方法: 期末試験に平常成績および出席点を総合的に勘案して評価する。
教科書: 杉村省吾著『臨床児童心理学の実際』昭和堂
参考書: 杉村省吾著『心のプロムナード』川島書店
留意事項: 講義の初回から教科書を利用して講義を行うので、それまでに入手しておくこと。