漢方処方学 山内 和子
授業目標:  “漢方”は日本の江戸時代に主流であった中国式の医術、医療または医学に対して、西洋流医療(蘭方)と対比させるために明治以降に名付けられたものであり、漢方処方には生薬を配合して用いるので、本講では、生薬の薬効に基づいた漢方処方学の基礎知識を修得する。
科目内容:  現在わが国では、多数の漢方エキス剤が薬価基準に収載されて健康保険適用可能のため、病院、医院における投薬が全国的に普及し、ほとんどの薬局、薬店が漢方製剤を取り扱っている。また一部その副作用も問題視されるようになって来た。このような現状を考慮して、本講では薬剤師に必要とされる漢方の特質、歴史、漢方処方などの基礎知識と応用について、講義を行う。
授業計画: 1 漢方の特質
  現在医療に対してソフトな医療であり、全体論的な観点に立っていることを具体例で説明する。
2 漢方小史
 2〜3世紀、中国後漢の末期、張仲景によってまとめられたとされる「傷寒雑病論」の中で、熱病の病期を三陽病(太陽病、陽明病、少陽病)及び三陰病(太陰病、少陰病、厥陰病)に6分類する独特の疾病感と診断法、並びに汗、吐、下、和、温、温補法などの独特の治療法について解説し、さらにその後の漢方小史について述べる。
3 処方学
  生薬の配合または調合、用量、剤型、用法等について解説する。
4 小柴胡湯及び関連処方の作用と応用
 病院、医院では小柴胡湯のエキス製剤の投薬が圧倒的に多いので、その作用を処方を構成する生薬の作用に基づいて解説し、その多面的な応用にも言及する。更に数種の関連処方についても応用例を展開する。
5 当帰芍薬散及び関連処方の作用と応用
 体内の水分が病的に貯留する場合の病態概念“水毒”とこれに対する薬効概念“利水”について、当帰芍薬散及び関連処方の例で解説する。
6 桂枝茯苓丸及び関連処方の作用と応用
 ■血といわれるような病態認識は現代医学にはないが、漢方では難治性、再発性疾患の多くは■血と関連があるとして駆■血剤と呼ばれる処方群によって治療する。これらについて解説する。
7 黄連解毒湯及び関連処方の作用と応用
  同じく現代医学での広義の炎症と考えられる熱症とそれに対する寒涼薬について解説する。
8 補中益気湯及び関連処方の作用と応用
  同じく、熱症とは逆の病態概念“寒症”とそれに対する温熱、潤燥薬について解説する。
評価方法: 試験期間中に筆記試験(100点満点)で実施する。
教科書: 山本巌校閲、桑野重昭著『漢方処方の基礎と臨床応用』広川書店
参考書: 厚生省薬務局監修『一般用漢方処方の手引き』薬業時報社