人とサルの間 |
授業目標: | 「人間とは何か」というおそらく答の見つからない問に少しでも答えようとするなら、ひとつの方法はヒトに最も近い動物である霊長類との比較研究を行うことだろう。この講義では、我々と他の霊長類の共通点・相違点を論じることによって、ヒトについての理解を深めることを目標とする。 |
科目内容: | サル(霊長類)を見ていると、ヒトとの共通点を多く見つけることができるだろう。しかし我々はこの我々に良く似た動物について十分に理解しているとは言えない。本講義では、まずサルの生物学的特徴、生態、環境への適応、行動パターン等について解説し、サルとヒトで異なる点および共通する点を明らかにする。次にヒトがどのような過程を経てサルの仲間とは異なる身体的特徴や生態を獲得してきたのかについて論じ、それらを通して生物としてのヒトについての理解を深める。 |
授業計画: | 1 霊長類の分類と哺乳類の中での位置付け:生物の分類の基本的な考え方を概説した上で、哺乳類の中におけるサルとヒト(霊長類)の位置づけを論じる。 2 様々なサルの紹介:霊長類には200種近い仲間がいる。その中にはとてもサルには見えないものも含まれる。ビデオ等を用いて代表的な霊長類を紹介し、霊長類グループの全体像を掴む。 3 霊長類の生物学的特徴と行動: (1) 霊長類が他の哺乳類とどのような点で異なるのか、ビデオ等を用いて紹介する。 (2) 霊長類の生物学的特徴の中でも、特に生殖活動について取り上げる。哺乳類の中でも特殊だと言われるヒトを含む霊長類の生殖、出産を概観する。 4 ヒトとサルの違い: (1) 移動運動(ロコモーション):霊長類は樹上に適応することで大きく進化した。我々の体にも樹上適応のなごりが数多く見られる。一方で、我々ヒトは特異的な直立二足歩行を発達させた。ヒトとサルのロコモーションを比較し、その特徴を考える。 (2) 社会構造:霊長類の社会、ヒトの社会、特に家族というものについて考える。 (3) 脳神経:ヒトが持つ大きく複雑な脳の進化的背景を探る。 (4) 言語:言語を持つのはヒトだけなのか。類人猿に言語を教える試みについて、ビデオ等を用いて紹介する。 (5) 文化:ヒト以外の霊長類が行う文化的行動について概説する。 6 霊長類とヒトの進化:我々ヒトが属する霊長類は約6500万年前に北米に現れたと言われている。その出現からヒトに至る進化を追う。 7 ヒトとサルを分けたもの:何故ヒトだけが他の霊長類から分かれ、ヒト独自の進化を遂げたのか。この問に対する答はもちろんまだ見つかっていない。講義では提唱されているいくつかの説を紹介する。 8 チンパンジーあるいはボノボについて:霊長類の中でも、これらの2種は最もヒトに近いといわれている。チンパンジーとボノボについて、あるいはその研究成果についてビデオ等を用いて紹介する。 |
評価方法: | 試験期間中に筆記試験(100点満点)を実施する。 |
教科書: | 必要に応じて資料を配布する。 |