卒業研究TA・TB 野口 芳子
授業目標  伝承文学であるグリム童話には、様々な時代の価値観が交錯している。グリム兄弟は編集の際、古代的要素を挿入したり、市民的道徳観に適合させたりして大幅に改変している。家族、恋愛、結婚などの近代的価値観が、グリム兄弟によってどのようにデザインされたのかを解明していく。
科目内容  西洋の伝承文学であるグリム童話には、211話のメルヒェンが収められている。ここではその中から、魔女が出現する話(25話)を中心に、具体的にその内容を検討していく。グリム童話の代表的悪人である魔女と継母を取り上げ、なぜ悪人は女性で、老婆で、血縁関係のない人であるのかを、家族社会学の視点とジェンダー学(男性学、女性学)の視点から考察していく。
授業計画 卒業研究TA
1 実際は違うのに魔女だと思い込む話:「ブレーメンの音楽隊」、「千枚皮」
2 姿の描写がない魔女:「かえるの王様」、「森の家」
3 変身魔術を使う魔女(男を石に):「二人兄弟」、「黄金の子ども」
4 変身魔術を使う魔女(男を木に、女を棒に):「森の中の老婆」、「トルーデおばさん」
5 泥棒する魔女:「キャベツろば」
6 閉じ込める魔女:「鉄のストーブ」、「青いあかり」、「太鼓たたき」
7 殺人する魔女:「兄と妹」、「白い嫁と黒い嫁」
8 殺人未遂を犯す魔女(1):「ヘンゼルとグレーテル」、「なぞなぞ」
9 殺人未遂を犯す魔女(2):「めっけどり」、「恋人ローラント」
10 女の魔女の話のまとめ
卒業研究TB
1 男の魔女の話:「フィッチャー鳥」、「梁」
2 魔女術を使う人の話:「白雪姫」
3 女の魔術師の話:「ラプンツェル」、「ヨリンデとヨリンゲル」
4 男の魔術師の話:「歌うぴょんぴょん雲雀」、「ガラスの棺」
5 賢女が現れる話:「泉のそばのガチョウ番の女」、「いばら姫」
6 古代の魔女信仰
7 近世の「新しい魔女」
8 魔女狩りの犠牲者(女)
9 魔女狩りの犠牲者(男)
10 まとめ
評価方法 出席状況、口頭発表、討論参加、レポートなどを総合して評価する。レポートの評価は、調査力、分析力、考察力、独自性、論旨の一貫性などを重視する。
教 科 書 野口芳子『グリム童話と魔女−魔女裁判とジェンダーの視点から』勁草書房
参 考 書 野口芳子『グリムのメルヒェン−その夢と現実』勁草書房
留意事項 このゼミの学生は、ドイツ文学A、Bで行われる「魔女」に関する講義を必ず受講すること。

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