文学にみる「こころ」の諸問題T | 槌賀 七代 |
授業目標 | 文学作品は人のどのような心を、どのように表現しているのか、又、個々の作家は同じような問題をそれぞれがどのように表現し、それがその作家のどのような個性になっているのかを理解し、それが日本人全体の問題に、しいては「自分自身」の問題に繋がることであることに気が付いてもらいたい。 |
科目内容 |
「人の心を種」として生まれた「文学」であるが故に、私達人間の「心」の諸問題が、文学作品には様々なかたちで内包され、表現されているといえる。 この講義においては、まず私達人間の「心」の諸問題が作品世界にどのように表現されているか、又、その根源的な意義は何か。さらには、それはある種の系譜的なものとしての体系化が可能なものなのか、時代との相関関係はどのようなものか、又、今後の問題としてはどのようなことが考えられるか。このような問題を具体的な作品の精読によって考察していく。 |
授業計画 |
1 全体の説明:文学作品からどのように人の心の問題を読み解いて行くかを、具体的な例をあげながら説明する。 2 森鴎外『舞姫』を通じて:近代日本人の抱えていた問題を主人公太田豊太郎の心を読み解き、考察していく。 3 有島武郎『或る女』:近代日本人の問題を主人公葉子のこころの変遷を追い、読み解くことにおいて、考察して行く。 4 里見■『多情仏心』の問題:近代日本人の問題を里見の生き方に見る。 5 幸田露伴『五重塔』:主人公十兵衛の抱えた問題と近代日本人の問題との関係を考察していく。 6 樋口一葉『にごりえ』:主人公お力の心の変遷を追い、人として、根源的に背負っている問題を読み解いて行く。 7 夏目漱石『坊っちゃん』:文中の言葉を忠実にたどり、主人公坊ちゃんの背負った問題を明らかにし、さらに漱石自身の生い立ちを考慮することによって、漱石と私たち現代人のこころの諸問題の共通点を見いだしていく。 8 夏目漱石『行人』:作品『行人』を読み解き、そこに近代人のこころの問題とその原因を探る。 9 夏目漱石『こころ』:登場人物「先生」と「私」の関係に焦点をしぼり、そこから明らかになる近代人のこころの問題を考える。 10・11 夏目漱石『道草』・島崎藤村『新生』:作品の主題を考慮しつつ、作品に描かれた「家族」の問題を取り上げ、近代における家族と個人の問題を考えていく。 12 まとめにかえて:近代人のこころの諸問題について、その根源的な問題を明白にし、その原因を考える。 |
評価方法 | レポートで評価する。 |
教 科 書 | プリントを配付する。 |
参 考 書 | 適宜紹介。 |
留意事項 | 出席重視。 |