日本美術史  −仏像彫刻を中心に− 松本 包夫
授業目標  わが国の政治・思想・文化の流れを、それらが最も端的に具象化されている仏像彫刻の上から解明する。また併せて、仏像の製作年代判定の知識も得られるようにしたい。
科目内容  仏像と云うと何か古臭いと敬遠されがちだが、じつは仏像彫刻ほど日本の歴史を端的に反映しているものは無い。また世界的名作が多数遺存する点でも、他の美術分野に比して卓越している。本講は、仏教が伝來した飛鳥時代から始めて、仏像彫刻の美術的価値が事実上終熄する鎌倉末期まで、数百年に亘る各時代のそれらの表情・雰囲気・様式の変遷を、豊富なスライドを使って、日本歴史の流れとともに追っていく。(毎回スライド使用)
授業計画 1 (飛鳥時代) 古代の支配者は仏教をどう受けとめたか 北魏様式の厳しい作風と仏師止利 非止利系のやさしい仏像とその背景
2 (白鳳時代) 初唐期の新様式の流入 仏像の容姿に反映する民族的感覚 神厳抽象主義から清新溌溂美へ 金銅仏の世界とそのなかに芽生える唐式の新らしい造像技術
3 (天平時代) 国家仏教のシンボル東大寺大仏とその思想 東大寺法華堂諸尊等に見る究極の理想美 天平時代の造仏システムと乾漆・塑造の流行 奈良仏教の衰退と唐招提寺諸像に現れる次代への曙光
4 (貞観時代) 新しい国の守り天台・真言宗の伝来から密教の隆盛へ 大日如来と曼荼羅 神秘・官能と個性の貞観彫刻 一木造りの全盛とその思想背景
5 (藤原時代) 藤原貴族の願いと末法の世の救世主阿弥陀如来 大仏師定朝作の平等院阿弥陀像を頂点とする藤原彫刻の変遷 一木造りから寄木造りへ 仏所(造仏工房)の発生とその推移
6 (鎌倉時代) 東大寺・興福寺の復興と名工運慶・快慶らの作品に見る新様式 復古精神下の特殊な仏像と宋様式の彫刻 優雅典麗から写実主義へ 新仏教の勃興と仏像彫刻の実質上の終熄
 以上をだいたい各時代1・2回に分け、全11回ないし12回で通観する。(前・後期反復講義)
評価方法 各期末定期試験(筆記試験)。
教 科 書 特に指定しない。随時プリントを配付する。
参 考 書 浜田隆ほか監修『仏教美術入門』全6冊 平凡社
留意事項 できる限り毎回受講し、スライドによる仏像様式等の変遷を感じ取って頂きたい。美術史の理解はものをたくさん見ることが第一です。希望が多ければ実地見学も行ないたいと考えています。

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