人間の罪と救い

下村　鍈二

授業目標	カニバリズム（人肉食）は一般に人間に対する最も極端な攻撃行為としてタブー視されている。そういう限界的事例を入口として、人間が“生きる”ということの根本に本当はどういう問題が隠されているかを、受講生に問いかける。
科目内容	飢餓の極限状況におけるカニバリズム（人肉食）を象徴的に扱った武田泰淳の『ひかりごけ』を読みながら、作者が人類一人一人の頭に点したひかりごけの色の光の輪を通して、上述の人間の罪性の自覚とその浄化（救い）の道を探る。
授業計画	１　〈攻撃〉－動物と人間の違い（コンラート・ローレンツ『攻撃－悪の自然誌』・『ソロモンの指輪』）２　カニバリズム（人肉食）の由来（アレン『人喰いの神話』）３　〈聖なる飢餓〉－カニバリズムの起源と西洋人の自己認識の鏡像としてのカニバリズム（サンディ『カニバリズムの文化人類学』）４　欲望としてのカニバリズム（中野美代子『迷宮としての人間』・魯迅『狂人日記』）５　飢餓の極限状況におけるカニバリズム　(１)　古典的ヒューマニズム（野上弥生子『海神丸』）　(２)　リアリズム（天明飢饉に取材した三浦哲郎『おろおろ草紙』）　(３)　アンデス飛行機事故のヒューマン・ドキュメント（P.P. リード『生存者』）　(４)　良心の葛藤（大岡昇平『野火』）　(５)　象徴としてのカニバリズム（武田泰淳『ひかりごけ』）　(６)　光をみる視角（宮沢賢治『注文の多い料理店』）
評価方法	レポート評価に一部出席点を加味。
教科書	武田泰淳『ひかりごけ』新潮社（文庫版）大岡昇平『野火』角川書店（文庫版）

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