人間生活論 高田 康孝
授業目標  人間は動物の一種である。しかし、人間以外の動物とは、まるでことなった属性をはらんでもいる。この科目では、そうした人間の特質を理解するとともに、その生活のありようを、時代と地域ごとに比較しながら、総合的に理解することを目標とする。
科目内容  「本能」のままに一生をおくる人間以外の動物とちがって、人間の生活はひろい意味での「文化」を基礎にしていとなまれる。そのため人間の生活は、時代と地域がことなると、多様な形態をあらわにする。同時に、人間は永続性をおびた家族を形成する動物である。この授業では、こうした人間生活の諸相を、時間軸と空間軸にそって比較しながら展望し、その特質をあきらかにする。
授業計画  生活とは、文字通り「生存し、活動すること」である。その具体的な現象のなかに、わたしたち人間自身の特質があらわれる。現代は、その人間がつくりだした文明が、地球規模の自然や社会におおきなインパクトをおよぼす時代である。しかし、これらの問題も、その根源をみつめると、日常生活に根ざしている。この講義では、人間の本質的な特徴をふまえたうえで、その基本的な生業の多様性を、時間軸と空間軸にそって展望する。そのうえで、育児や衣食住をはじめ、家族・家庭生活とその機能、その多様化のプロセスを、自然や地域社会などとのかかわりに配慮しながら、しゅとして日本人の生活様式の変遷の過程としてとらえなおし、現代から将来の社会変化に対応しうる生活の質の向上と人間生活の幸福の増進に資する方途をかんがえる。
1 「人間」とは、どういう動物か――その@――動物進化における人類登場のドラマ
2 「人間」とは、どういう動物か――そのA――赤ん坊は、なぜ、たべられないものを口にいれるのか
3 人類の進化と家族の起源――生涯をともにする配偶関係は、どのようにして成立したのか
4 生業の原点としての狩猟・採集・漁撈――「生産しない生活」は成立するのか
5 生業としての農耕と牧畜――生活をささえる土地利用の方法さまざま
6 産業の発展と人類文明史の大筋――農業と工業と情報産業は、どのように生活をかえたか
7 「文化の相対性」と「比較」という方法――日本人とは、まるでちがう人生をいきる人びと
8 住居の一般的機能とその多様性――「客間のない住居」は現代日本に特有なのか
9 台所文化の比較研究――「台所のない住居」は成立するのか
10 衣服の機能と象徴性――人は何故、衣服を身につけるのか
11 あたらしい時代のあたらしい生活スタイル――「あそびが仕事になる」時代のくらしかた
12 21世紀の生活課題――「20世紀がのこしたジレンマ」から地球環境と諸民族文化をかんがえる
評価方法 通常の授業時間に、予告せずに適宜、小テスト(10点満点)を実施する。期末には、正誤選択問題と記述式問題からなる定期試験(100点満点)を実施する。これらを総合して個々の学生本人の成績とする。なお、追再試験は、課題レポートの提出によって代替する場合もありうる。
留意事項 学問は、それをまなぶ本人の日常生活体験とむすびつくことで現実感をともなった知識や技術となる。書物だけでなく、まなぶ本人の日常生活への興味と関心を基礎に本講義を受講されたい。

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