微生物学実験 | 大杉 匡弘 野田 裕子 |
授業目標 | 微生物は肉眼では観察されないので、その存在、分布、性質、作用、働きなどの理解が乏しい。微生物はどのような大きさであるか、どのように培養するか、どんな性質をもっているか、どのような働きをするかについて基礎と応用を含めた実験を行う。 |
科目内容 | 微生物として、細菌、酵母、糸状菌(かび)、担子菌(きのこ)について、顕微鏡観察、生育培養試験の基礎的実験と抗生物質試験やビタミンの微生物定量など微生物の性質をしらべる。また、微生物の利用として、伝統的な発酵食品を実際につくり、微生物の働きと役割について学ぶ。 |
授業計画 |
1 細菌を用いる実験 病原菌や衛生微生物の大部分は細菌であるが、細菌のすべてが病気を起こしたり食品を腐敗させたりすることでもない。細菌のほとんどは無害であって、広くは自然環境の物質循環としての役割を担っている。細菌の性質を知る目的で、グラム陽性の指標として乳酸菌、グラム陰性の指標として大腸菌を用いて、抗生物質試験を行う。細菌の中には食品などに利用されているものがあり、その一つの乳酸菌は、ヒトの腸内細菌としてその存在は特に健康のバロメーターとされている。乳酸菌を用いた発酵食品としてのヨーグルトをつくり、その化学的評価を行う。また、日本が世界に発信した「機能性食品」に挙げられている納豆は、大豆を細菌(納豆菌)で発酵してつくられ、血栓症予防効果が報告されている。納豆についても製造を行い、機能性としての血栓分解酵素活性をしらべる。 2 酵母を用いる実験 古来からの伝統食品としての酒類は、アジアでは糸状菌(かび)を用いる澱粉の糖化と酵母によるアルコール発酵によって製造される。酵母は、このアルコールと特有の風味を作り出す母体である。アルコール発酵を利用してつくられているパン、果実酒での酵母の働きの化学的評価を行う。 3 糸状菌(かび)を用いる実験 アジアの酒類は、澱粉の糖化に主として糸状菌(かび)が用いられている。日本ではアスペルギルス属のかびで、東南アジアでは、リゾープスやムコール属のかびの棲み分けが見られる。米粒にアスペルギルスかびを接種してつくる米こうじ(麹)は、日本酒、味噌、醤油の製造に用いられる。実験では、米こうじをつくり、澱粉からの糖の生成を観察する。 4 担子菌(きのこ)を用いる実験 一方、担子菌(きのこ)は形態上では糸状菌に酷似していて、同じように菌糸の生長が見られる。子実体になるところが、他の微生物、細菌、酵母、糸状菌(かび)と全く異なるところである。担子菌(きのこ)は元は微生物であるので、酵母や糸状菌と並んで真菌に含め分類されている。特に最近、抗がん抗腫瘍や血栓症予防効果などの効用が報告されているので、医食同源、薬食一如の観点から担子菌(きのこ)の培養と子実体形成試験を行う。 |
評価方法 | 出席点(20点)とレポート(80点)で評価する。 |
教 科 書 | 『微生物学実験マニュアル』を配布する。 |