食文化論 長尾 幸子
授業目標  最近の食生活の傾向を食の堕落と評する向きがある。何故・何時ごろからなのか。一方、食べる人の心の問題を大切にし「食べること」を文化として考える立場がある。ここでは、各人の精神のなかに潜在するものを注視し、温かく深遠なる食文化への気づきと次なる始動の重要性を認識する。
科目内容  近年の食卓を取り巻く環境の変化には、すさまじいものがある。二十世紀は敗戦を境にして、生活様式と価値観が一変した。さらに新しい世紀に入り、台所道具も変り続けている。
  「…これまで日本人が使ってきた厨房具・供膳具について、母親から伝承されにくい現代
   では、おふくろの味を再現するため様々の折り合いが必要になる。」 (『台所道具いまむかし』)
 この実態を踏まえ、私たちの暮らしの中に、これだけは伝承したい大(・)切(・)な(・)こ(・)と(・)を共に考究する。
授業計画  主に次の項目について講義する。実物の観察、ビデオによる視聴覚学習も並行して行う。
1 人類の食文化
 ・食文化と食事文化
 ・食と心
 ・考古学から食文化を考える
 ・年中行事と食事
 ・発酵の文化圏 他
2 日本の食事文化
 ・日本的食生活の形成
 ・おふくろの味
 ・外来の食事文化の定着
 ・食の美学
 ・食生活と風土 他
3 調理と食べもの
 ・文化としての調理
 ・料理書にみる調理の変遷 他
4 家庭の食事空間
 ・台所という空間
 ・台所の原風景
 ・台所道具の原像
 ・食卓の風景 他
5 食の情報化
 ・社会変容と食の文化
 ・調理教育と家庭の食
 ・江戸時代の食情報
 ・食事作法の比較文化 他
6 食の思想と行動
 ・食文化史による思想
 ・つつしみの美 他
7 食のゆくえ
 ・少子化、高齢化と食
 ・食卓のゆくえ 他
評価方法 レポート(60点)と平常点(40点)とで合計100点満点評価とする。
*平常点は、授業時の課題の提出状況と実出席状態を重視し、総合評価する。
参 考 書 石毛直道監修『講座 食の文化』社団法人農山村漁村文化協会 その他多数。

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