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年度 2014
科目名 アウシュビッツ 戦争と女性
担当者名 河内 鏡太郎
単位 2
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科目目的
Course Objectives
戦争が終わって69年になり、語り継ぐことは困難になった。体験者は減っていく一方である。戦争遺跡も消えている。若者の関心は薄れるばかりだ。第二次大戦の最大の惨禍とされるアウシュビッツとヒロシマ、そしてわが国で唯一戦場となった沖縄。兵士ではない女性たちにも容赦なく悲劇は襲った。私は新聞記者としてその場に立ち、膨大な証言と遺品に向き合ってきた。伝えるべき事実は今も存在する。きっと初めて知ることが多いだろう。しかし、この講義に登場するのはすべて、みなさんと年齢の変わらない女性ばかりだ。身近に感じることができる、と考え「戦争と女性」をキーワードにした。戦争遺跡の保存、証言者からの継承など、新しい試みを織り交ぜる。現代の戦争にも触れる。映像、写真を駆使し、遺品や遺書も数多く登場させる。
到達目標
Class Goal
「戦争はいけない」。それは単なる子供の感想である。大学生ならそこから一歩踏み出さなくてはならない。目を背けていては何も生まれない。向き合うことからなにかが始まりまる。酷い事実や映像も出てくるが、これまでも多くの学生は凝視してきた。ポーランドのアウシュビッツを訪問した学生がいる。広島・長崎、沖縄に行き、授業で学んだ戦争を現地で追体験した学生も多い。このように生まれた関心を「行動」にまで高めることは大事なことである。戦争を考える場は数多くある。「火垂るの墓」もここ西宮が舞台だ。大阪にも神戸にもある。子供たちに問われてもたじろがないぐらいの知識は身につけてもらいたい。この授業を通じて、祖父母の戦争体験を聞くようになった学生たちもいる。父母と自宅に持ち帰った資料をもとに語り合うという人もいる。戦争を遠い世界の出来事と思わないようになること。それを目標にしてもらいたい。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉がある。その意味確かめてみよう。
授業内容
The Content of the Course
戦争は多くの女性や子供たちを犠牲にした。ホロコーストでは150万人もの子供が殺害された。なぜ起きたのか。なにがあったのか。アンネ・フランクら少女たちの叫びを聞いてみたい。アウシュビッツがどうして生まれたのか。そこでなにが行われたのか。15歳前後の少女たちの悲劇を通じて戦争の狂気を考察したい。アンネが生きていれば今年6月で85歳になる。まだ歴史といえる歳月ではない。そんな時代に、600万人ものユダヤ人が虐殺されたことを我々は忘れてはならない。ホロコーストと戦った杉原千畝、コルチャック先生、オスカー・シンドラーたちの勇気も伝えたい。アンネがアウシュビッツから移されドイツの収容所で亡くなった頃、日本の沖縄では高等女学校の生徒たちが看護隊として修羅の戦場を駆け巡っていた。「ひめゆり」だけではない。「白梅」「梯梧」「瑞泉」などの学徒隊員たちが次々と犠牲になった。知られざる悲劇、沖縄県立第二高等女学校「白梅隊」に焦点を当てる。そして、8月、広島で多くの女子学徒が消えた。現在、広島では語り部の将来を見据えたプロジェクトが進んでいる。被爆体験のない人による「伝承者」の育成だ。本学OGが「伝承者」に一人になっている。ゲストとして、OGに「伝える」ことの意味を語ってもらう。「永遠の0」は本や映画で若者たちに戦争の実相を伝えた。映画を通じて多くの学生が向き合った特攻とは。不条理な戦術によって消えていった若者たちが最愛の人々に寄せた遺書を考える。2015年は「戦後70年」の節目である。その前年にあたる今年は改めて戦争を問い直す好機である。 
授業計画
Class Plan
1.アウシュビッツ 「アンネの日記」のアンネ・フランクは一時アウシュビッツに収容されていた。アンネは次に移送されたドイツの収容所で死ぬ。その最期は。アンネの夢は「死んでからもなお生き続けること」であった。
2.アウシュビッツ 「アンネの日記」が語りかけるのは。驚くのは14歳の少女があの時代に女性の「自立」を考えていたことだ。日記がなぜ残ったのか。 
3.アウシュビッツ ポーランドは戦後二年後に法律をつくって強制収容所跡の完全な保存を決めた。膨大な遺品とともに残されている。選別、ガス室、焼却炉。アウシュビッツで行われたことを考える。
4.アウシュビッツ アウシュビッツ博物館でしか見られないドキュメンタリーを通じて世界遺産としてのアウシュビッツの意義を問う。 
5.アウシュビッツ なぜホロコーストは起きたのか。いまだ解明できないプロセス。ユダヤ人迫害の歴史を考える。
6.アウシュビッツ ドキュメンタリー「少女ハンナのかばん」。アウシュビッツで死んだ一人の少女のかばんを追いかけ、遺族まで突き止めた日本人女性の思いは。
7.アウシュビッツ ビザを発給して6000人のユダヤ人を救った外交官杉原千畝やコルチャック先生、コルベ神父、映画にもなったオスカー・シンドラーやデンマーク国民。勇気をもって戦った人々の物語
8.沖縄 「白梅の悲話」 「ひめゆり」だけではない女子学徒看護隊の悲劇。当時15歳。唯一の地上戦となった沖縄で「軍属」として戦死した乙女たち。「1フィート映像でつづる ドキュメント沖縄戦」を見る。
9.沖縄 「白梅の悲話」 学徒隊の戦い。入隊して急ごしらえの看護教育。手術場勤務の苦しみ、最初にした注射。解散命令、動けない兵に青酸カリを渡した少女たち。
10.沖縄  22人の最期を追う。大嶺美枝さんの遺書。娘の遺骨を探す母たち。生き残った人々の苦悩。白梅同窓会会長の追悼の言葉が伝える沖縄の「今」は。
11.ヒロシマ 遺品は語る。「人の影」「黒焦げの弁当箱」「美代ちゃんの下駄」。遺品には物語がある。それを知らなければ、遺品の持ち主だった人の「こころ」は届かない。吉永小百合さんの原爆詩朗読「第二楽章」。 
12.ヒロシマ 被爆したあと脱出した「桜隊」の二人の女優の死 仲みどりと元宝塚のスター女優園井恵子。仲は世界最初の原爆症患者と認定された。
13.ヒロシマ 体験を被爆者から受け継ぎ、新たな視点で原爆を語り継ぐ「伝承者」。広島市のプロジェクトに参加、三年におよぶ研修を受け「伝承者」となる本学OGの小国美弥子さん。「決して被爆者のコピーをするのではありません」という小国さんの思いを聞く。
14.特攻 万世基地から出撃した五人の少年兵。仔犬を抱いた写真は有名だが、その遺族たちは。当時のニュース映画から特攻を考える。妹を思う兄の痛切な遺書も。
15.特攻 愛する女性にあてた特攻隊員の遺書。「智恵子 会いたい 話したい 無性に」。23歳。中央大学卒。婚約者の人生は。
授業方法
Class Method
「わかりやすく」に力点を置く。映像や文学などの記録を活用する。毎週、授業の内容について「コミュニケーションシート」(CS)に記入させて理解度を確認。採点をするとともに、次回授業で詳細に紹介、受講者と共有する。同時に受講者からの疑問、提案を授業に速やかに反映させ、双方向授業、課題発見を目途とする。採点結果と特記事項の連絡は学習支援システムμCAMを活用する。
授業時間外学習
Review and Preview
まず関心を持つこと。これまでに学んだ知識を整理して、新たに構築をしなくてはならない。多くの学生は現代史を学ばず、年表、人名、地名などの基礎的な資料すら理解できていない。自ら調べようとする努力が必要である。そのためには、次回講義の内容を紹介、毎回、事前学習の結果を発表させる。携帯端末を利用しても、チェックできることは数多くある。身近にある戦争。たとえば祖父母と語り合うこと、地域における戦争の痕跡や資料が保管、展示されている施設を見学することなどを奨励する。映画・映像、文学をそれぞれセレクトし、これらに触れることによって時代背景などへの理解を深める。平和学習や修学旅行で訪問した広島・長崎や沖縄への再訪を促して、年齢によって、印象が異なる戦争観などを追体験してもらい、常に「戦争」というキーワードを意識させる。
評価方法
Evaluation Method
・平常点等(100点) 配点内訳:コミュニケーションシート一回5点×15回計75点  積極的参加度25点

教科書
Textbook

参考書
Reference Books

地域との連携
Cooperation with the Community

担当教員への連絡方法
How to make Contact
原則として月曜5限をオフィスアワーとしていますが、相談事があれば遠慮なく兼務している図書館長室にきてください。事前に携帯にメールをください。なお連絡先は以下のとおりです。
kawa5113@mukogawa-u.ac.jp(大学)
caaut900@hcn.zaq.ne.jp(個人)
merutaro2@ezweb.ne.jp(携帯)
090-1226-0866(携帯電話)
受講上の注意
Notices
この授業とほぼ同じ内容が西宮市大学交流センターで「センター科目」として2014年前期金曜日3時限に開講されました。重なって受講しないように。

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