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年度 2015
科目名 犯罪心理学
担当者名 齊藤 文夫
単位 2
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科目目的
Course Objectives
1.犯罪・非行とよばれる反社会的逸脱行動は心理的な要因のみで生じるものではなく、環境的・状況的・社会的な要因や生物学的な負因などが複合して生じることを概説する。
2.心理学が犯罪・非行領域でどのように応用・援用されているかを概説する。
3.警察、司法、矯正保護などの刑事政策に関わる諸機関の役割やそこで働く心理系専門職の実務を知る。
4.精神障害者の犯罪、精神鑑定、裁判員制度、少年司法制度など、関連する諸問題についても概説する。
到達目標
Class Goal
1.犯罪学の諸理論を理解するとともに、理論を批判的に吟味することで合理的・論理的な思考力を身につける。
2.犯罪・非行領域における心理検査の活用や矯正処遇技法の初歩的な実践力を身につける。
3.犯罪・非行にかかわる心理実務者の仕事を知り、将来の職業選択について考える。
4.精神障害と犯罪、少年司法、裁判員制度などのテーマを通して、市民としての社会的責任を自覚するとともに、社会的な問題に対する関心を深め、生涯学習力を身につける。
授業内容
The Content of the Course
 犯罪非行に関連するさまざまな問題を取り上げ、それらを主として心理学的な視点から講義する。講義の内容は大きく分けると、(1) 犯罪とは何か;(2) 犯罪原因論の系譜と展開、犯罪原因の探求;(3) 犯罪者・非行少年の心理査定と矯正処遇;(4) 関連するいくつかのトピックス、などに分かれる。これらのテーマについて、講義のほか、ビデオ教材なども使用して理解を深める。加えて、各自に自由課題レポートを課することで、主体的な学習を期待する。
授業計画
Class Plan
 第1回 はじめに−犯罪とは何か−:法律から見た犯罪の構成要件などを講義する。
 
 第2回 犯罪原因の探求(1)―古典派犯罪学:18世紀後半から19世紀初頭のベッカリーアやベンサムの犯罪観を学ぶ。かれらの思想は古典派犯罪学と呼ばれ、今日の刑法や刑事政策の基礎ともなっている。
 
 第3回 犯罪原因の探求(2)―犯罪人類学:19世紀中葉のイタリアの精神医学者ロンブロ−ゾは、旧来の観念的思弁を否定し、犯罪者に見られる実証(観察)可能な異常性を発見しようと試みた。かれの生来性犯罪人説は、今日の実証的犯罪学の嚆矢となった。
 
 第4回 犯罪原因の探求(3)―犯罪生物学と犯罪精神医学:犯罪者の素質や遺伝を重視する犯罪学として、クレッチマ−の生物学的精神病理学、シュナイダーの精神病質説、ヨハネス・ランゲの犯罪遺伝説、ジェイコブスの性染色体異常説、最近における脳の発達障害説などを取り上げる。

 第5回 犯罪原因の探求(4)―力動的犯罪心理学:精神分析学及びそこから発展した力動的心理学は、今日における犯罪心理学の基礎ともいえるものである。アイヒホルンやヒーリーの所説などを取り上げる。

 第6回 犯罪原因の探求(5)―行動主義的犯罪心理学:アイゼンクやバンデューラは、行動主義的学習論の立場から反社会的行動を理解しようとした。この学派は、犯罪や非行は経験を通して学習されるものであるとする。

 第7回 犯罪原因の探求(6)―犯罪社会学:20世紀中葉以降、主としてアメリカにおいて発展した。アノミー論、緊張理論、統制理論のほか、分化的接触論、サブカルチャー論、ラベリング論などを取り上げる。

 第8回 犯罪者・非行少年の心理査定、その1:事例を取り上げ、実習的な課題を通して学ぶ。

 第9回 犯罪者・非行少年の心理査定、その2:事例を取り上げ、実習的な課題を通して学ぶ。
 
 第10回 矯正処遇の実際、その1:ビデオ教材や実習的な課題を用いて、矯正処遇を学ぶ。
 
 第11回 矯正処遇の実際、その2:ビデオ教材や実習的な課題を用いて、矯正処遇を学ぶ。

 第12回 関連するトピックス(1):警察・司法・矯正における心理実務者の役割と心理学の応用・援用。

 第13回 関連するトピックス(2):少年非行と少年法

 第14回 関連するトピックス(3):精神障害と犯罪
 
 第15回 関連するトピックス(4):裁判員制度

 定期試験
 

   (注)上記は予定である。学生の理解度や興味関心に応じて、ある程度の変更がありえる。
授業方法
Class Method
(1)講義が中心になる。
(2)受講生の理解を深めるため、視聴覚教材(ビデオ、録音テープなど)も適宜に活用する。
(3)犯罪者や非行少年の人格査定については、いくつかの具体的な事例を取り上げて、実践的に理解する。こうしたテーマを取り上げるときは、双方向的な授業方法を用いる。
授業時間外学習
Review and Preview
 (1)原則として毎回、授業内容の要点をプリントにして配布する。それにより各自で予習と復習をする。
 (2)本学附属図書館にて犯罪や少年非行に関する文献を各自で渉猟する。興味関心あるテーマに関する文献を借り出して、自己学習を深めること。自己学習の成果として、最終授業日にレポートの提出を求める。
 (3)学外の文献を幅広く渉猟するには、CiNii、国立国会図書館雑誌記事索引、PsycARTICLES、PsycINFOなどが役立つ。幅広く文献を渉猟して自己学習することを勧める。自己学習の成果として、最終授業日にレポートの提出を求める。なお、犯罪非行関係の文献渉猟には、矯正図書館の文献検索エンジンも便利である。
 (4)学内のパソコンをとおして、朝日新聞(聞蔵)、読売新聞(ヨミダス文書館)、毎日新聞(毎日Newsパック)に掲載された犯罪報道を収集し、犯人の人格特性や犯行の心理を推理・考察するのも勉強になる。特定の事件に関する新聞記事を収集・分析・考察して、レポートにまとめて提出してもよい。ただし、マスコミ報道には偏りやゆがみがあるかもしれず、また事実がすべて報道されるわけでもないことに留意する。
 (6)週刊誌や月刊誌には、特定の事件に関する掘り下げた調査報道が掲載されることがあり、事件を理解する手がかりになることがある。ただし、興味本位の安易な記事が掲載されていることもある。週刊誌などの雑誌記事を検索するのには、大宅壮一文庫雑誌記事索引が便利である。

 
評価方法
Evaluation Method
・試験期間中に試験を実施(85点)
・レポート[作品含む](15点)

教科書
Textbook
原則として、毎回、プリントを配布する。
参考書
Reference Books
福島 章/犯罪心理学入門/中央公論社
笠井達夫ほか/犯罪に挑む心理学/北大路書房
荻原恵三/現代の少年非行/大日本図書
地域との連携
Cooperation with the Community
該当なし。
担当教員への連絡方法
How to make Contact
(1)オフィスアワー(火曜日5時限)を利用して研究室(C-1109)を訪問する。授業内容に関する質疑のほか、犯罪や非行にかかわる就職(警察官、刑務官、法務教官、保護観察官、入国警備官など)を考えている学生には、進路の助言もする。
(2)電子メールのアドレスは「fsaito@mukogawa-u.ac.jp」である。送信メールには所属、学年、氏名を添える。
受講上の注意
Notices
授業中の私語や居眠り、飲食や化粧は慎む。ただし、こうした行為を完全に取り締まることはむづかしいかもしれないので、授業に集中したい学生はなるべく前の列に着席することを勧める。

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