素敵な語り手と、いい聞き手が向き合えば、言葉は自然に深くなってゆく。10月27日、武庫川女子大学で開かれた「第5回:作家と語る」のゲストは森絵都さん。学生6人とOG1人との1時間半は500人の聴衆を魅了した。学生らの問いかけは愛読者であるだけに正しいポイントに踏み込んでゆく。応える森さんは一つひとつ、真正面から丁寧に、紡ぐように言葉を発していく。この空間には間違いなく、本物の言葉が飛び交っている。それも選りすぐった言葉には力がある。いい空気だなと思う。読者とのキャッチボールとはと尋ねられると「意識してボールを投げようとすれば、ミットに収まりやすい球になってしまう。それでは小説は面白くなりません」と。でも一対一。読者の一人一人が自由に受け止めてくれればいいのだ。そのために、書き続けたいという。作家の心に会場が包まれてゆく。
学生のために図書館が始めた企画だが、一般の人たちの数の方が多い。これも嬉しい。