お知らせ

「ワルシャワの本屋さん」(2019年12月9日号)

 

 図書館と本が好きな演奏学科4回生、今井桃代さんと英語文化学科3回生、中安瞳さんの2人が今、ワルシャワ大学に留学している。ジャーナリズム学部に属し、すべての授業を英語で受けている。届くLINEはいつも笑顔。世界の若者と語り、歌い、踊り、食べ歩いている。少し時間があればブダペストへ、ベルリンへと足を伸ばし、戦争の跡を訪ねている。まだ2ヵ月余りだが、その表情から確実に成長していることが伝わる。第一便が中安さんから届いた。「ポーランドで感じる若者と本」というタイトルである。

 「ポーランドに来て驚いたことは、この国の人々はよく本を読むということである。私の感覚ではあるが、日本よりも本を読んでいる人を見る確率は明らかに高い。メトロやトラム、バスに乗っているときに、かなり分厚い本を読んでいる人によく出会う。日本にいた頃、大学までの約2時間の通学時間の中でさえも、こういう光景は、ほとんど見かけなかった。読んでいたとしても、薄い本だ。さらに驚くことは、ポーランドでは若者の方が本を読むということだ。

 ポーランドのテレビ放送によると、本を1年間に一度も読まなかった60歳以上の割合は、15〜24歳の約1.48倍であるそうだ。実際に友人たちはよく読む。ワルシャワから長距離列車で数時間の街へ行くときに、当たり前のように鞄から本を取り出して、眠そうにすることもなくずっと読んでいた。日本では若者の本離れが進んでいるため、とても印象的だった。ただポーランドでも読書量の減少は進んでいるようで、新聞などで読書量を調べると、日本と同じく減少を危惧するような記事が多い。それでもポーランド人にとって本を読むということが、日本人よりもより身近なものであることには違いない。

 もう一つポーランドに来てびっくりしたことがある。紀伊國屋書店やジュンク堂書店のような全ジャンルを大量に備えた大型書店がないということだ。街でよく見かける「Empik」というポーランドで最も大きいといわれる書店でさえも、どのジャンルがどこにあるか見渡せば大体分かってしまう規模で、もちろん冊数もかなり少ない。私はポーランド語の本を探しながら、あまりの本の少なさが不思議だった。知り合いに聞いてみると、ネットで購入する人が多いということと、ジャンルごとに本屋があるということらしい。確かに言われてみると、街を歩けば本屋に必ず出合う。ワルシャワ大学の正門から半径60m以内には6店もある。日本では街にある小さな本屋さんは衰退の一途をたどっている。これならその店に行かないと目指す本がないのだから必ず生き残る。語学の本屋に入ってみると、目指す本は確かにあった。地下にも本が並んでいて、居心地がいい。ポーランドに来てからの疑問がやっと解決した。

 このようによく本を読む人々に囲まれながら、町のあちこちに本屋がたくさんある国にいると、私も読みたくなる。しかし残念ながらポーランド語のレベルがまだA1(初心者)にはそれは叶わない。本屋で見かけた面白そうな本を手に旅行したり通学したりするためにポーランド語を上達させることが、目標になった。」

          
             ワルシャワの街を歩けばよく出合う本屋さん