お知らせ

「おにぎり送別会」(2020年3月6日号)

 

 ワルシャワ大学に留学中の音楽学部4回生、今井桃代さんから「ワルシャワ便り」が届いた。今回は中国からの留学生とのお別れ会と、その場で作った「おにぎり」の物語。かけがえのない日々を送ることができる留学。その意義を寄せてくれた。

 ジャーナリズム学部で学んで良かったと実感している。同じ目標を持った他の国の学生に出会えるからである。同じ学部の友人たちとは自然と会話が弾む。その国の社会が抱える問題についても話すことができる。その貴重な友人の一人が中国出身だ。彼はすでに帰国したが、よく本を読み、ヨーロッパ各地を歩き回る学生だった。私は今、中国語を勉強している。彼も日本に強い関心があったから互いの国についての話題は大いに盛り上がった。縦書きの日本の新聞と横書きの中国の新聞を見比べ、記事の内容を推測し合う。違いを知ることは面白い。日本にも多くの中国人の知り合いがいるが、メディアや
SNS事情を聞くことはなかった。
 中国での情報や言論の統制はよく見聞きするが、彼は正しい情報を世界に伝えるためにジャーナリズムを学んでいる。私もまた、世界最大の人口を持つ中国の情報社会をもっと知りたいと思うようになった。

 日本からの留学生の留学期間は1年間が多いが、他の国から来る学生の多くは半年で帰る。中国へ戻る仲間たちのために送別会を開いた。メニューは親子丼、ヨーロッパ風の魚料理、茄子の肉味噌炒め、みそ汁。食材は近くのスーパーで調達する。グラムで買えるので無駄がない。大学の寮にはフロアごとに共有のキッチンがある。テーブルを6人で囲み食事が始まる。まるで家族のようだ。
 多めに炊いたので、ご飯が残った。日本から持ってきた白米だ。いつものようにおにぎりを握り始める。まわりの5人がざわつき、視線は一気に私の手元に集まる。日本のラップフィルムが活躍する。彼らにはおにぎりを作る習慣がない。「日本のアニメでおにぎりを見たことはあったが、本物のおにぎりの誕生を目の前にしたのは初めて」、と興奮していた。おにぎり1つでこれほど喜んでくれるのかと嬉しくなった。様々な情報をインターネットから得られる時代だが、実際には隣の国の人たちがどんな生活をしているのか私たちはよく知らない。1学期間、国籍の異なる友人と同じ国で生活することは、とても大切な機会である。

 先日、日本の新聞のデジタル版で、武漢への支援に対して中国のSNS上で感謝の声が多くあがっているという記事を読んだ。異なる国の人々の心を繋ぐ記事だと感じた。ポーランドで他国、しかもアジアのことを知るようになるとは思わなかった。
 まもなく始まる夏学期。新たな出会いと語らいが生まれる。

 
                     送別会の様子
  
     『おにぎりレシピ101』は中央3階学習図書
(396.3||YA)と「MWU電子図書館」にある。
  『おにぎり:47都道府県のおにぎりと、米文化のはなし。』は中央3階学習図書
(596.3||KA)にある。
『セブン‐イレブンのおにぎりは、なぜ、1日400万個売れるのか』は中央4階学習図書
(673.868||KU)にある。