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黒岩将人, 岡崎甚幸, 吉岡陽介:

視野制限下と通常視野での注視行動の比較

:廊下および階段の歩行時において,

人間工学, Vol.37, No.1, pp.29〜40, 2001.2

生活空間を歩行中の周辺視の役割を,通常視野実験と制限視野実験の比較によって解明する.通常視野実験ではアイカメラを装着して廊下および階段を歩行し,制限視野実験では著者らが新しく開発した周辺視野を制限するマスクを装着して同じ場所を歩行した.その結果,通常視野下に対して制限視野下では,1)進行方向の床を注視しながら歩行する傾向がある,2)角を曲がる時には大回りをする,足や手がアンダーリーチングになる,3)階段下り歩行開始時に極端に歩行速度が落ちる,4)階段上り歩行時に足を擦らせて歩く等の特徴的な行動が見られた.以上から歩行時の周辺視が,身体と歩行環境との間の正確な距離や位置関係の把握を助ける役割を果たすことが明らかになった.


黒岩将人, 鈴木利友, 増田博雄, 柳沢和彦, 岡崎甚幸:

廊下及び階段における制限視野歩行実験による行動特性 

アイカメラを用いた通常視野歩行実験との比較を通して

平成11年度日本人間工学会関西支部大会講演論文集, pp.73〜78, 1999.12

アイカメラを装着して廊下および階段を歩く通常視野実験と、周辺視野を制限するマスクを装着して同じ場所を歩く制限視野実験の結果の比較を行った。その結果、制限視野下では、通常視野下と比較して、階段下り歩行時の所要時間が最も増加すること、視線が下向きになり床と壁の境界付近を捉えるようになること、曲がり角で大回りをすること、アンダーリーチングになること、階段上り歩行時に足を擦らせて歩くことなどが分かった。


一色 高志,岡崎甚幸,黒岩 将人, 吉岡 陽介:

歩行行動特性を調べるための実験方法及び記述法の開発

−制限視野下での行動特性に関する研究 その1−, 

日本建築学会大会学術講演梗概集(東北), E-1, pp.1071〜1072, 2000.9

アイカメラを装着して廊下および階段を歩く通常視野実験と、新しく開発した制限視野マスクを装着して同じ場所を歩く制限視野実験を行った。制限視野マスクは被験者の両眼の前に開口があり、前方の風景を小型カメラによって撮影する。このマスクによって、被験者の視野を制限した状態での歩行実験が可能になった。また、通常視野実験における注視点の移動と、制限視野実験における視野の移動を記述し、比較する方法も開発した。


吉岡 陽介,岡崎甚幸,黒岩 将人, 一色 高志:

廊下及び階段歩行時における行動特性に関する研究

−制限視野下での行動特性に関する研究 その2−, 

日本建築学会大会学術講演梗概集(東北), E-1, pp.1073〜1074, 2000.9

通常視野実験と制限視野実験の結果の比較を行った。制限視野下では、通常視野下と比較して、階段下り歩行時の平均歩行速度が遅くなること、壁と床の境界付近を多く注視するようになること、足や手がアンダーリーチングになること、角を曲がる時大回りすることなどが明らかになった。以上から周辺視には、身体と環境との間の正確な距離や位置関係の把握を助ける役割があることが分かった。



吉岡陽介, 岡崎甚幸:

廊下および階段歩行時に活用されている視野範囲,

人間工学, Vol.38, No.2 ,pp.104〜111, 2002.4

廊下や階段など日常の生活空間を歩行するとき,歩行者は,歩行場面ごとに異なる範囲の視野を選択的に活用していると予想される.このことを定量的に検証するため,制限視野法を用いた歩行実験を行った.結果は以下のとおりである.(1)歩行時における選択的な活用範囲は,階段や曲がり角などの歩行局面ごとに固有な方向への「広がり」を持っていることが示唆された.また,歩行行動全般を通してみれば,選択的な活用範囲は常に耳側方向への「広がり」を持つ傾向にあることが示唆された.(2)「階段下りはじめの段」であれば「段」よりも身体近傍の環境情報と,「曲がり角を構成する壁の縁」であれば「縁」よりも奥の環境情報と,といったように,複数の環境情報を一括して捉えることで,より安定した歩行が可能になっていると推察された.


吉岡 陽介, 岡崎甚幸:

廊下および階段歩行時における有効視野,

電子情報通信学会技術研究報告,信学技報,Vol.102,No.44, pp.19〜24,2002.5

日常の生活空間を歩行するとき,視野内において選択的に活用されている範囲は,歩行者が直面している歩行局面ごとに固有な方向への「広がり」を持っていると予想される.この選択的な活用範囲の「広がり」を定量的に検証するため,制限視野法を用いた歩行実験を行った.結果,歩行時における選択的な活用範囲は,階段や曲がり角などの歩行局面ごとに固有な方向への「広がり」を持っていることが示唆された.また,歩行行動全般を通してみれば,選択的な活用範囲は常に耳側方向への「広がり」を持つ傾向にあることが示唆された.


一色高志, 吉岡 陽介, 岡崎甚幸:

視覚的注意の異方性を調べるための制限視野実験方法の開発

−廊下および階段歩行時における視覚的注意の広がりに関する研究 その1−

日本建築学会大会学術講演梗概集(関東) E-1, pp.739〜740, 2001.9

制限視野マスクを開発して歩行実験を行い、歩行時における周辺視の役割の解明を試みてきた。しかし周辺視野の範囲は非常に広く、その全域が常に一様な役割を持っているわけではない。人間が日常の生活空間を歩行する際、環境に対して向けられる視覚的注意の広がりは上下左右に異方性をもっていると推察される。そこで制限視野マスクを改良し、歩行局面ごとの視覚的注意の異方性を特定するための実験方法を確立した。


吉岡 陽介, 一色高志, 岡崎甚幸:

各歩行場面における視覚的注意の異方性

−廊下および階段歩行時における視覚的注意の広がりに関する研究 その2−

日本建築学会大会学術講演梗概集(関東) E-1, pp.741〜742, 2001.9

日常の生活空間を歩行する時に、選択的に活用されている視野範囲を調べるため、制限視野法を用いた歩行実験を行った。その結果、歩行時における視野範囲は、階段や曲がり角など、歩行局面ごとに特定の方向への異方性を持ち、また歩行全般を通して耳側方向への異方性をもつことが分かった。また複数の環境情報を同じ活用範囲で捉えることによって、より安定した歩行が可能になっていることも推察された。



吉岡陽介, 一色高志, 岡崎甚幸:

迷路内探索歩行において周辺視が果たす役割,

人間工学, Vol.39, No.1, pp.1〜8, 2003.2

本研究では迷路内探索歩行時における周辺視の役割を解明するため,制限視野法を用いた歩行実験を実験用迷路内で行った.以下にその成果をまとめる.(1)はじめての経路を探索しながら歩行する時には,身体近傍の空間や複雑な経路空間を効率よく把握するために周辺視を有効に活用する必要がある.しかし,いったん経路を学習してしまえば,経路空間の特徴的な部分を周辺視を活用しなくとも見つけ出せるようになり,そのことで正確に目的地まで到達できるようになる.(2)通常の視野状態では,「壁と床の境界」や「身体側方の壁面」など経路歩行に必要な環境情報を周辺視で捉えることで,余裕のある注視活動を行うことができる.また,「壁と床の境界」に関しては,経路学習前には中心視で,学習後には周辺視でそれを捉える傾向がある.


吉岡 陽介, 一色高志, 岡崎甚幸:

探索歩行時における周辺視の役割を調べるための実験方法の開発

−制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その1−

日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸) E-1, pp.687〜688, 2002.8

探索歩行およびそこでの経路学習における周辺視の果たす役割の解明を、制限視野法によって調べた。実験は、アイカメラを装着した被験者が実験用迷路の中でスタートからゴールまで3回歩く通常視野実験と、新しく開発した制限視野マスクを装着した別の被験者が同じ経路を4回歩く制限視野実験を行った。制限視野マスクは被験者の両眼の前に開口があり、前方の風景を小型カメラによって撮影する。


一色高志, 吉岡 陽介, 岡崎甚幸:

制限視野下と通常視野下での探索歩行時における行動特性の比較 

−制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験 その2−

日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸) E-1, pp.689〜690, 2002.8

初めての経路で空間を効率よく把握するためには周辺視を有効に活用する必要がある。しかし経路を学習すると、周辺視を活用しなくとも空間の特徴的な部分を見つけ出し、正確に目的地まで到達できる。通常の視野状態では「壁と床の境界」や「身体側方の壁面」など歩行に必要な環境情報を周辺視で捉え、余裕のある注視行動を行うことができる。また「壁と床の境界」は、経路学習前には中心視で、学習後には周辺視で捉える傾向がある。



吉岡陽介, 一色高志, 岡崎甚幸:

探索歩行時にみられる特徴的行動と中心視および周辺視,

人間工学, Vol.39, No.1, pp.9〜15, 2003.2

本研究では,探索歩行時に見られる特徴的な行動特性と中心視および周辺視との関わりを解明するため、制限視野法を用いた迷路内探索歩行実験を行った.今回使用した制限視野マスクは中心視野や周辺視野の一部など任意の視野範囲を正確に制限することのできるものである.実験の成果を以下にまとめる.(1)中心視が機能していれば「行き止まりの奥へ侵入」することなく歩行でき,かつ歩行中に「進行方向側方に広がる分岐路に気づく」ことができる.(2)周辺視が機能していれば.「経路を大幅に逆行」することなく目的地に到達することができる.(3)中心視と周辺視が同時に機能していれば,「立ち止まる」ことなく,かつ「壁面に触れる」ことなく歩行することができる.