「子どものための哲学を知っていますか。」
桝形公也
子どものための哲学、英語では Philosophy for Children、略してP4C、はアメリカの哲学者、マシュー・リップマンが開発した教育方法です。P4Cの教育効果が注目され、現在は様々な国で小学校から高校までP4Cが実践されています。
P4Cでは、子どもたちが、車座になり、「正義とは何か」、「自由とは何か」というテーマについて議論したり、ある物語や絵本を読んで、そのテーマについて議論します。教師はあくまでもファシリテーターの役に徹し、議論が発展していくのを補助し、時には例題のようなものを出して、議論を推進します。
議論するときには、ボールを使います。これはコミュニティボールとも呼ばれます。そして、このコミュニティボールを持った子どもだけが発言を許され、他の子どもは発言者に耳を傾けます。このボールには子どもたちの発言を促す不思議な力があります。
私は、先日、オーストラリアの小学校での実践を調査するために、シドニーとメルボルンに行ってきました。そして、P4Cの授業を受けた4人の小学校6年生にインタヴューをしました。彼らはP4Cを楽しみ、何よりも他の人のいろいろな意見を聞いて、自分の考えを一層良くすることができるのがうれしいし、国語などの読解力も深まり、引っ込み思案だった自分が、他の人に自分の意見を聞いてもらえるのが楽しいと語ってくれました。何よりも自尊感情や他者への尊敬を培っている様子がはっきりと見て取れました。
何とか日本でもこのP4Cが導入されればと願っています。