メンバー紹介

黒田 智子
KURODA Tomoko
研究・専門領域
  • 遠藤新・F.L.ライトをはじめとする近代の建築論
  • 丹下健三・P.ゲデスをはじめとする近代の都市論
  • 能楽・和歌をはじめとする日本の伝統芸術についての造形論
  • 世界観・宗教観を視点とする生活文化論

所属

武庫川女子大学 生活美学研究所
武庫川女子大学 生活環境学部 生活環境学科
武庫川女子大学 短期大学部 生活造形学科
日本建築学会
日本インテリア学会
日本都市計画学会
日本フェノロサ学会
International Planning History and Society(IPHS)

経歴・活動実績

建築家・遠藤新(1889-1951)は、自信作であるはずの甲子園ホテル(1930,現・武庫川女子大学甲子園会館)の設計意図についてあまり言葉を残していません。一方で、帝国ホテルを設計した近代建築の巨匠・F.L.ライトの愛弟子として知られ、甲子園ホテルもライト式建築として著名です。そこで、ライトの有機的建築の考え方に倣い、建築と周辺環境との調和、内側から外側に向かう(from within outward)建築表現を視点に、2016年度より甲子プロジェクト研究会を主宰、各分野の研究者に講演いただき、同時に甲子園ホテルの建築表現と照合してまいりました。近年は、遠藤が、建築家を志す若き日にトマス・カーライル(1795-1881)の『衣裳哲学』(1934)に深く影響を受け、実は、師・ライトも同様であったという事実に注目しています。 甲子プロジェクト研究会で実施した講演会(テーマ、講師、掲載誌)は、以下の通りです。

2016年年度・西宮神社のえびすさまと大国さま―「甲子」に関連して、吉井 良昭、甲子プロジェクト・旧甲子園ホテルの意匠について―打出の小槌と大黒さま―、西尾 嘉美、甲子プロジェクト報告集Vol.1 P13~24

2017年度・川から街へ―「甲子園」をめぐる治水と開発、西尾 嘉美、甲子プロジェクト報告集Vol.2P1~10・祖父・林愛作のこと、林 裕美子、甲子プロジェクト報告集Vol.2 P11~30

2018年度・水の流れがもたらすものー武庫の川と茅渟の海-、西尾嘉美、生活美学研究所紀要第29号P135~142・フェノロサをめぐる-林愛作と柳田暹暎、山口 靜一、生活美学研究所紀要第29号P143~154

2019年度・比叡山の神と仏―その習合思想と利他の教え、武 覚超、生活美学研究所紀要第30号P189~208・林愛作がいた山中商会-世界を舞台にしたロマンある挑戦の歴史-、山中讓、生活美学研究所紀要第30号P209~216

2020年度・教会建築の設計から学ぶ環境人間学的建築 、酒井 利行、生活美学研究所紀要第31号掲載予定(ページ未定)・トマス・カーライルの「衣装の哲学」--19世紀英国におけるダンディズムの流行、玉井暲、生活美学研究所紀要第31号掲載予定(ページ未定)

教育研究実績

https://www.mukogawa-u.ac.jp/gakuin/gyoseki/pdf/id_15189.pdf

ひとこと

甲子プロジェクトを開始したころ、遠藤新の卒業論文(1914、東京大学所蔵))に出会い、手書き英文、一部独文を活字化、翻訳することになりました。とても時間がかかりましたが、そこには、トマス・カーライルの影響が読み取れました。それは、遠藤が、東京帝国大学建築学科で学ぶ以前、仙台第二高等学校において、詩人で英語教授だった土井晩翠を通じての影響を土台とすると考えられます。それゆえ、遠藤は、同じカーライルに根を持つライトをより深く理解し、愛弟子たり得たのではないかと思います。若いころに良書に出会い、本気で取り組むことがどれだけ大切か、同時に、教育の重要性を改めて感じています。

著書、論文、その他の活動

論文:
  • 甲子園ホテルの建築表現を、初めて「利他」というキーワードにより読み解く・甲子園ホテルの企画・設計理念の背景-「利他」と「利己」をめぐる試論、『甲子プロジェクト』第一号、pp.67-99
  • 遠藤新と同様甲子園開発地のためのホテルを計画した大屋霊城案と比較することにより、遠藤の設計理念に地下の湧水・世界平和・信仰との関連など独自性を確認:・甲子園ホテルの宴会場における空間構成と装飾の関係―天井周辺の形状と打出の小槌をモチーフとした装飾に着目してー、『甲子プロジェクト』第二号、pp.61-114
  • 遠藤新とF.L.ライトがそれぞれトマス・カーライルの『衣裳哲学』に影響を受けた事実を論証:フランク・ロイド・ライトの「建築のために」におけるトマス・カーライルの『衣装哲学』の影響、日本建築学会大会梗概集、(ページ未定)
  • 遠藤新の卒業論文「シティホテル設計の解説」における三つの理念、日本建築学会近畿支部研究報告集、(ページ未定)
    その他、地域環境と利他の視点から建築装飾と空間の関係に関する論文を継続して発表
  • 甲子園ホテル大宴会場における装飾の特質-仏教寺院における天蓋との類似に着目して、日本インテリア学会大会第31回大会梗概集、2019, pp.89, 90
  • 甲子園ホテルの宴会場における空間構成と装飾の関係 その2―前室から庭へとつながる豊穣の水の流れの表現―、日本インテリア学会大会第30回大会梗概集、2018, pp.
  • A Comparative Study on the Tow City Images for the Resort Hotel Proposed by Oya
    Reijo and by Arata Endo - Focused on Koshien as Hanshin Electric Railway’s
    development area in 1920s, IPHS, 2018.7.17
その他の活動:

2021年度~ 日本建築学会近畿支部建築論部会主査
2020年度~ 大阪市立大学工学部建築学科教授併任(クロスアポイントメント制度による)
2019年度~ 科学研究費「甲子園―聖地の生成と象徴性再生産プロセスに対する住民評価の研究」研究分担者
2019年度 兵庫県建築士会 地域貢献活動助成「線状開発地・甲子園の生活道路―歩行者から見た自然と歴史的景観の調査」
2018~2020年度 日本インテリア学会期限付研究会「甲子園ホテルと帝国ホテルの比較」
2013年度~ 武庫川女子大学生活環境学科 教育・研究誌『生活環境学研究』編集事務局代表