秋季シンポジウム

第33回シンポジウム『野球聖地「甲子園」の景観と興趣』を開催いたしました

2024/01/20

第33回シンポジウム『野球聖地「甲子園」の景観と興趣』*を開催いたしました。

阪神甲子園球場は今年竣工100周年を迎えます。関東大震災の翌年、六十干支に因み、再生と復興の願いを込め、甲子園と命名されました。この球場を中心として広がる甲子園地域の景観には様々な要素があり、地域の資源の総和と住民の共創の空間です。本シンポジウムでは、美学や身体論、建築論、景観とまちづくりに携わる研究者によるディスカッションをつうじて、甲子園というシンボルのダイナミズムについて考えました。

*科学研究費(19K12597 基盤研究(C))「聖地研究 甲子園―聖地の生成と象徴性再生産プロセスに対する住民評価の研究」の研究課題の集大成として研究成果の地域還元のためシンポジウムを実施する。

 

【聴講方法】

オンライン会議システムzoomを用いたウェビナーおよび会場対面のハイブリット形式

 

【開催情報】

日 時:2024年1月20日(土) 13:30~17:15(受付開始13:00)

会 場:武庫川女子大学 甲子園会館 西ホール

対面での定員:100名

聴講無料・事前申込制

 

ゲスト講師

清水諭(筑波大学体育系教授)

1991年3月筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了(教育学博士)。現在、筑波大学体育系教授。専門は、スポーツ社会学および身体文化論。著書に『甲子園野球のアルケオロジー:スポーツの「物語」・メディア・身体文化』(新評論、1998)、編著に『オリンピック・スタディーズ:複数の経験・複数の政治』(せりか書房、2004)、訳書に『身体文化のイマジネーション:デンマークにおける「身体の知」』(新評論、1997)がある。

 

報告

黒田智子(生活美学研究所研究員・本学生活環境学部教授)

三宅正弘(生活美学研究所研究員・本学生活環境学部教授)

森田雅子(生活美学研究所所長・本学生活環境学部教授)

 

ピアノ演奏

奈良田朋子(本学音楽学部教授)

京都市立芸術大学音楽学部を首席卒業後、渡仏しパリ国立高等音楽院第3課程高等研究科、パリ・スコラカントルム、マルセイユ音楽院マスタークラス修了。マリア・カナルス国際コンクールでメダル、第10回ラフマニノフ国際ピアノコンクールにて第2位、第4回マヴィ・マルコツ国際ピアノコンクールにて第2位、第4回リスト国際ピアノコンクールにて第3位など多数入賞。平成9年度滋賀県文化奨励賞、2003年平和堂財団芸術奨励賞受賞。

 

総合司会

松本佳久子(生活美学研究所研究員・本学音楽学部教授)

 

プログラム

13:30      開会挨拶:森田雅子

13:45      基調講演:清水諭「甲子園野球の物語と現在」

1915(大正4)年に豊中球場で開始された全国中等学校優勝野球大会は、その後甲子園に場所を移し、全国高校野球選手権大会として歴史を重ねてきた。この大会は、NHKのテレビ中継ほか、朝日新聞やテレビ朝日などマスメディアと日本高校野球連盟によって、「純真で、男らしく、すべてに正しく、模範的な青少年がスポーツマンシップとフェアプレイの精神で地方の代表として、溌剌たる妙技をみせる甲子園野球」という物語を形成し続けている。この物語の変容と行方について考える。

14:35      報告1:黒田智子「甲子園ホテルにみる聖地の潜在性:近代と交差する土地の記憶と建築表現」

武庫川河畔の松林にたつ迎賓館・甲子園ホテルは、昭和5(1930)年の完成である。格調高い建築装飾による豊かな佇まいが、阪神間モダニズムを現在に伝える。ホテルが立地する地域は、中世から武庫川の氾濫と旱魃による水難の歴史があり、南面する大阪湾は渦の難所で知られた。近代の新技術は、廃川と治水、地下水の汲上げ、航海術の進歩など、人々の暮らしに有史以来の安全・安心をもたらす。一方、謡に詠まれた白砂青松の伝統的景観は大規模宅地開発により劇的に変化して今日に至る。近代化の一端を担った甲子園ホテルには、かつての土地の記憶を自然への感謝と共に刻み、未来への希望と世界平和に結ぶ稀有な建築表現を読み解くことができる。

15:00      報告2:三宅正弘「西宮七園の興隆 阪神間モダニズムに甲子園ホテルが果たした役割」

甲子園が誕生する前夜、傍近の香櫨園、苦楽園、甲陽園と連なる園の興隆が、甲子園へと届けられた。その園の作興は七つにも及び、今、西宮七園と呼ばれるに至る。その形成期すなわち阪神間モダニズムとは何か、そしてこの甲子園に創業された甲子園ホテルの意味を、『甲子園ホテル物語 西の帝国ホテルとフランク・ロイド・ライト』の著者・三宅正弘が、これまで本学・生活美学研究所が果たしてきた役割とともに、メッセージをおくる。

15:30      特別演奏:奈良田朋子「阪神間モダニズムの作曲家 大澤壽人」

『小デッサン集( Sept.1934)』 

第1曲 Allegro moderato
第2曲    Andantino moderato 
第5曲    Allegro moderato 

15:40      報告3:森田雅子「記憶の地・感興の時・景観の共創:甲子園―聖地の生成と象徴性再生産プロセスに対する住民評価の研究」

甲子園地域での聖地生成と象徴性再生産プロセス、つまり若人の聖戦というナラティブに対して地域住民評価、特に景観評価はどう関っているか、解明をめざし、2020年1月~2021年2月アンケートを実施した。その結果や記述を地域住民の身体感覚・生活感の言語化、景観を地域住民のアイデンティティの一部と捉え、分析した。地域のご協力で実施した調査の成果を皆様と共有し、少しでも貢献できれば幸いである。

16:15      全体討論

17:00      閉会挨拶:横川公子(附属総合ミュージアム館長)

 

お問い合わせ先

武庫川女子大学生活美学研究所

TEL: 0798-67-1291(受付時間:祝日、冬季休業12/22-1/8を除く月~金 10:00-16:00)

E-Mail: seibiken@mukogawa-u.ac.jp