テキスタイルアドバイザー(略記:TA、正式な資格名称:衣料管理士)


TA資格とは

衣料やインテリアに使われる繊維製品が、1回洗濯しただけで色落ちしてしまったり、縮んで使えなくなったりしたら困ります。また、単に品質や性能がよくても、デザインが悪かったり流行遅れであれば、商品として失格です。TAは、各種の繊維製品の品質の管理と、合理的な消費の指導を行うことのできる人に与えられる資格です。衣料品の素材の特性やメンテナンスの方法など、衣料の品質にかかわるあらゆることに精通した知識を持ち、品質を的確に判断し、企画・生産・流通・販売・消費の様々な場面で貢献できるような素養を学びます。そのカバー範囲は単に衣料だけではなく、カーテン・カーペットといったインテリアや自動車の内装などの繊維製品にまでひろがっています。
薬剤師や栄養士は、法律に基づく資格であり、資格の名称が職業の名称にもなっていますが、TAの場合はそれらとは違い、「衣料管理士」という職業があるわけではありません。その意味からもTAの役割は限定されているわけではなく、TA養成課程で学ぶことは幅広く応用がききます。また、1回の試験で認定される検定や資格とは違って、大学在学を通して深く広く、体系的に学んで得られる資格なので、確実な実力を保証した資格ということができます。
繊維製品を「作る・売る・買う・使う」という様々な立場に立った基礎知識と技能をもったスペシャリストになることを目指し、物理や化学を基礎とした実験を含む理系の科目から、消費科学など社会科学系の科目まで幅広く学びます。工学部や繊維学部の理系の卒業者や、経済学部や商学部の卒業者と違って、女性の感性を活かせる理系から文系までを学んだ生活者の視点にたった人材の養成をめざしています。

テキスタイルアドバイザーという言葉、辞書を引くと、テキスタイルは織物、アドバイザーは助言者と出てきます。ただし、テキスタイルアドバイザーで用いられているtextiles(複数形を使用)とは、衣料もインテリア製品も含めた繊維製品全般を指す言葉ですので、「衣料をはじめとする繊維製品に関して助言を与えることのできるような専門知識を身につけた人」、ということになるでしょうか。

TAの必要性

繊維・ファッション産業は、海外への依存度が高くなってはいますが、衣食住の一翼をになっており、国内の総労働人口の10%が働いている産業となっています。衣料品がこれからも私たちの日常生活を支える必需品であることにはかわりがなく、海外生産が増えるならなおさら、今以上に品質のよい高品位の商品を見抜く目を持つ人が、人材として要求されています。繊維製品にかかわる企画・生産から流通・販売にまで関わるすべての場所で品質に関わる知識が必要となっているということです。PL(製造物責任)法や家庭用品品質表示法(関連する繊維製品品質表示規程)などを遵守して製品を製造・販売する必要があり、「品質」は重要です。また、繊維製品について素材や生産・流通・消費などの分野を、体系的に学びますので、ファッション業界の企画・設計、販売、品質保証、消費者対応といった様々な分野での活躍が期待されます。

PL法

製品事故の防止や被害救済を念頭に、製品事故や被害が起こった場合、消費者が企業側の責任を立証しなくてはならなかった従来とは異なり、製造した者に責任を負わせるようにした法律。このことにより企業は、製品の安全性をより深く追求しなくてはならないし、品質管理も十分行う必要性が生じる。

繊維製品品質表示規程

家庭用品品質表示法基づく繊維製品品質表示規程によって、衣料品には、繊維の組成、家庭洗濯等取扱方法、製造者に直接連絡がとれるような住所や電話番号の表示などが必要である。

1級TAと2級TAの違い

大学生活環境学科では1級TAと2級TAが、短大生活造形学科アパレルコースでは2級TAが取得できます。もともと4年制大学で1級、短大で2級のTAを認定することでTA制度はできましたが、その後4年制大学でも、TA2級の養成をする大学が誕生しました。2級TAは、必要とされる単位数が少ないことと、主に短大生が取得する資格であるという点で、1級TAと異なります。
 大学生活環境学科では、1級TAだけでなく、2級TAも取得できますが、より専門的な実験・実習が資格必修となっている1級TAと比べて、専門性を落としたカリキュラム構成となっています。2級TAは、ほとんどが短大卒業者に与えられる資格であり、まわりからも、1級TAに比べてその専門性は低いと判断されます。より高度な専門性を身につけるには1級TAをめざすのがいいでしょうし、幅広く衣から住までの「生活環境」を学ぼうという人にとっては、2級TAでもいいでしょう。

テキスタイルアドバイザーとしての将来

このような教育を受けて、どのような活躍の場があるかについてですが、繊維・アパレル・ファッション産業は、大きな市場規模を持った産業であり、よりよい人材を求めています。大学はデザイナーやパタンナーのための専門技術を学ぶわけではありませんから、TAならこの職種、と決まったものはありません。この点で専門学校の卒業生とは異なります。「デザイン・パターン・繊維の知識といった、ソフトとハード両面の基礎を持った人を商品企画に採用したい」、「セールスマネージャーやバイヤーとして海外にも買付けに行ったりする人材がほしい」、「販売の分野にも品質や商品仕入に対する判断力のあるTAのような人材がほしい」といったような企業のトップの方たちの声もあり、TAの活躍の場は、今後もどんどん広がっていくのではないかと考えています。しかし、社会はそれほど甘くはないので、資格は採用に有利に働く、と安易に言えるわけではありません。また、単位はとったけれどしっかり身についていなければTAで学んだことも活用できません。いずれにしても、本人が学んだことをいかにアピールし、いかに活かし、いかに活躍の場を見いだしていくかが大切です。