食の安全

01 安全?安心?

 「食の安全・安心」という言葉をよく聞くことがありますが,「食の安全」と「食の安心」とは全く異なる内容なのです。

 例えば,「自分の畑で獲れた野菜」は「安全」でしょうか?「安心」でしょうか?『そりゃあ「安全」で「安心」やわ』っていう声が聞こえてきます。確かに,自分の畑で水や肥料をあげて,丹精こめて作った野菜ですから,「安心」かも知れませんが,それでは本当に「安全」と言い切れますか?もしかして,近所の畑から飛んできた農薬がついているかも知れませんし,川の水に有害物質が含まれていたかも知れません。

 天然マグロと養殖マグロ,どちらが「安全」でしょうか?「天然マグロ!」と言いたいところですが,どこで何を食べて育ったのかはさっぱりわかりませんので,「安全」と言い切るのは難しいですよね。それに比べて,養殖マグロは決められた餌を与えられて育っていますので,少なくとも有害なものを食べている可能性はありません。でも,なんとなく「天然マグロは安心」と思ってしまうわけです。

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 いったい「安全」と「安心」の違いは何なんでしょうか。


02 安全と安心の違い

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 「安全」と「安心」は,ほぼ同じ意味で使われているように思いますが,実は全く違います。私も企業で製品を作ってきましたが,「安全」な製品を消費者に提供できるように常に心掛けてきました。そうして一生懸命製品を作っても,果たして消費者は「安心」な商品として認めてくれるのでしょうか?

 「安全」な製品を作るために,その製品に使用する食品添加物や医薬品は,発がん性試験をはじめとするあらゆる安全性に関する試験を数十億円〜数百億円かけて実施します。この試験により,安全に摂取できる量がわかり,厚生労働省に申請することで,使用基準が設定され,安全に使用することができるわけです。すなわち,「安全」は発がん性試験など科学的根拠となるデータにより確保できるわけです。

 このように安全性を確保した製品を消費者は「安心」して使ってくれるのでしょうか?これは,消費者それぞれの経験や知識など様々な要素によって違ってきます。「いくら安全だと言われても,ここの会社の製品は安心できない」という消費者もいらっしゃいます。そうです。「安心」は,ヒトの心(考え方)の問題ですので,しっかりとした「基準」はありません。それでは,どうすれば良いのかというと,消費者の信頼を得ることです。すなわち,事故や事件を起こさない(法令遵守)ようにして,信頼される会社を作るしかないのです。

 「安全」と「安心」は,まったく性質の違うものですね。「安全」は,費用をかけて試験をすれば確保できますが,「安心」の獲得にはかなりの努力が必要ですね。

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