福井大学教育地域科学部 田中美吏研究室      Sport Psychology & Human Motor Control/Learning Lab.
研究室ゼミ

論文や本の紹介(過去の履歴)
2023年6月26日(月) No.381
Belot, M., Crawford, V.P., and Heyes, C. (2013) Players of Matching Pennies automatically imitate opponents' gestures against strong incentives. Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 110, 2763-2768. doi: 10.1073/pnas.1209981110
<内容>じゃんけんで勝つことにより報酬を得られる場合にあいこの割合がチャンスレベルよりも多くなることを示したCook et al. (2012) の実験を拡張させる研究として、この研究ではパーとグーのみのじゃんけん(Mathing Pennies game:一方は同じ手が出ることで勝ち、もう一方は異なる手が出ることで勝ち)を課題とした実験を行っています。そして、同じ手を出すことで勝つことに対して報酬が得られる条件と、異なる手を出すことに対して報酬が得られる条件を設けて、各群の同じ手を出す割合から模倣がどの程度生じているかについて検討が行われています。同じ手を出すことで勝つことに対して報酬が得られる条件においてチェンスレベル以上にあいこの出現率が多くなる中で、それらが意図的な模倣か、非意図的な模倣かを分析すると、異なる相手と20試行行う中での前半10試行は非意図的な模倣が多く、後半10試行では意図的な模倣が多くなることが示されています。

2023年6月12日(月) No.380
Lakin, J.L. and Chartland, T.L. (2003) Using nonconscious behavioral mimicry to create affiliation and rapport. Psychological Science, 14, 334-339. doi: 10.1111/1467-9280.14481
<内容>他者が顔を触ったり足を震わせたりすると、自己も同じ行為を模倣するカメレオン効果に対して、仲間意識に対するプライミングや、その後の面接者のフレンドリーさがどのように影響するかについて検討されています。実験1では「affiliate」「friend」「partner」「together」の4つの単語を80回事前に呈示した後に、他者の行動動画を記憶する課題を実施させ、その際に他者が顔を触ることをどれだけ模倣するかを実験参加者が顔を動画視聴中に顔を触る時間から評価しています。そして仲間意識のプライミングがあることによって統制群よりも顔を触る時間が多いことが示されています。実験2では、模倣の評価を足を震わせる時間に変えて、実験1と同様に仲間意識のプライミングがある群とない統制群を設け、その後のオンラインの第1インタビューにおいて面接者が親密に接してくる群と親密に接してこない群に分け、その後の対面インタビューでの面接者の足の震わせることをどれほど模倣するか調べています。実験2では、仲間意識のプライミングがあったなかで、第1面接の面接者が親密に接してこない場合に、その後の対面インタビューで模倣が増えることを示しています。これらの結果から、カメレオン効果には仲間意識や好き・嫌い、親密性などの心理面が作用することを提案し、他者への注意、さらには意識・無意識の観点について検討することの展望が書かれています。

2023年5月29日(月) No.379
Loersch, C., Aarts, H., Payne, B.K., and Jefferis, V.E. (2008) The influence of social groups on goal contagion. Journal of Experimental Social Psychology, 44, 1555-1558. doi: 10.1016/j.jesp.2008.07.009
<内容>自己の行動目標が他者の行動の観察によって影響を受け、とくに自らの属するグループの他者の行動の観察によって影響を受けやすいことが実験的に調べられています。実験1では、アメリカンフットボールに詳しいオハイオ州立大学の132名の男女が、他者のスカッシュの映像を観察する際に、@自分の大学の学生と書かれたスカッシュの対戦映像を視聴、A自分の大学の学生と書かれたスカッシのラリー映像を視聴、B他大学の学生と書かれたスカッシュの対戦映像を視聴、C他大学の学生と書かれたスカッシュのラリー映像を視聴、の4つの中からいずれかのグループに振り分けられ、それぞれの映像視聴後にアメリカンフットボールのコーチになったつもりで5つの場面のプレーの選択について7件法でいかに競争的な戦略を採用するかを測定しています。そして、@自分の大学の学生と書かれたスカッシュの対戦映像を視聴した群はA自分の大学の学生と書かれたスカッシのラリー映像を視聴した群よりも競争的な戦略を採用したことが示されています。@〜Cの映像が男性の映像であったため、実験2では67名を対象に同じ映像を視聴する実験を新たに行い、2者での魚釣りシミュレーション課題(取りすぎると釣った魚が0になってしまう意思決定ゲーム)に課題を変え、男女別に分析が行われています。そして、男性に限定的に@自分の大学の学生と書かれたスカッシュの対戦映像を視聴した群は釣る魚の数が多くなっています。これらの結果から、自己の行動目標は自らの属するグループの他者の行動の観察に伝染されることが提案されています。

2023年5月19日(金) No.378
梅田 聡(2018)共感の理論と脳内メカニズム.高次脳機能研究(旧失語症研究),38,133-138.doi: 10.2496/hbfr.38.133
<内容>共感の多面性についてを理解できる解説になります。まずは従来の認知的共感(意識的なトップダウン形式)と情動的共感(無意識的なボトムアップ形式)の2つの要素を超えて、行動的共感、身体的共感、主観的共感があることが提案されています。身体的共感に関しては、他者の身体的痛みの共感を例に、前帯状回や島皮質がその役割を担う脳部位であることが書かれています。そして、共感に関わる脳内ネットワークとして、エモーショナルネットワーク、セイリエンスネットワーク、メンタライジンズネットワーク、ミラーニューロンネットワークの4つが存在し、それぞれの役割を担う脳部位も説明されています。最後には、共感の病理として、「自閉症」「注意欠陥・多動性」「前頭葉眼窩部損傷」による共感の欠如のメカニズムについて解説されています。

2023年5月12日(金) No.377 【同僚の三浦有花氏の成果論文】
Miura, Y., and Shinya, M. (2021) Foot clearance when crossing obstacles of different heights with the lead and trail limbs. Gait & Posture, 88, 155-160. doi: 10.1016/j.gaitpost.2021.05.020
<内容>健常な若者男女16名に対して、歩行時に左右の高さが異なる障害物を跨ぎ越すときの先行脚と後続脚それぞれの障害物から上げた足までの垂直距離マージン(クリアランス)、跨ぎ越す前や後の足の位置から障害物までの距離を評価する実験になります。右足→左足の順で跨ぎ越しを行う際に、右低-左低、右低-左高、右高-左低、右高-左低の4つの障害物条件を設け、各条件で20試行の歩行を行い、5試行毎に区切っての分析も行われています。主な結果としては、先行脚の障害物が高いと後続脚の障害物が低い時にも後続脚のクリアランスが大きくなることと、後続脚の障害物が高いと先行脚の障害物が低い時にも先行脚のクリアランスが大きくなることが示されています。このような歩行は安全を優先した適応的な歩行の制御様式であることが考察されており、高齢者、脳卒中やパーキンソン病などの歩行に問題のある患者を対象に研究を拡張していくことも提案されています。

2023年4月27日(木) No.376
Ruys, K.I., and Aarts, H. (2010) When competition merges people's behavior: Interdependency activates shared action representations. Journal of Experimental Social Psychology, 46, 1130-1133. doi: 10.1016/j.jesp.2010.05.016
<内容>左右の耳への高音と低音の音刺激を用いたサイモン課題を2名で行い(例えば、Aさんは高音に対して左手で早くキー押しをする、Bさんは低音に対して右手で早くキー押しをする)、不一致条件(例えば、右耳の正解音に対して左手でキーを押す)と一致条件(例えば、左耳の正解音に対して左手でキーを押す)の反応時間差で算出されるサイモン効果に対する共同や競争の影響が検討されています。90名の実験参加者が、ペアでサイモン課題を行う際の各自の反応時間の早さについて、個人の成績次第で報酬が得られる条件(個人条件)、2名の成績次第で報酬が得られる条件(共同条件)、2名の競争の成績次第で報酬が得られる条件(競争条件)のいずれかにランダムに割り振られ、180試行(Aさんの反応は90試行、Bさんの反応は90試行)のサイモン課題に取り組み、反応する90試行は一致条件30試行、不一致条件30試行、統制条件(両耳に音が呈示)30試行で構成されています。一致条件、不一致条件、統制条件のキー押しまでの反応時間について分析が行われており、共同群と競争群は個人群よりもサイモン効果が高まることが示されています。さらに実験2では、人の目の写真から他者の意図を読み取る課題を事前に行い、その成績が高い群と低い群に分けて、個人群と競争群に絞って上記と同じサイモン課題に取り組んでいます。そして、他者の意図読み取り成績が高い群は個人条件と競争条件のいずれにおいてもサイモン効果が高い中で、他者の意図読み取り成績が低い群は個人条件ではサイモン効果が小さいものの競争条件になるとサイモン効果が高まることが示されています。これらの結果から、他者の行為の表象を読み取りながら自己の行為を行うことが共同や競争によって強化されることや、他者の意図を読み取ることが苦手な人においても競争時には他者の行為の表象を読み取りながら自己の行為を行うようになることが提案されています。

2023年4月20日(木) No.375
Xu. M., Tachibana, T., Suzuki, N., Hoshino, E., Terasawa, Y., Miki, N., and Minagawa, Y. (2021) The effect of haptic stimulation simulating heartbeats on the regulation of physiological responses and prosocial behavior under stress: The influence on interoceptive accuracy. Biological Psychology, 164, 108172. doi: 10.1016/j.biopsycho.2021.108172
<内容>心拍数を聴覚刺激として聴くことで情動や認知が変わることを調べる複数の研究があるなかで、この研究では内受容間隔の知覚の正確性の関与に踏み込まれています。実験参加者38名中32名を分析対象とし、ストレス下でスピーチ課題や暗算課題、さらには向社会的行動を測定する3種類のゲームを実施するときの心拍数や心拍変動を記録しています。さらに刺激あり群には、これらの課題を行う際に各実験参加者の安静時心拍数の80%の心拍聴覚刺激を現在の心拍音であると偽教示したなかで与えています。そして、刺激なし群も設け、群間比較が行われています。また、内受容感覚の正確性については、心拍数を感じてその推測値と実際の値との差を算出し、その差が小さいほど内受容感覚が正確であることを示す心拍カウント課題を用いて定量化をしています。結果として、内受容感覚が正確な人がゆっくり心拍音の聴覚刺激を聴くことで、ストレス下でのスピーチ課題や暗算課題時に心拍数が低下したり、副交感神経の活動が促進することが示されています。ストレス下でのスピーチ課題や暗算課題後の向社会行動には刺激の有無や内受容感覚が正確性に伴う違いは示されていませんが、両群において副交感神経活動高まった人ほど向社会行動が増えることが示されています。内受容感覚が正確な人ほど、ゆっくり心拍音の聴覚刺激を聴くことで心拍数が低下したり、副交感神経の活動が促進する理由としては、内受容感覚が正確な人は内部情報に敏感であるため聴覚刺激による情動調整をしやすいため、内部情報から注意が逸れたことによって生じたための2つの視点から考察がされています。

2023年4月11日(火) No.374 <この論文の第3著者である岩月猛泰氏(ハワイ大学ヒロ校)からの紹介論文>
Mousavi, S.M., Dehghanizade, J., and Iwatuski, T. (2022) Neither too easy nor too difficult: Effects of different success criteria on motor skill acqusition in children. Journal of Sport and Exercise Psychology, 44, 420-426. doi: 10.1123/jsep.2022-0082
<内容>小学4-6年の男子48名を対象に、非利き手(左手)で5.5m先の円形的(中心が10点で外にいくほど点数が小さくなり的から外れると0点)の中心に向けて正確にボール投げを行う際に、練習時の成功基準の違いを設け、その違いが2日後の保持テストや6.5mの距離に伸ばした時の転移テストに及ぼす影響を検討しています。練習時の成功の判断基準は、難しい基準群(9点以上を成功:平均成功率13%)、やや簡単な基準群(6点以上を成功:平均成功率46%)、簡単な基準(3点以上を成功:平均成功率76%)、統制群(基準を伝えない)の4群が12試行×5ブロックの練習に取り組んでいます。練習時の得点に群間差は見られていませんが、保持テストと転移テストにおいてはやや簡単の基準群のみ統制群に比べて有意に得点が高く、このような差は難しい基準群や簡単な基準群にはありませんでした。この結果から適度な成功率の基準設定が学習を促進する可能性を提案し、自己効力やコンピテンスなどの心理的メカニズムの考察が行われています。また簡単な成功基準が学習を促進しない理由についてもチャレンジポイントの視点から考察されています。基準の設定の学習者に委ねる自律性も交えて今後の研究を展開することや、大人を対象とした同テーマの研究とは異なる結果が得られている理由についても子供の情報処理能力に起因する可能性なども書かれています。

2023年3月23日(水) No.373
Stead, J., Poolton, J., and Alder, D. (2022) Performance slumps in sport: A systematic review. Psychology of Sport and Exercise, 61. doi: 10.1016/j.psychsport.2022.1021136
<内容>スポーツでのスランプに関する総説論文になります。英文に限ってはいますが、このテーマについて探索された論文数は質的および量的研究を合わせて18文献であり、いかに研究数が少ないテーマであるといえます。スランプの@定義、A原因、B症状、C対処法の順で総説が行われており、定義に関しては従来の「原因がよく分からないパフォーマンスの長期的な低下」を「原因がよく分からない場合や特定できるパフォーマンスの長期的な低下」という新たな提案が行われています。原因、症状、対処についても多岐に渡る結果が散見されており、今後はスランプの概念枠組みを構築する必要性が述べられていました。スランプの反対ともいえるフローの概念もスランプの研究に取り入れることも最後に提案されています。

2023年3月3日(金) No.372
Solomonov, Y., Avugos, S., and Bar-Eki, M. (2015) Do dlutch players win the game? Testing the validity of the clutch player's reputation in basketball? Psychology of Sport and Exercise, 16, 130-138. doi: 10.1016/j.psychsport.2014.10.004
<内容>プレッシャー下で高パフォーマンスを発揮することをクラッチといいます。しかしながら、アメリカのメジャーリーグのデータを扱った研究では、年間を通した成績から分析するとクラッチを多く起こしていると評判のある選手がクラッチを実現できているとは言えず、他種目でも同様の検討を行うためにこの研究ではNBAのバスケットボールの成績による検討が行われています。2003年から2006年にかけての成績を基にした50名の選手リストに対して、8名のバスケットボールの専門家が16名のクラッチが生じていると考えられる選手を抽出しています。そして、2005-2006年シーズンにおいて第2クオーター(低プレッシャー)と第4クオーター(高プレッシャー)で残り5分かつ6点差以内の状況における諸パフォーマンスデータの比較分析が行われています。結果として、これらの16名の各指標の平均値は概ね他の選手よりもクラッチを説明できるものではあるものの、シュートやフリースローの成功率はそうではないことから、成功率の観点からはクラッチというものは存在せず、クラッチは選手のプレー回数やプレーの選択の意思決定、その選手を起用するコーチ、ファールなどのような相手選手の行為によって説明できると提案されています。このような結果を受けて、クラッチ選手という評判が形成されるまでのプロセスのモデルの提案もあり、それは転がることで増幅していく雪だるまのダイナミクスのようなものであると結論づけられています。期待されることで成果があがるピグマリオン効果や、スポーツのプレーにおいて確率以上に成功が続くホットハンド現象との関連も考察されています。

2023年2月20日(火) N0.371
Harris, D.J., Vine, S.J., Eysenck, M.W., and Wilson, M.R. (2021) Psychological pressure and compounded errors during elite-level tennis. Psychology of Sport and Exercise, 56, 101987. doi: 10.1016/j.psychsport.2021.101987
<内容>2016年から2019年にかけてのテニスの4大大会の3552マッチにおける約65000ポイントのデータを基に、各場面でのプレッシャーの強度(5段階評価)とそのプレーの事前における自己のエラーが、イージーミスやポイントの取り方への影響を線形混合モデルによって分析がなされています。そして、主な結果として、プレッシャーの強度が高くなるほどイーズミスが増える、プレッシャーがあり前のプレーでミスをすると次のプレーでのミスが起きやすくなる、そのようなミスはリスクテイクを取るようにストラテジーの変化に依存しないことが示されています。序論では注意制御理論を発展させる形で、プレッシャー下での不安や注意の増加には、エラーの確率やエラーによる損失の大きさが寄与するkとが提案されており、エラー後のプレー時にはミスのような脅威刺激に注意が向くことで次の試行のミスに繋がる可能性が考察されています。一方で、意識的処理仮説で説明できるミスに伴う動作への注意に起因する可能性もあり、今後の検討課題であることが提案されています。また、ミスの連鎖を防ぐための対処法として、ルーティン、セルフトーク、プロゴルファーのアニカソレンスタム選手のような気持の切り替えについても記述されています。

2023年1月31日(火) No.370 <三森裕希子氏の紹介論文>
Oliver, G., and Plummer, H. (2011) Ground reaction forces, kinematics, and muscle activations during the windmill softball pitch. Journal of Sports Sciences, 29, 1071-1077. doi: 10.1080/02640414.2011.576692
<内容>ソフトボールのピッチングにおける動作(ストライド長、ステップ脚接地時の股関節や膝関節の角度)、筋活動(軸脚側とステップ脚側の大臀筋と中臀筋の筋放電量)、3次元の床反力、球速の関係性を調べることで、球速の向上や怪我の予防に効果的な動作について運動学や動力学の視点から考察がなされています。床反力や軸足側の大臀筋と中臀筋の筋放電量と球速の間に正の相関が示されており、これらは球速の向上に寄与するメカニズムであると考えられます。さらに大臀筋と中臀筋の筋放電量の増加は骨盤の動きを安定化させ、腰部の怪我の予防に繋がる可能性も推察されています。

2023年1月18日(水) No.369
Tsai, C.C., and Brass, M. (2007) Does the human motor system simulate Pinocchio's actions? Psychological Research, 18, 1058-1062. doi: 10.1111/j.1467-9280.2007.02025.x
<内容>20名の実験参加者を対象に、ディスプレイ上の左右の異なる位置に提示される赤か緑の視覚刺激に対して右手でボタン押しを行うサイモン課題を実施させています。その際に、ディスプレイ上に人の左手もしくは木製の左手(Pinoccio)を呈示し、他者の左手のサイモン課題があるなかでの自己の右手のサイモン課題の反応時間に対する影響が検討されています。結果として、木製の手の運動に対しては刺激の左右の提示位置と運動する右手の一致条件と不一致条件に反応時間に差はなかったですが、人の手の場合には一致条件の反応時間が早くなっています。他者の運動の伝染が人の運動においては生じて、人工的な手では生じないことを示しているいくつかの先行研究を支持している研究になります。

2023年1月11日(水) No.368
Michalak, J., Mischnat, J., and Teismann, T. (2014) Sitting posture makes a difference: Embodiment effects on depressive memory bias. Clinical Psychology and Psychotherapy, 21, 519-524. doi: 10.1002/cpp.1890
<内容>姿勢がポジティブおよびネガティブ思考に影響する身体性認知に関する研究になります。うつ病患者30名がディスプレイ上に提示される16個のポジティブ語と16個のネガティブ語を視聴させています。そのときに、椅子に座り背中を丸めたローパワーポーズで視聴する群15名と椅子に座り背筋を伸ばしたハイパワーポーズで視聴する15名に分けて、提示された単語の記憶再生課題を実施しています。ハイパワーポーズ群はポジティブ語とネガティブ語の想起数に差がない中で、ローパワーポーズ群はネガティブ語の想起数が多い結果が得られています。ネガティブな方向への情報処理が姿勢をはじめ歩行などの運動機能によってバイアスを受けることを示しており、身体に注意を向けるマインドフルネス認知療法への関与も推察されています。効果の持続性をさらに調べることや、うつ病を有していない統制群の設定についても言及されています。