景観建築学専攻

「建築」「ランドスケープ」「映像情報技術」を融合した学びで、自然と共生し社会に貢献できる建築・景観設計技術者や研究者を養成します。修士課程のカリキュラムは、建築・景観設計の主要な資格、一級建築士とRLAに対応。修了生は一級建築士資格登録に必要な「実務経験2年」と、RLA受験資格取得に必要な「実務経験3年のうち2年」を充足します。
研究分野
「景観建築学」
自然と共生する社会に貢献できるより高度な建築・景観設計技術者や研究者を養成
古来、私たちは自然の美しさと恵みを享受するとともに畏敬の念を抱きながら、豊かなくらしを育んできました。ところが、ヒートアイランド現象や生物多様性の危機など深刻な問題に直面する現在、持続可能な社会や建築、都市の創生には、自然との関係を問い直し、先人の知恵にも学びながら、新たな哲学を築くことが必要です。景観建築学専攻では、建築学とランドスケープ学を一体的に学ぶ、革新的なカリキュラムを準備。建築、自然、映像情報技術の幅広い学びを通して、建物とその周囲の庭や街路などの屋外空間、さらにそれらを含む広域の自然環境との調和も一体的に計画できる設計者および研究者を育成します。

景観建築設計総合演習における学び
修士課程
自然・建築・映像情報の「理論」と「実践」が有機的に連携するカリキュラム
[講義科目] 建築とランドスケープの先端理論をバランスよく学ぶ
講義科目では、構造、環境・設備、施工、法規、倫理などの建築設計に必要な理論や、緑化計画、緑化技術、生態学など景観設計に必要な理論を幅広く、バランスよく学びます。
[演習科目] 映像情報技術を活用しつつ、景観と建築を一体的に設計
「景観建築設計総合演習」では、庭園や広場、街路などのランドスケープと建築の設計が一体化した課題に取り組みます。また、本演習は「景観映像情報特論」の講義と連携し、地理情報システム(GIS)や仮想現実(VR)、ドローン、高度な測量技術を活用した設計手法を実践的に学びます。
また、原寸大の空間構築の課題にも取り組み、原初的・直接的・身体的な体験を通して、建築空間や景観を具体的、実践的に設計する能力を養成します。
[インターンシップ科目] 具体的な実務を通じて、実践力を養う
「建築設計実務」、「建築実務インターンシップ」により、学内の一級建築士事務所「武庫川女子大学建築・都市デザインスタジオ」をはじめ学外の設計事務所や建設現場での設計・工事監理・施工管理などの実務に参加します。これらを通じて、実務に必要な知識・技術・態度などを学び、実践力を養います。
ディプロマポリシー(修士課程)
- 高い「理性」により、「強」や「用」を含む「真」の視点から建築・景観的事象を理解するための広範な「知識」を修得し、さらに修得した「知識」の統合により問題を解決する実践的能力を修得している。
- 語学や諸学の基礎学力の修得、及び自らの主張を社会に提案し、合意を形成できる実践的能力を修得している。
- 構造や諸災害などに対する安全性を「強」として理解し、その基礎的・先端的技術を積極的に吸収し、演習や実習によって空間的に構成する実践的能力を修得している。
- 機能性や環境負荷などに関する快適性を「用」として理解し、その基礎的・先端的技術を積極的に吸収し、演習や実習によって最適な空間を構成する実践的能力を修得している。
- コスト、スケジュールなど様々な制約条件を理解し、これらのもとで、適切な設計・施工計画を進められる実践的能力を修得している。
- 「感性」豊かな個性を、関連する「知識」や実践的「創作」活動により磨き、地域の「美」的、「歴史」的、「文化」的価値を理解し、自然との共生の視点から地域の伝統的文化を創生できる実践的能力を修得している。
- 基礎的造形能力を培っている。
- 歴史、文化、国際社会、地球環境を理解する実践的知識を修得し価値観を身に付けている。
- 地球環境・国家・地域社会において真に人間的な住環境を創生するために、社会的義務と責任を重んじ、自然との共生の視点を持って自律的に行動する「人格」を身に付けている。
- 社会の仕組みや現代社会の問題点を理解する能力と継続的に学習できる能力を身に付け、自律的活動ができる職能人としての自覚を形成している。
- 「真」「善」「美」の修得と同時に、価値基準が異なる「真」「善」「美」を互いに総合する能力を身に付け、安全で、使いやすく、美しい、真に人間的な住環境を創生する実践的能力を修得している。
- 「真」「善」「美」で極めた精神世界を統合し、住環境という実在するモノの世界に具体的、実践的に実現する能力を修得している。
- 様々な専門家、技術者との共同の重要性を理解し、チームワークで建築をつくりこむことのできる能力を修得している。
学習の流れ(カリキュラム構成図参照)
1年前・後期は、一級建築士資格取得に必要な「実務経験2年」の認定を受けるための実務教育の基礎として不可欠なインターンシップ関連科目を履修します。「景観建築設計総合演習」では高度な映像情報技術を活用しつつ、建築と景観を一体的に設計します。講義科目では、インターンシップや設計実務において不可欠な技術者倫理、マネジメント、構造、設備、施工管理などにかかわる知識を学びます。「景観建築フィールドワーク」は特に演習科目と、そして講義科目とも体系的に連携して行われます。2年前期には、実務教育の根幹をなすインターンシップ科目を履修します。「建築設計実務」(2年前期)では、学内で4ヶ月間の実務訓練を行います。また夏季休暇、春季休暇は学内外において短期の「建築実務インターンシップ」を履修します。
また、一級建築士資格の実務要件に対応するためのインターンシップ関連科目およびインターンシップ科目と並行して、景観設計に必要な緑化工学、生態学、緑地計画、景観映像情報などに関する講義を履修します。特に「景観映像情報特論」は「景観建築設計総合演習」と密接に連携し、高度な映像情報技術を建築・景観設計における問題解決や提案に活用します。
2年後期は「修士設計」または「修士論文」を選択します。
カリキュラム構成図

※カリキュラムは2023年4月に入学する学生のものです(予定)。
昼夜開講制の博士後期課程
建築・景観設計分野に関する高度で幅広い学識を有し、社会において指導的な役割を担うことができる設計技術者、研究者、教育者となるための研究指導を行います。昼夜開講制なので、働きながら研究指導を受け、博士の学位を取得することも可能です。
主な開講科目内容
修士課程
一級建築士資格取得に必要な実務経験2年に該当するための
- インターンシップ科目 ★印
- インターンシップ関連科目 ※印
インターンシップ科目
- 建築設計実務★
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修士課程 2年前期 内容 学内外の実案件などを対象に、新築・改築・保存・修復などの実務を半期(300時間)にわたって実習します。教員の指導のもと、構造・設備設計者や施工者など多くの専門家と協働する方法や施工の状況を実地から学び、コスト、スケジュールなどさまざまな制約条件を理解し、実践的能力を身に付けます。
- 建築実務インターンシップⅠ★・Ⅱ★
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修士課程 1・2年 内容 おもに夏季または春季休暇の2週間(60時間以上)、豊富な実務実績を有する、学内または国内外の建築設計事務所、調査研究機関、専門的な技術をもつ工務店、実務教育プログラムを有する国外の大学などにおいて、建築設計、構造設計、設備設計、施工監理、保存修復などの実務訓練を行います。
- 景観実務インターンシップ
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修士課程 1・2年 内容 おもに夏季または春季休暇の2週間(60時間以上)、景観にかかわる設計事務所やコンサルティング企業、施工現場などにおいて、実案件の調査、企画、設計、工事監理、施工管理などの実務訓練を行います。
演習科目
- 景観建築設計総合演習A※・B※
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修士課程 1年前期・後期 内容 1年前期には、自然と一体になった建築をテーマに、「原寸大の空間作品の共同制作」と「茶室と露地の設計」の2課題に取り組みます。自然素材の活用や生態系と共生する手法なども検討します。1年後期には、基本構想から基本計画、基本設計までのプロセスを重視した2課題「GISによる高度な分析に基づく景観の基本構想と計画」と「文化的景観を形成するランドスケープと建築」に取り組みます。建築、景観、映像情報それぞれの担当教員3人が学生一人ひとりの机をまわり、一対一で対話しながら指導します。講評会では学外の造園家や建築家などの専門家による講評を受けます。
フィールドワーク科目
- 景観建築フィールドワーク ⅤA※・ⅤB※・Ⅵ※
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修士課程 1年前期・後期、2年前期 内容 土曜日には、講義や設計演習課題に関連した敷地、歴史的あるいは現代的な町並みや建築物、庭園や公園、建設現場などを見学し、空間と人間の関係を認識しながら、多面的な考察を行い、多様な社会的要求に対応した建築・景観を実現する素養と能力を涵養します。
講義科目
- 建築家の職能と倫理※
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修士課程 1年後期 内容 建築家の職能や役割、建築士の資格制度、社会的諸問題に関する講義を通じて、諸技術を統合する術、社会に対する責任や倫理を、芸術、歴史、文化のレベルまでを見据えて学びます。
- 建築計画マネジメント論※
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修士課程 1年後期 内容 建築は建築主の依頼を受け、建築主との事業構想・企画の具体化、設計者と諸技術者、専門家との協働による設計・施工・工事監理を経て完成します。竣工後は運営・管理、維持・保全、再生・更新が行われます。こうした建築のライフサイクルの各プロセスにおいて設計者に必要となるさまざまなマネジメントについて学び、良質な建築づくりを計画的かつ円滑に遂行する手法を修得します。
- 建築構造設計論A※・B※
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修士課程 1年前期・後期 内容 建物の形態を決定づける際に、構造計画の果たす役割と構造材料、構法、構造形式などを適切に選定していく過程、手法を習得します。最新の免震・制震技術についても解説します。また、様々な構造システムについて、その力学的原理や歴史的変遷を学び、それらのシステムを実際の設計に用いた場合のモデル化・解析手法を紹介し、手計算できるものは、問題演習により実践します。
- 建築環境設備設計論A※・B※
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修士課程 1年前期・後期 内容 建築環境・設備技術の実例を通して、地球環境問題の解決と、快適な生活環境の確保という2つの課題の因果関係や解決方法を学びます。地球環境や人への負荷を極力抑え、将来の環境をできるだけ損なわない建築を創造するために不可欠なキーワードについて、その社会的背景、法制度、国内外の枠組み、環境・設備技術の観点から学習します。
- 建築施工管理論※
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修士課程 1年前期 内容 建築の施工は、設計図書に基づき、要求される品質の建物を所定の予算・工期内に効率よく安全に生産する行為です。具体的にどのように施工につなげていくかを理解するために、建築生産の流れ、請負契約、積算、地域・社会環境に配慮した建築生産計画の立案および躯体・仕上げ工事の施工技術や管理技術を習得します。
- 建築法規特論※
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修士課程 1年前期 内容 都市計画法や景観法等の各関係法令との連携の中で、建築・都市政策の最前線を受け持つともいえる建築基準法について、地域、まちづくりのための法規定を中心に深く学習し、社会的義務と責任を重んじ、広い視野と公共的観点から法の解釈、運用ができる能力を習得します。
- 景観緑化工学特論
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修士課程 2年前期 内容 植栽基盤の整備、環境林の形成、自然回復緑化など森林の再生技術や、のり面緑化、治山緑化など緑化工法についての理論や技術、さらに緑地が持つ防災機能や癒し機能をはじめとする環境機能について学び、建築・景観設計への活用を図ります。また、建築・都市緑化への応用を念頭に、緑の療法的効果を取り入れた植栽を計画、作成、管理します。
- 景観設計論
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修士課程 2年前期 内容 景観設計分野における基本設計や実施設計の理論や手法について学びます。基本設計においては、平面図、立面図、断面図などの基本的な図面に加えて、植栽工・施設工・園路広場工など、各工種ごとの平面図、詳細図などの作成手法を習得。さらに実施設計においては、土地造成計画平面図や土量計算、園路や施設などの詳細図の作成手法を習得します。
- 景観生態学特論
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修士課程 2年前期 内容 景観生態学では、「景観」という空間の諸特性をさまざまなスケール、様々な視点から階層的に解明し、生態系機能を発揮させ続けていくために必要な地域計画や土地利用施策に、科学的・論理的基盤を提供します。パッチ、コリドー、マトリックス、ステッピング・ストーンなどの概念に代表される景観生態学の理論と研究手法について講義や文献の講読などから理解を深めるとともに、地域計画や土地利用への応用事例について議論します。
- 景観緑地計画特論
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修士課程 1年後期 内容 都市計画・緑の基本計画などの景観建築分野における基本的な計画理論や手法について学びます。また、基本構想や基本計画等、各計画レベルにおける調査・分析・評価・企画立案・構想策定等の計画プロセス、アンケートや説明会・ワークショップなど合意形成の手法、構想や計画の主旨の図案化、ゾーニング計画や動線計画の手法など、具体的な計画技術を習得します。
- 景観計画論
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修士課程 1年後期 内容 国内外における各種の景観計画に関する歴史を概観し、計画思想とその展開手法ならびに実現された景観について社会的背景や条件とともに理解します。さらに授業内演習を通じて、データの入手や解読、閲覧・分析ツールを用いた可視化や主題図作成、抽出領域の提示やダイアグラム化など景観計画立案プロセスの一連の流れを理解します。
- 景観建築特論
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修士課程 1年後期 内容 先端的な景観建築の事例研究などを通して、景観建築の現代的な役割を理解し、具体的な景観建築の設計に展開するための知見を得ます。まず、米国や欧州における近代的な景観建築の成立と展開について学び、次いで日本国内における先進的作品の事例を研究します。さらに現代的なパブリックの意味の理解と市民参加など新しいソーシャル・デザインの手法を学ぶとともに、関西地域の景観建築の今後の展開について考察します。
- 建築都市緑化特論
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修士課程 1年前期 内容 建築の屋上緑化、壁面緑化、および人工地盤緑化などの環境に配慮した最新の緑化技術について事例に即して学び、建築・景観設計に活用できる能力を養います。さらに環境配慮型の緑化を目指した栽培試験を行い、建築・都市緑化に適した植物の選択および低投入・省力型の管理法を検討します。
- 景観映像情報特論A・B
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修士課程 1年前期・後期 内容 「景観建築設計総合演習」と連携し、高度かつ先端的な映像情報技術を修得し、建築・景観設計における問題解決や提案に活用できる実践的能力を培います。具体的にはアルゴリズミックデザイン、地形や樹木、建物の点群データの生成と利用、実写とCGの合成動画の作成などを学び、これらを総合した高度な景観シミュレーションを行います。また、GIS(地理情報システム)による高度な分析に基づく景観の構想と計画を行います。
博士後期課程
- 研究指導Ⅰ~Ⅵ
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内容 建築・景観設計分野において、指導的立場の設計技術者、あるいは自立した研究活動を行うことができる研究者となるために必要な高度な研究の指導を行います。
- 先端景観建築学演習
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博士後期課程 1年前期 内容 建築学および景観建築学にかかわる既往の研究内容や研究手法の調査や、研究課題や研究手法の案の策定、学会発表や論文執筆の構想の立案を行うとともに、これらの内容について発表、討論を行います。
主な研究テーマ
- 日本と諸外国における自然観と景観の研究
- 建築および遺跡の保存修復、都市の景観保全のためのドローンおよび映像情報技術の応用に関する研究
- GIS(地理情報システム)を活用した、都市の雨水循環システムの創造に関する研究
- 自然と建築が調和する美しい屋上・壁面緑化の研究
- 日本庭園の特質をいかした都市デザインに関する研究
- 庭園のサウンドスケープに関する研究
- テイカカズラ類の分類体系の整理と交雑の可能性に関する研究
- 歴史的市街地の細街路沿いのまちなみ保全に関する研究
- 路地のまちなみ景観の特徴に関する分析
- ファサードの立体的な構成に着目した伝統的街並み景観の研究
- 機械学習を用いた建築デザインプロセスにおける規則の抽出
- 村野藤吾の意匠論
- 住まうことと建てることについての建築論的研究
- 精神医療施設の計画・設計に関する研究
- 近代日本およびその植民地における郊外居住と住宅地形成に関する研究
- 近代日本における「日本趣味」建築に関する研究
- 光環境と建築デザインに関する研究
- 日本の伝統的環境制御手法と現代建築デザインに関する研究
- 歩きやすい歩行者空間を形成するための、街区と街路のスケールに関する研究
授業科目
履修方法
- 〈修士課程〉
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- 2年以上在学し、必修科目33単位、選択必修科目25単位以上、合計62単位以上を修得し、さらに修士設計または修士論文を提出して、その審査および最終試験を受ける。
- 必修科目、選択必修科目については、左表の備考に示す要件に従って修得しなければならない。
- 〈博士後期課程〉
- 3年以上在学し、必修科目7単位を修得し、さらに博士論文を提出して、その審査および最終試験を受ける。
学位授与
- 〈修士課程〉
- 修士課程に在学して、所定の単位を修得し、さらに修士設計または修士論文の審査および最終試験に合格した者には、修士(景観建築学)の学位を授与する。
- 〈博士後期課程〉
- 博士後期課程に在学して、所定の単位を修得し、博士論文の審査および最終試験に合格した者には、博士(景観建築学)の学位を授与する。