安全と安心の違い

0018


 「安全」と「安心」は,ほぼ同じ意味で使われているように思いますが,実は全く違います。私も企業で製品を作ってきましたが,「安全」な製品を消費者に提供できるように常に心掛けてきました。そうして一生懸命製品を作っても,果たして消費者は「安心」な商品として認めてくれるのでしょうか?

 「安全」な製品を作るために,その製品に使用する食品添加物や医薬品は,発がん性試験をはじめとするあらゆる安全性に関する試験を数十億円〜数百億円かけて実施します。この試験により,安全に摂取できる量がわかり,厚生労働省に申請することで,使用基準が設定され,安全に使用することができるわけです。すなわち,「安全」は発がん性試験など科学的根拠となるデータにより確保できるわけです。

 このように安全性を確保した製品を消費者は「安心」して使ってくれるのでしょうか?これは,消費者それぞれの経験や知識など様々な要素によって違ってきます。「いくら安全だと言われても,ここの会社の製品は安心できない」という消費者もいらっしゃいます。そうです。「安心」は,ヒトの心(考え方)の問題ですので,しっかりとした「基準」はありません。それでは,どうすれば良いのかというと,消費者の信頼を得ることです。すなわち,事故や事件を起こさない(法令遵守)ようにして,信頼される会社を作るしかないのです。

 「安全」と「安心」は,まったく性質の違うものですね。「安全」は,費用をかけて試験をすれば確保できますが,「安心」の獲得にはかなりの努力が必要ですね。

Since 1998.08.25〜 連絡先:松浦寿喜(chuchan_net@yahoo.co.jp)