改善・改革の取り組み

※学生向けに公開した内容からの抜粋です。文中の「皆さん」は、学生のことを指しています。

臨床心理学専攻

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  総  括

 満足度調査には、在籍者のほとんどから回答がありましたが、その結果を見ると多くの項目で満足度が50%未満となっています。不満足度でみても、かなり高い項目があり調査結果を真摯に受け止めなければなりません。そこで、皆さんの具体的な思いを直接尋ねるために、平成25年9月に座談会を行いました。そして、参加してくれた現修士課程2年生(調査時1年生)からは、調査結果が自分たちの実感とは少し異なり満足感が低く出ているように思えるとの意見があったことを付け加えておきます。
 特に、教員との交流の不十分さに起因すると考えられる不満は、2年生進学時に中央図書館棟から総合心理科学館(総心館)への移転を経験したことによるものであると推測されます。研究に関する施設・設備がよくなり物理的な研究環境は大きく改善されましたが、教員との交流が限定されるなど心理的な負担を強いられる面も出てきました。それが満足度調査に反映されていると思われます。
 座談会の結果、皆さん自身の臨床心理へのモチベーションが、以前に比べ大きく下がっていることが満足度の低さにつながっていると考えられたので、モチベーションを高める対策について専攻で検討してみました。一つは先輩たちがどんな活躍をしているのかを直接に肌で感じることの必要性があげられました。ここ数年、修了した先輩との学習と交流の場である武庫川臨床心理学研究会(武庫臨)の開催ができていません。この武庫臨の再開は、先輩と現役の交流の場として必要であり、先輩がロールモデルとなって皆さんのモチベーションを高めることが期待できます。もう一つは、モチベーションの高い学生の受け入れによる活性化です。武庫川女子大学出身者には学部在学中からもっと心理臨床に触れることができる機会を増やすことが、やる気の醸成に役立ちます。また、学外からやる気のある学生を受け入れるために、社会人入試を取り入れ、有能でモチベーションの高い社会人の受け入れにより底上げを図ることも一案であると考えています。
 本専攻の性質上、対人満足度を上げることが重要です。そのために教員、同期生、先輩後輩との相互コミュニケーションの満足度が上がる工夫が必要といえます。月1回程度関係教員が総心館でオフィスアワーを行うのも一案でしょう。しかし、皆さんからの不満を丁寧に拾い上げ、真摯に取り組む姿勢が何より必要です。学部や短期大学部の幹事懇談会のように、定期的に専攻座談会を実施し皆さんからの生の声を拾っていこうと考えています。
 皆さんにとって、研究活動の実践・維持に対する経済的な負担はかなり厳しいものがあります。本専攻としては、研究に必要な用具や心理テストなどを揃えたり、郵送費などの一部を負担したりすることを行っていますが限界もあります。とくに、学会や研究会、研修会への参加・発表に対する経済的補助の充実が望まれます。この点については、大学当局にも強く検討を促していきたいと考えています。

授業について

 本専攻は臨床心理士を養成する課程であり、実践者兼研究者モデルを追求していますが、よき実践者を育成するほうにウエイトが高くなっています。そのため、授業内容について、職業や進路に役立つ授業への満足度が高い一方で、研究面で役立つ授業が少ないことに不満があることがわかります。
 しかし、資格試験への対策を考えると基礎知識の習得や心理臨床技法の習得などを深化することに重点をおく必要があります。授業の一部を研究テーマに関連づけたり、新しい研究分野について講義したことに基づいて自ら主体的に学ぶことを期待しています。
 本専攻では、従来の修士課程1年生集団指導・2年生個別指導の研究体制を改め、1年生から始まる新たな研究指導体制を構築し始めました。平成24年度にはチューター制を設けるなど、修正しながらもより望ましい指導体制への移行を目指しています。
 システム面に関していえば、本専攻では、関連領域である教育学専攻や臨床教育学専攻の開講科目を履修しやすくなっています。この点に関して、専攻座談会ではとくに不満はないとの意見が多くでました。また、受講希望があれば他専攻の授業を一定範囲内で受けることも可能です。しかし、臨床心理士資格に必要な単位を修得しなければならないことから、必要単位に算入されない他専攻の履修には積極的でない傾向が見られます。

教育・研究環境について

 平成24年度より、新築の総心館の供用が開始され、ハード面での満足度はとても高いものがありますが、研究サポートといったソフト面になると不満が大きいことが上記E〜Gの結果からわかります。本専攻では、臨床心理士の受験資格要件のために受講すべき必修科目が多いうえに、優れた心理臨床家になるためにプラスアルファの学修が強く求められます。また、実習や研修に割かれる時間も多いため、アルバイト等で研究経費を捻出することは難しく、特に学会や研究会、研修会へ金銭的な理由から参加しにくいのが実情です。学会に参加し発表するためにはかなりの経費がかかりますが、現状は学会で発表すれば規定の補助金が支給されるシステムだけではサポートが不十分と感じているのが、結果に示されています。
 専攻座談会では、学会参加にも参加費等の補助を出してもらいたいこと、学会発表なら経費がまかなえる程度に上限をあげてほしいこと、また、たとえばTAのように大学内で働いて研究に使える経費が得られる制度を拡充することなどの要望がありました。これらを専攻としても検討し、大学院生全体の支援強化について大学に理解を求める動きを開始したいと考えています。
 なお、関係教員が積極的に外部研究資金を獲得し、皆さんに研究協力の面で携わってもらい、その資金から皆さんの研究経費をまかなうことも対応策の一つとして考える必要があります。

教員について

 調査結果を、真摯に受け止めています。ただし、皆さんの求める教育・研究面での教員に対する満足が何を意味するのかについては、正直なところよく分かりません。たとえば、Hの研究レベルへの満足度はかなり低いですが、半数が「どちらともいえない」と回答しています。専攻座談会で分かったことは、研究というと成果がはっきり出る実験・調査研究がイメージされやすいのですが、本専攻の皆さんにとっては臨床実践のイメージのほうがより重要ということでした。教員は、心理臨床の実践を積み重ね、学会や研究会、研修会でコメンテーターやパネリストとして発言したりしていますが、皆さんにはそうした活動が研究イメージと結びつかないのかもしれません。したがって、それらが研究の一部として理解され評価されるように働きかけることと、日々行っている実践研究の継続とその成果の還元が求められています。
 教育・研究面に関する教員への満足度は、コミュニケーション面と深く関連しています。教員とのコミュニケーションの取りにくさは、皆さんが総心館で活動しているのに対し、教員のほとんどが中央図書館棟にいるため、授業以外であまり交流できていないことと関係しています。教員と身近に関わり、相互コミュニケーションを取っていけば、満足度も上昇すると考えられます。しかし、途中で移転した2年生にとって物理的距離による不便さが、心理的距離も広げてしまい不満を感じる結果になったものと推察されます。
 最近は教員が授業以外にも指導のために総心館へ出向くことも増えましたが、皆さんの研究指導に割ける時間は限られています。教員とのコミュニケーションが取りにくい分、同期生だけでなく先輩後輩とのコミュニケーションは重要です。学年制の影響もあって同じ学年同士でまとまりやすいので、垣根を取り払うために1年生と2年生が一緒に研究室を使用することなど意図的な混合グループ構成も考えていきたいと考えています。また、武庫臨の開催もバックアップしていく予定です。

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